堀 浩樹さん(第2学年次)

スワトウ留学を終えて

私は11月9日から16日にかけて中華人民共和国広東省汕頭市に留学しました。この留学に関わって下さった現地の方々や汕頭大学の先生、並びに汕頭大学の学生には非常に感謝しております。

さて、今回参加させて頂いた留学について日ごとに振り返っていきたいと思います。
11月9日は朝早く家を出発し、関西国際空港で午前9時にフライトする飛行機に搭乗しました。飛行機に搭乗した時から中国語で書かれた案内やアナウンスは多く、これから中国に留学するという実感がわきました。関西国際空港から掲陽潮汕空港に到着するまでには広州を経由しました。掲陽潮汕空港に到着すると現地の先生が優しく出迎えて下さり、その後ホテルでWelcome partyを開いて下さいました。そこで現地の先生と様々な会話をして楽しい時間を過ごすことが出来ました。そこで食べた中国料理も非常においしく感銘を受けましたし、回転テーブルのある円卓での食事は日本で多くは経験できないことでした。

11月10日は貧困地域に住む人たちに対する医療ボランティア活動を見学しました。貧困地域に向かうバスの中には汕頭大学の学生が私たちを暖かく迎えて下さり、様々な会話をしました。中国の学生は大学受験の試験のなかに英語のスピーキング能力を試される試験があるそうで、英会話が非常に卓越していました。その時に私は自身の英会話能力が未熟であることや、英会話が他国の人と会話するに当たって必須であることを痛感させられました。貧困地域の医療ボランティアを見学していて印象に残った点がいくつかあります。まず、中国の貧困地域にある住宅は日本では見ることの無いようなものであったことです。川には多くのゴミが捨てられており、衛生状態も決して良くありませんでした。このような現実からも、私は中国における貧富の格差が本当に大きく、深刻な問題であることを認識させられました。次に、日本ではあまり見ることの出来ない医療器具が印象に残りました。中でも、中国の視力検査の方法が私にとって印象に残りました。日本の視力検査はランドルト環と呼ばれているC字状の切れ目の判別力で視力を判定しています。しかしながら、中国ではその手法は用いることはありません。中国ではEチャートと呼ばれる、Eの文字で開いている方向を指さす方法で視力が計測されます。私もこの方法で視力を計測してみましたが、やはり違和感を感じてしまいました。また、首や肩の血行改善をする医療機器もありました。これは赤外線を照射することで首筋を温めて血行を改善する機器で、私も体験してみましたが、すぐに首筋が暖まりました。この医療ボランティアでは視力検査や首筋の血行改善の他にも血圧・血糖の計測、眼底検査、医師による問診を行っていたのですが、そこには多くの地元の方々が大勢集まっていました。やはり、このようなボランティアは需要があるのだと私は実感しました。ボランティア見学の後は汕頭大学の学生と共に望天湖にあるレジャー施設で様々な乗り物に乗った他、様々なショーを楽しみました。汕頭市内に帰った後は円卓を囲んで汕頭大学の学生や現地の先生と共に食事をして楽しいひとときを過ごしました。

11月11日は汕頭郊外の貧困地域に住み、末期癌を抱えている患者の在宅ホスピスの様子を見学しました。この在宅ホスピスは李嘉誠基金により無料で受けることが出来ます。まず私が驚いた点は、医者が患者に家庭環境を長時間かけて詳しく聞いていたことでした。実際、現場にいた医師や看護師は家庭の背景を聞き出すことで患者にとってより良い治療や保険適応を選択しようとしていました。その医師や看護師の患者に対する真摯な態度に私は感心しました。また、中国と日本では保険制度が異なっていました。中国では都市郊外に位置する地域は自己負担しなければならない医療費が都市部に比べ高くなるそうで、貧困地域に住む人々にとっては厳しい状況をつきつけられるそうです。再び汕頭市内に戻った後は汕頭大学病院に戻り、このホスピスについて詳しい説明を受けました。

11月12日には病院を見学しました。口唇口蓋裂の病棟見学やNICUの見学もした上、感染症の病棟も見学しました。見学の中では口唇口蓋裂の治療の現状や、肝炎ウイルスの研究紹介を詳しく受けました。このように様々な施設を見て回りましたが、印象に残ったのは漢方についてでした。実際、病院で薬を処方する場所を見学させて頂きましたが、そこには様々な生薬が棚一面に配列されていて、その中には薬理学の授業で習った生薬も置かれていました。その生薬を薬剤師と思われる方々が一種類ずつ量りとり、それらを調合されていました。日本で販売されている漢方薬のほとんどは既に調合された後のものでひとつひとつの生薬を実際に見る機会はそう多くはありません。例えば、棚の中に代赭石という生薬が実際にありました。これは酸化鉄の一種である赤鉄鉱を指しており、粉末状の状態で棚に置かれています。やはり、このような生薬を日本で見る機会は非常に少ないのです。また、私は中国の方々が漢方に対して非常に大きな信頼や熱意を持っているという話も聞きました。その後、精神科の病棟を見学した際もリラックスを促進させるようなゲームを経験し、眼科では鍼療法の治療の見学をすることができ、貴重な経験をした日となりました。

11月13日は口腔外科や実験室の見学をした後に汕頭大学医学部の見学をしました。まず驚きだったのが歯科の実習室の設備についてでした。歯科の実習室では、サングラスをかけることで目の前に直方体が現れその中で指定された部位を歯科医が使うドリルで削る体験ができました。これは実際に物体を削っているわけではありませんが、手から伝わる感触は本当にドリルで物体を削っているのと同じです。このような高度な機器に私は驚きました。汕頭大学医学部キャンパスでは、実際の患者に似せた人形や手術室があり、再現度も非常に高かったです。また、キャンパス内にある人体生命科学館では本物のご遺体を用いた標本を展示しており、解剖学の勉強に役立つのはもちろんのこと、人体の神秘を学ぶ上では非常に有意義な施設となっていました。図書館も非常に広く、自習室には非常に多くの学生がいて、ほとんど満席状態でした。このようなことから、中国の学生がいかに勤勉であるかを知り、私は感心しました。

11月14日は汕頭市内から随分と離れた場所にある眼科病院を見学しました。そこの医師のレベルは非常に高く、他の離れた村からも患者が来院されるそうです。しかし、患者数は非常に多く、治療は追いついていない状況にあると話を聞きました。実際、その村に病院が建設されるまでに予想されていた患者数よりも現実の患者数は多く、今でもまだ患者が治療を受けている状態だそうです。また、2004年の時点では、白内障患者の治療は3年程度で終わる予定だったそうです。そのような話から郊外部や村で医療支援がいかに大変であるかを私は再認識することができました。

眼科病院の見学のあとは潮州市内で観光しました。そこで、地域の特産品である刺繍を購入しました。汕頭や潮州では刺繍が有名で、店の中にある作品も非常に美しいものばかりでした。

11月15日は汕頭観光をしました。また観光の中でも汕頭の歴史に触れる機会があり、非常に有意義な一日となりました。夕食は先生方のご指導のもとで水餃子を作り、最後の別れを惜しみました。

11月16日に日本に帰りました。朝に空港へ向かうバスから汕頭市内の様子を見ていたのですが、やはり充実した1週間であったからか少し離れるのが寂しかったです。

以上が留学の振り返りとなります。この1週間は長く見えますが、私にとってはあっという間の1週間でした。これから私はこの留学を踏まえた上で、より一層勉強に精進して参りたい次第です。最後に、汕頭の方々は非常に優しく私たちに接して下さいました。先生方もご指導いただき本当にありがとうございました。心の底から感謝申し上げます。8日間ありがとうございました。