垂水 千紘さん(第2学年次)

中国汕頭留学を終えて

中国の汕頭大学への留学に参加させていただきました。以前から留学に興味があったのと、先輩方の発表を聞いてとても魅力的で、留学への参加を希望しました。現地でしか体験できないことをいろいろ学び、視野を広げたいと思っていました。実際に中国で体験したことは想像以上のもので、本当に参加できて良かったと思っています。このような貴重な機会を与えてくれた先生方に本当に感謝しています。後輩へこの留学の素晴らしさを伝えるため、体験したことを具体的に報告したいと思います。

1日目は関西国際空港に全員で集合し、日本を出発しました。付き添いの先生がいなかったので不安もありましたが、みんなで協力してなんとか広州を経由して、汕頭までたどり着くことができました。広州と汕頭の空港は新しくてとても綺麗で、中国の経済特区であることを実感しました。汕頭空港を出ると程先生夫妻が迎えに来てくれていました。そして、バスでホテルまで移動しました。そこで初めて中国の交通を体験し、とても驚きました。道路には3人乗りのバイクが走っていたり、乗っていたバスの運転も荒く激しく、揺れて酔いそうになりました。また、車線を無視して抜かして行くのはまるでゴーカートに乗っているかのようでした。  ホテルに着くと晩御飯にウェルカムパーティーを開いてもらいました。そこでお世話になる汕頭大学の先生方とお話ししました。日本に留学経験がある先生方や今も日本に子供がいる先生方でとても日本語が上手な方が多く、日本語で楽しくお話させてもらいました。中国料理もとても豪華で美味しかったです。また、その際に汕頭大学の李嘉誠基金についてヤン先生から説明を受けました。李嘉誠さんは中国の莫大な資産家で、汕頭大学は李嘉誠さんの莫大な寄付金によって成り立っていて、この交換留学もそのおかげであることを知りました。李嘉誠さんは父親を病気で亡くされ、医学の大切さを感じ、この基金を創設したそうです。李嘉誠さんのおかげで貧富の差が激しい中国において、貧しい人々も医療を受けられ、素晴らしいと思いました。

2日目は貧困地域でのボランティアに参加させてもらいました。中国では医療保険が日本のように整っておらず、貧しい人々は病院に行くことができないそうです。そのため地域の広場でボランティアの診察に行き、無料で薬を処方していました。これも李嘉誠基金の活動のひとつだそうです。地域の方々が来られていました。診察というよりは血圧を測ったり視力検査をしたり、体重を測ったりと健康診断のようでした。このボランティアには汕頭大学の生徒も参加していて英語で交流もできました。汕頭大学の学生によると、同じ中国語でも地域によって違っていて地域の方が何を言っているかわからないと言っていました。汕頭大学では必ずボランティアに参加する制度があるらしく、同じ2年生でも血圧を測ったり視力検査をしたり慣れた手つきで行なっていて、日本との違いとともに自分の無力さを感じました。日本でもボランティアを広げて行くべきだとも思いました。午後からは、100年以上前から変わらないという団地への訪問診療について行きました。そこでは、敵が来た際に逃げられるように迷路のようになっていて、案内なしでは迷子になりそうでした。そこでは電気もないような部屋に目の見えないご老人が一人で暮らしていました。患者さんは先生の訪問診察にとても感謝していました。また、私たち学生の見学も快く了承してくれました。学生は米や油を無償で配っていました。中国は今や日本も負ける経済力があるにもかかわらず、このような暮らしをしている人もいるのかと貧富の差を実感しました。

3日目はホスピスと訪問診療について行かせてもらいました。まず、ホスピスでその仕組みについて説明を受けました。ホスピスは末期の癌患者さんが暮らす家のような空間を目指しており、無料で緩和ケアを行うそうです。中国では医師と患者の関係が対等ではないらしいのですが、ホスピスでは患者さんの考えを優先されており、とても共感しました。訪問診療では廃墟ビルのような部屋に住んでいる寝たきりのご老人など3人の患者さんの家に行きました。1人の医師がその場で診察と薬の処方をしていました。日本でも訪問診療はしているとは思いますが、このような現場を実際に見るのは初めてで、とても勉強になりました。

4日目はまず汕頭大学の研究室を見せてもらいました。日本の機械も使われていて先生が日本製のものはとても性能がよいとおっしゃっていました。3Dにプリントできる顕微鏡など最新の機器の設備が整っていて、とても魅力的だなと思いました。その後、口腔外科の実験室に行き、シミュレーションを体験させてもらいました。歯を削る感覚が手に直に伝わってきてとてもリアルでした。漢方専門の薬局にも行きました。日本では漢方は錠剤のイメージでしたが、中国では錠剤ではなく固形の実物に、お湯をかけて飲むということに驚きました。汕頭大学の学生に日本にも漢方薬はあると伝えると驚いていました。腫瘍病院も行きました。病院内は入院患者さんがたくさんいて、廊下にまでベッドが溢れていて、またタバコを吸っている患者さんもおり、日本との違いを感じました。汕頭大学のキャンパスにはバスで行きました。汕頭大学はとても広くて、自然に溢れていて素敵な空間でした。図書館はとても広く、勉強スペースも多く、私もこのような大学で勉強したいと羨ましく思いました。医学部のキャンパスでは、手術のVRのシミュレーターや手術室の本物の機械が体験できたり、すごく勉強になりました。心音を聞く体験もさせてもらいました。状況に応じた心雑音などを初めて聞くことができ、貴重な体験ができました。汕頭大学では、シュミレーターシステムなど最新の機器がたくさん取り入れられていて、実際に医師になり手術などをする前に準備をできるのはとても羨ましいと思いました。案内してくれた学生は兵庫医科大学にも留学に来ていたとても優秀な学生で、私も負けないように勉強を頑張りたいと励みになりました。

5日目は汕頭市からは少し離れた潮州にバスで2時間ほどかけて行きました。道路も補正されておらず、山の中でした。眼科に行き先生の話を伺いました。中国では医学部はとてもたくさんあることや医師の偏在が問題となっていることを聞きました。医師偏在の問題は日本も同じであると考えました。

6日目は精神科病棟に行きました。精神科に行くのは初めてだったのでとても衝撃でした。柵の中に入って、先生の話を聞いていると患者さんたちに取り囲まれ、物珍しそうにジロジロと見られ、突然大きな声を出されたり、一緒に見学していたオランダの留学生にはハローと声をかけて握手を求めに行ったりしていて大きな子供のようでした。病棟の中に入ると、患者さんたちのとても上手な絵や折り紙など素晴らしい作品がありました。次に口唇口蓋裂の病棟も見学させてもらいました。中国では口唇口蓋裂の赤ちゃんが600人に1人の確率と世界でも多いらしく、その手術がとても盛んに行われているそうです。そのため手術の技術は世界一だと、先生がおっしゃっていました。医療技術の進歩により今では障害が残ることはほとんどないそうですが、声が出しにくかったりするため、そのリハビリを病院で行なっているそうです。実際に手術を終えた小児を見せてもらいましたが、手術跡がわからないほど綺麗に治っていました。口唇口蓋裂を持つかどうかは生前検査でわかるらしく、そこで親は中絶を検討します。自分が医師ならどうするか、また親ならどうするかを先生に問われ、深刻な問題について改めて考えさせられました。中国では中絶することも多く、一緒に見学していたオランダでは宗教上中絶は認められないなど、国による考え方の違いを感じました。

7日目は観光で重要文化財の建物や古い寺院やショッピングモールに連れて行ってもらいました。途中で小学校の横の文化財を見た時、体育の授業をしている小学生たちと一緒に縄跳びや鬼ごっこをして遊びました。子供は日本も中国も同じで可愛いなと思いました。兵庫医科大学へ交換留学に来ていた学生と英語で交流もできました。一緒に観光をして、お土産を買って過ごすと中国の学生も日本と何も変わらないなと思いました。 他にも書き切れないほど様々な経験をさせていただき、医療だけでなく中国の文化にも触れることができました。交通事情への驚きや道路の横断の難しさには苦労しましたが、日を重ねるにつれて慣れていきました。ショッピングモールなどのトイレにトイレットペーパーがないことも驚きでした。また学生との交流ではアニメやドラマの話で楽しく盛り上がることができました。中国では日本のドラマも放送されており、その主題歌を一緒に歌いました。

私は今回の留学に参加できて本当に良かったです。今回の留学で自分の視野の狭さを痛感しました。医療はもちろん、考え方や文化の違うところ、それだけでなく、日本と中国で同じところも実感することができました。汕頭大学の先生方はとても親切で、忙しい中私たちをサポートしてくださり、本当に感謝しています。私も汕頭大学の学生が日本へ留学に来た際は同じように全力でサポートしたいと思いました。 最後になりましたが、このような貴重な機会を設けてくださった先生方、国際交流センターの鳥井さん、汕頭大学の先生方、本当にありがとうございました。