山田 加奈子さん(第2学年次)

汕頭大学医学院見学研修を終えて

2019年11月9日から16日までの8日間、汕頭大学医学院見学研修に参加させて頂きました。

1日目は、関西国際空港に朝早く集合し、約3時間かけて広州白雲国際空港に行きました。そして乗り継ぎ、約1時間かけて汕頭に到着しました。空港では、程継東先生とその奥様の楊先生が迎えて下さり、バスでホテルに向かいました。道中は、ヘルメットをせずに運転しているバイクや平気で信号無視をする車と歩行者、鳴りやまないクラクション音など日本ではあまり目にすることがない光景ばかりでカルチャーショックを受けました。ホテルに着くと、Welcome Dinnerがあり、これからお世話になる先生方が歓迎してくれました。先生方の中には、長い間日本に滞在したことのある方もいて、日本語がお上手で私が心配していたコミュニケーションの壁は一切感じられませんでした。Law先生からは汕頭大学や李嘉誠基金の説明があり、汕頭大学が李嘉誠基金によって建てられたことを知りました。

2日目は、貧困地域でのボランティア活動を見学しました。健康診断や、診察などを全て無料で行っていて驚きました。日本では、保険制度が整っているため、大半の人が病院に通うことができるのに対し、中国では保険に加入できない人がいるため、病院に通いたくても通うことができない人が多くいるそうです。ボランティア活動を見学した後は、徒歩で訪問医療を見学しに行きました。訪問医療では、ただ診察をしに行くだけではなく、お米や油を持って行きました。暗くて狭い部屋で病に苦しむ患者の姿を実際目にして、日本の医療との差を感じたのと同時に自分の生活がいかに恵まれているかということを痛感しました。

3日目は、ホスピスの訪問診療に同行しました。医師と看護師が末期の癌患者やその家族の話を聞き、身体的、精神的に様々な方向からサポートしていました。話している内容まではわかりませんでしたが、患者や家族が十分に理解できる説明をしている様子でした。終末期医療に関して考えさせられる機会は今までに何度かありましたが、実際に立ち会うのは初めてで、大変勉強になりました。訪問診療の後は、汕頭大学のチョウ先生のお話を聞きました。緩和医学は末期の患者だけではなく、早期の患者にも適応し、治療は全て無料で行われていて、評価対象となるのは患者自身やその環境、患者の世話をする人などだそうです。患者がきちんと処方された通りに薬を飲まないと異常が起きるため、注意書きを書いた小冊子を世話人に渡す場合もあるそうです。

4日目は口唇口蓋裂専門の形成外科や、NICU、感染症、眼科、精神科、漢方作りを見学しました。口唇口蓋裂の患者は年間約2万人いるそうで、中には1才未満の患者もいて、見た目に現れるため、家に隠されたり、捨てられる子供もいるそうで、早期治療が重要だと聞きました。また、口唇裂の手術は1時間くらいで比較的簡単であるのに対して、口蓋裂は2~3時間かかるそうです。子供の患者であれば、年齢によって発音が変わったり、体重によっては麻酔が心臓に悪影響を及ぼすので、手術をするタイミングが重要だと知りました。新生児の集中治療室であるNICUでは、非常に衛生管理が厳しく、専用のマスクや帽子、服、靴にカバーをして見学しました。NICUには未熟児がたくさんいて、とても小さな体に人工呼吸器やたくさんチューブがつけられていたり、黄疸を予防するために光を照射されている赤ちゃんを目にしました。たとえ体は小さくても一生懸命生きている赤ちゃんの姿や、生かすことのできる医療に感動しました。精神科の病棟の見学の際には、先生の説明を聞いている私たちに対して何かを言う患者がいて少し怖かったですが、後から先生に聞いてみると私たちのことを褒めてくれていたそうです。精神科の患者と接する機会がなかったので貴重な経験になりました。漢方作りの見学の際には、色んな物質が混ざり、少し独特の匂いがしましたが、薬理学で学んで見覚えのある漢方方剤がいくつかあり、とても楽しかったです。中国は東洋医学のメッカであり、漢方に関してとても興味があったので見学することができて本当に良かったです。

5日目は、汕頭大学を見学しました。医学部の建物は中央が空洞になっていて、大変特徴的でした。また、図書館の広さには驚きました。アジア一美しい図書館だと言われているそうです。そして、臓器や筋肉、骨、神経など、全て実物を展示している人体生命科学館では、日本との倫理観の差を感じました。大画面で操作をしながら体全体を3Dで見ることができる機械や、まるでシルバニアファミリーの中に入ったような気分になるほど完備された全ての科のシミュレーションセンターは勉強する環境が整っていて、より多くのことを学ぶことができると思いました。

6日目は、舗装されていない道を通り農村地域にある眼科を訪問しました。主に行っている手術は白内障だそうです。白内障の患者は年間約1万人いるそうで、そのうち3千人しか手術を受けていないのが現状です。残りの7千人は、貧困であり、健康に意識を向けていないと聞きました。また、汕頭と比較すると手術をする機会が多く、手術の技術は高いそうですが、患者の数に対して医師や看護師などの医療従事者が足りないという重大な問題を抱えておられました。その後、潮州に観光に行きました。伝統的なお寺や神社を見ることができました。

7日目は、市内を観光しました。巧妙に作られた偽物のブランドを実際に見て日本でいうこのブランドのことなのだろうとみんなで想像しながら話すのは楽しかったです。夜は研修を通してお世話になった先生方と餃子パーティーをしました。作り方を先生方に教えてもらいながら自分たちの手で餃子の皮から作りました。餃子を手作りしたのは人生で初めてだったのでとても楽しかったです。自分たちで作った餃子だったのでいつも以上に美味しく感じました。

8日間の研修を通して、医療を中心として、異文化を体験、理解し、中国の学生とも交流することができました。本場の中華料理は大変美味しかったです。この研修で学んだこと全てが新鮮で、大変貴重な経験をさせて頂きました。この経験を必ず将来に活かして立派な医師になれるようにこれからも頑張っていきたいと思います。私自身、海外が初めてということと、英語があまり得意ではないという理由で、この研修に応募するかどうか正直迷っていましたが、勇気を出して応募して、そして初めての海外が中国の汕頭で本当に良かったと実感しています。最後になりますが、鳥井先生、程先生、楊先生をはじめ、留学に関わって下さった全ての方々に心から感謝申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。