出射 ゆりさん(第2学年次)

汕頭大学留学を終えて

私は2017年11月11~18日まで汕頭大学留学プログラムに参加させていただきました。中国という国のこと、僻地での暮らし、医療を知りたいと思い参加しましたが、私が想像していたよりも多くの学びや驚きが得られ、とても有意義な時間を過ごさせていただきました。
2017年度の留学プログラムは以下のスケジュールでした。

1日目:ウェルカムディナー
2日目:貧困地域での医療ボランティア見学
3日目:SUMCセンター実験室、臨床技術トレーニングセンター見学
   癌病院見学、汕頭大学見学
4日目:訪問ホスピス看護見学、ボランティア学生とのディスカッション
5日目:潮州病院見学、観光
6日目:口唇口蓋裂治療センター見学、
   汕頭大学病院NICU・感染症科・アイセンター・精神科見学
7日目:自由行動、産婦人科見学
8日目:帰国


この留学で感じたこと、学んだことを振り返っていきたいと思います。
2日目では貧困地域の医療ボランティアを見学しました。貧困地域と聞いて想像していたのは、服もあまり綺麗ではなく痩せている人々でした。しかし、そこで暮らしている人たちは、服も最近の流行を取り入れた綺麗な服を着ていて、痩せすぎた人も見受けられませんでした。先生に教えていただいたのですが、近年中国では衣食は充実しているそうです。しかし医療は日本と違い全額負担なため、貧しい人は医療にお金をかけられないそうです。
医師の日本と中国との待遇もかなり異なります。中国の医師は日本に比べ、かなり収入が低いです。国からの支給は仕事の大変さに対してかなり少なく、患者からの薬代でまかなえている状況だそうです。このことを知っている患者は医師が患者のためを思って処方している薬でも金儲けのためだと疑い買わず、なかなか病気が治りません。医師と患者の信頼関係の崩壊が中国では大きな社会問題となっています。
またこのボランティアでは汕頭大学の看護科の学生がたくさん参加しており、学生と中国の大学のことや医療などについて話すことができました。ネットやテレビで聞く話とは違う現地の人の話が聞ける貴重な時間でした。

3日目は病院で伝統的な漢方作りなどを見学しました。昔ながらの道具を使い原始的な方法で調合していて、とても面白かったです。日本では機械で漢方を作り、西洋の薬を主に処方しますが、中国は伝統的な漢方医学が生きていて重宝されているのだと感じました。
またこの日は汕頭大学医学部も見学しました。はじめに医学部の建物内にある人体生命科学館に行きました。そこでは人体の構造を深く学べる展示物がたくさんありました。驚くことにそれらはほとんどが本物のご献体から作られたものでした。教科書では分かりづらいことも実物で見るととてもわかりやすく、うらやましい環境だと思いました。医学部の校内も見学させてもらい、実技のための設備がかなり充実していると感じました。

4日目は訪問ホスピスに同行しました。ホスピスの内容に関してはそれほど日本と変わらないと思いましたが、私が以前から興味を持っていた中国の田舎の地域の暮らしが垣間見られて興味深かったです。またそこに住む患者さんの家族の方が私たちにとても好意的でした。

5日目は汕頭地方から少し離れた潮州という町に行きました。潮州は汕頭よりも古くに栄えた歴史ある町です。観光客は中国人ばかりで外国人が来るのは珍しい場所のようで、この留学がなければ行くこともなかったと思うので、行けてよかったです。

6日目ははじめに口唇口蓋裂治療センターでそちらのドクターのお話を聞きました。口唇口蓋裂を私はこの留学で初めて知りました。しかし、この病気は中国で1000人に1.62人の割合で発症するそれほど珍しい病気ではありません。日本でも中国と同じくらいの割合で起こります。これから出会うかもしれないこの病気を知る良いきっかけとなりました。
その後は大学病院のNICUにお邪魔しました。NICUは特殊な場所で、入る機会は今までなかったので、貴重な体験でした。そこで引率をしてくださった小児科の服部先生に未熟児の救命に対する日本と他の国の違いについて教えていただきました。未熟児は私には関わりの無いことだと思っていましたが、深く考えるきっかけとなりました。

7日目の午前中は自由行動でショッピングセンターに連れて行ってもらいました。スーパーで中国の食べ物を見たり、精巧に作られた偽物のブランド物を見たり楽しい時間でした。最近、中国ではネット通販で買い物をするのが普通のようで、ショッピングセンターは終始人が少なかったです。

午後は産婦人科を見学しました。日本ではひとりひとり名前が呼ばれ、個室で医師と話すのが普通だと思いますが、そこの産婦人科では、医師がいる部屋は扉が開けっ放しで医師の前に行列ができ順番に診断するという、プライベートという言葉からはかけ離れた状態でカルチャーショックを受けました。

この留学を通して中国の医療の現状、僻地の人々のくらしを学べただけではなく、これから自分が関わるであろう病気のことや日本の医療の課題なども見えてきました。将来的にきっとこの経験は役に立つと思います。

中国の学生との交流で自分の英語力不足も実感したので今英語の勉強も始めています。
観光もショッピングにも行くことができ、おいしい食事もたくさんいただき、本当に充実した8日間でした。

最後に私たちにたくさんのことを教えてくださり、温かく面倒を見てくださった引率の先生方、本当にありがとうございました。また、このような機会を作ってくださった国際交流センターの方にも感謝いたします。