廣本 よし乃さん(第5学年次)

リエカ大学での実習を終えて

 私は2024年9月20日から4週間、クロアチアのリエカ大学で病院実習を行いました。実習に参加するにあたり支援してくださった兵庫医科大学の先生方、現地でご指導くださった先生方、留学センターのスタッフの方、そしてお互い異国の地で助け合った3人のクロアチアの留学生たち、関わってくださった全ての方に心より感謝申し上げます。

 留学初日、友人2人と一緒に、関西国際空港からドーハ経由で20時間かけてクロアチアの首都、ザグレブに到着しました。ザグレブから実習先のリエカに向かう道中、見るもの全てが美しく、高速道路を走っているのに自然を真横に感じることのできるクロアチアの不思議な街並みをワクワクしながら眺めていました。その日は寮に到着した後、リエカの留学担当の方に街を案内していただきました。初めて見るクロアチアの景色や食事を楽しむと共に、これから1ヶ月どのように過ごすんだろうとドキドキしていました。

 私は最初の2週間を循環器内科、その後1週間ずつ呼吸器内科と腎透析内科を回らせていただきました。実習先の病院は、寮からバスで30分ほどのところにありました。いよいよ始まった実習初日、とても緊張していましたが先生方は明るくフレンドリーに接してくださいました。朝のカンファレンスの際に、20人ほどの先生方の前で挨拶する機会がありましたが、先生方が日本についてたくさん質問してくださり、緊張は次第にほぐれました。

 循環器内科の実習では、基本的には指導医の先生についてまわり、先生が忙しい時には病棟を自分で見て回ったり、心臓カテーテル検査を見に行ったりしていました。まず驚いたことは、実習初日に指導医の先生に「実習時間は自分で決めていいよ。お腹が空いたら帰っていいし、もしずっとここにいたかったら夜中までいてくれてもかまわないよ」と言われたことです。他に学生がいなかったので、クロアチアの実習生も同じスケジュールかは分かりませんが、とても自由な環境だと感じました。「せっかく日本から来たんだからたくさん観光して楽しんでほしい」と、訪れるべき場所を色々と教えてくださいました。私は朝の8時に病院に行き、11時〜12時ごろに解散し昼食をとって寮に帰る毎日を過ごしました。病棟回診では、先生方が患者さんに触診や聴診をする時に、私も続けて一緒に診察しました。患者さんに触れていいかわからず隣で見ていた時も「恥ずかしがらずにどんどんトライしてね。」と声をかけてくださり、それ以降積極的に患者さんに接することができるようになりました。最初に聴診器を患者さんに当てた時には、正しくできているのかという不安と緊張で、患者さんの心臓の音か、はたまた自分の動悸が聞こえているのか分からないくらいでしたが、何度も繰り返すうちに次第に分かるようになってきました。毎回どんな雑音が聞こえたか先生に報告し、それが間違っていた時には、正しい音が聞こえるまで何度も聴診しました。また、先生方同士や、先生と患者さんはクロアチア語で話されるので私には何を言っているのか全く理解できませんでしたが、先生方はお忙しい中でも必ず英語に訳して説明してくださり、本当に有り難かったです。

 次の1週間は呼吸器内科を回りました。呼吸器内科でも同じように自分で患者さんの聴診をして、何が聞こえたか先生に報告しました。循環器内科でかなり鍛えられたおかげで自信を持って答えることができるようになり、自分でも成長を実感できて嬉しかったです。また、指導医の先生は、特徴的な肺の雑音が聞ける患者さんをわざわざ私のために診察室に呼んで聴診させてくださいました。回診のほかには、気管支鏡で生検した組織の病理検査を見て、一緒に顕微鏡をのぞいたり、高圧酸素療法を見学したりしました。クロアチアは日本に比べかなり喫煙率が高く、病院内に職員用の喫煙ルームがあるほどで大変驚きました。やはりCOPDや肺がんはとても多いようで、X線やCTを見ながら画像の読影を教えていただきました。また、患者さんの移動に同行した時には人生初の救急車に乗る機会があり、貴重な経験となりました。

 最後の1週間は腎透析内科で実習を行いました。この科では、病棟回診や外来見学に加えて、採血や注射を患者さんに実際にさせていただきました。初めて患者さんに針を刺す時には手が震えるほど緊張しましたが、指導医の先生は隣で丁寧に教えてくださり、患者さんも嫌な顔ひとつせず許可してくださいました。病院内では、目が合うとニコッと笑って話しかけてくださる患者さんが多く、学生を受け入れてくださる雰囲気がとても嬉しかったのを覚えています。

 週末には、イストリア半島やクルク島、世界遺産であるプリトヴィッツェ国立公園などを観光しました。とにかくどこもかしこも自然豊かで、山と海を同時に楽しめる美しい国でした。クロアチアの方は、私たちがなにか困っていた際には、声をかけると立ち止まって答えてくださり、たくさん助けられました。また、寮や食堂で仲良くなったたくさんの留学生との関わりを通して、国際交流の楽しさを改めて感じました。「日本人はなぜこんなにも地震が起きる国に住み続けるのか」「日本の一番誇れる文化は何か」などの興味深い質問や、「日本と韓国の関係についてどう考えているのか」「どうして死刑を廃止しないのか」など、なかなかシリアスな会話も多くありました。同世代の友人と色々な意見を交え、新しい発見もたくさんあり、英語を勉強していて良かったと痛感しました。

 振り返ってみるとこの1ヶ月間は、医学知識だけでなく国際的な考え方も学び、それを通して日本のいいところにも改めて気づけた中身の濃い留学生活だったと思います。医学英語の難しさも再度感じ、もっともっと勉強したいというモチベーションにも繋がりましたし、英語学習の楽しさも再認識できました。本当にリエカでの実習に参加することができて良かったと、この貴重さと有り難みを噛み締めています。改めて、この交換留学プログラムの実現に関わってくださった全ての方に心から感謝申し上げます。有難うございました。