髙坂 侑希さん(第5学年次)

クロアチア・リエカ大学での留学を終えて

クロアチアのリエカ大学に留学させていただき、貴重な体験を得られたことを心から感謝しております。
日本から約16時間のフライトと3時間のバスを経て到着したのはクロアチアのリエカ。
30度を超えた9月末の日本から比べると少し肌寒く、秋の訪れを一足先に感じさせてくれるものでした。到着したのは土曜日の18時半。目に飛び込んできたのは、おとぎ話に出てくるかのような赤や黄色の壁に淡い水色の屋根の建物、そして黄昏時のきれいな海。大きな期待を胸に抱き、大学の寮に向かいました。
翌日、リエカ大学の留学生担当の方が大学や病院、街の中心地などを案内してくれました。まだ時差ぼけは残っていましたが、素敵な街の雰囲気を楽しむことができました。
月曜日、実習が始まり、向かった先は産婦人科病棟。前半の産婦人科では、産科と婦人科で1週間ずつの実習でした。
実は、産科を回る際に一抹の不安がありました。兵庫医大で帝王切開を見学した際、迷走神経反射を起こして倒れてしまい、最後まで見学することができなかったので、リエカ大学でも倒れないかなと不安でした。
産科の医局につき早々、先生が「帝王切開、今からあるよ!見学においで!」と言ってくださり、突如として帝王切開を見ることになりました。手術が開始。質問してもいいのかなと...考えつつ黙って見学をしていたら、先生から「クロアチアでは大体20%の人が帝王切開だけど、日本ってどのくらいなの?」と聞かれました。統計を考えたこともなく咄嗟に「I’m not sure and I’ll google on it!」と答えてしまいましたが、先生は「Oh Please do it! And feel free to ask us anything 」と言ってくださりました。それを皮切りに、迷走神経反射のことも案ずるに及ばず、手術中に行われている様々なことを質問することができました。
それからは毎日、帝王切開と経腟分娩を見学させていただきました。日本ではあまり出産を見ることはなかったので貴重な経験と共に充実した日々を送ることができました。
そして、驚いたのは手術室の雰囲気です。日本での手術の際、特に帝王切開のときには緊迫した様子でした。リエカ大学の先生方はラジオから流れる曲に合わせて一緒に歌っていたり、冗談を言い合ったりしながら手術をされていました。
夕方の回診時、先生と出産後の患者さんの血液データや状態などをカルテでチェックした後、病室に入ります。病室ではベッドがカーテンで仕切られておらず、患者さんの情報が同じ病室内にいる別の患者さんにまで聞こえるという状態で、少しびっくりしました。また、夕食は人数分同じテーブルに置いてあり、患者さん同士が楽しそうにお話をされながら食事をされている姿を見て、産科ということもありますが、どこか暖かさを感じました。
2週目に入り婦人科を回りました。毎日平均して4,5件ほど手術があり、手術を見学するだけではなく、筋鈎をもつ助手の経験もさせていただきました。この頃から気兼ねなく先生方に質問できるようになり、先生方はフレンドリーで熱心な方が多く、どんな小さな疑問を問いかけても、親切に教えてくださいました。中には、後でスケッチするね、と実際に絵を描いて説明してくださった先生もおられました。手術の待ち時間も周囲の観光地やリエカのレストランの話などで会話に花を咲かせました。
後半2週間は形成再建外科を回りました。毎朝8時からの回診で1日が始まり、外来診療見学や、処置室や手術室での手術見学、それだけではなく縫合や助手もさせていただきました。実は日本ではOSCEの前の授業で、模型で縫合の練習をしただけで、実際に人への縫合をしたことがなく躊躇していましたが、不慣れながらも先生のご指導の下、縫合をすることができました。クロアチア語で話されていた患者さんから、英語で笑顔とともに「Thank you」と言われ、達成感と安堵感で胸がいっぱいになりました。また、リエカ大学は形成外科を一般外科に包括しており、形成外科の手術がないときは、乳腺外科などの他科の外科の手術も自由に見学することができ、学びにつながる日々を送ることができました。
実習を進めていく上で、医療用語を英語で学ぶことの重大さに気付きました。兵庫医科大学のカリキュラムでは、「医療英語」や「英語で学ぶ臨床推論」など英語で医学を学ぶ機会はありましたが、自分が勉強をするときは日本語でばかり勉強していました。診察内容や手術について質問をするときに自分が話したい単語は日本語では浮かびましたが、英語ではなかなか出てこなかったのが悔しく、1日の実習が終わるとわからなかった医療用語を寮で調べる日々でした。実習が進むにつれて、伝えたい単語が素早く頭に浮かぶようになりました。また、改めて大学で英語で医療を学ぶ機会があったことを大変ありがたく感じました。
最後に、この留学を通して、何事にも挑戦することが大切だと改めて痛感しました。
実は留学選考会の日は学会の発表日で、応募書類を提出したものの、最後の最後まで選考会に参加するかを悩んでいました。挑戦をせずに参加しなかったら、リエカでの生活を送ることや、いくつかのクロアチア語を覚えることも、毎日キラキラとしたアドリア海を見ながら病院まで通学することも、さらには今この体験記を書くこともなかったでしょう。
このような素晴らしい機会を与えてくださった兵庫医科大学、留学前の準備からお世話になった国際交流センターや庶務課の皆様、また留学中サポートくださったリエカ大学の事務の方、産婦人科、形成外科の先生をはじめ、全ての私の留学に携わってくださった方々に感謝を込めて、この体験記を終わりたいと思います。