竹田 悠希さん(第5学年次)

クロアチア・リエカ大学留学を終えて

 私は9月25日から10月20日までの4週間、本校と南ヨーロッパ、クロアチア・リエカ大学の交換留学生として現地Clinical Hospital Center Rijekaで臨床実習を行いました。実習先はRijeka, Susak, Kantridaの3カ所で、私は先2週間を内科 、次2週間を小児科で実習しました。

 内科では、1週間目をSusakにて循環器、腎臓、呼吸器、リウマチ内科。2週間目はRijekaにて消化器、糖尿病・内分泌、血液内科を回りました。病棟回診は毎回参加しました。病室内は日本と異なりベッド周りがカーテンで仕切られていないので、皆の回診内容は病室内に筒抜けです。なので皆が皆の現状を解って感じて、目配せし合ったり頷ずき合ったりして寄り添い合っているので、どこの病室内も家族的で温かい雰囲気でした。回診時は、私が入院患者さんに問診する事、呼吸音聴診を行う事、その際の意見を申す事が許されています。この際の私の意見が先生の所見と一致した時は嬉しいというよりは晴れやかな気持ちになれました。病室の患者ベッド横のテーブルにはガラス瓶が2本置かれていて、1本には水、他1本には紅茶が入っています。先生が「紅茶を好まれる患者さんが多いのよ」と話された時、「紅茶」という言葉に私はスタンダードに「ヨーロッパ的」と感じました。先生たちは、朝の病棟回診後に一度コーヒーブレイクを挟んで、各自のその日のタスクを行うことが日課です。私が参加することで担当の先生他、英語が不得意な先生も英語で言葉を交わしてくださったので、私は院内で感じた疑問を聞け詳細を教えて頂くことができました。こちらの循環器内科IVR室では、ペースメーカー移植を医師1人とオペ看1人の2人体制で行っています。その際も先生方はペースメーカーの種類について私に詳しく説明してくださり、とても勉強になりました。外国の先生方とのコミュニケーションは、自身の将来に何らかのきっかけを見つけた気がしました。
 
 小児科では消化器内科にて実習を行いました。1日のスケジュールとしては、朝に入院患者についてのカンファレンスを行ってから病棟回診をし、その後、外来や内視鏡検査を行います。入院患者は潰瘍性大腸炎などの IBD疾患の子供や急性膵炎の子供、体重減少が主訴の乳幼児など様々で、消化器・肝胆膵・IBD疾患全てを消化器内科として診ていました。消化器内科の外来では、グルテンに対する自己免疫性疾患であるセリアック病の患者さんがとても多い印象でした。セリアック病は日本では0.05%と非常に稀ですが、クロアチアでは下痢や腹痛などの消化器症状があれば必ず鑑別疾患にあげるほど頻度の高い疾患だそうです。日本の主食は米ですが、クロアチアではパンやパスタなどグルテンを多く含む食物を頻繁に食べているので、この様な食文化の違いによって各国のコモンディジーズが異なる、という点がとても興味深かったです。私の指導医は管理栄養士の資格も取得しており、「食事療法で治せる疾患は、薬剤のリスクも考慮して、できるだけ薬剤を使わずに治すことを心掛けている」と仰っていました。小児は成人と比べて薬の副作用がでやすいので、まさに小児科らしい患者に寄り添った考え方だなと感銘しました。ここでは、私1人が病室に出向き入院患者さんに腹部診察をすることができました。先生及び、患者さん自身も診察を快く了承し受け入れてくださったので、内科と同様に素晴らしい体験ができました。特にこの小児科での実習は一人で病室に出向き患者さんを触診したり話したりと、自分が既に女医さんに就いた様な気がして、あっという間の2週間でした。

滞在先はリエカ大学学生寮、食事は寮内食堂で毎食、バイキング形式で準備されています。学生寮内の生徒は皆さんフレンドリーで、私がランドリールームで洗濯が終わるのを待っている時、「もし、あなたが1人なら一緒に夜ご飯を食べますか?」と見知らぬ学生に声を掛けられたり、食堂では私の同校生もイタリア人、カザフスタン、インドネシア、韓国人等の留学生から声をかけられ、私も交じって各国の食文化や伝統、現代について情報交換をしたり、夕食後に公園で皆とギターと共に歌ったりしていました。留学中での困りごとは、バスが時刻通りに乗れない事です。実習先では、バス遅延の実習遅刻は許容されていますが、私自身は「遅刻厳禁」と思ってきたのでタクシーで病院へ通勤しました。

 休日は、一緒に留学プログラムに参加した同校生やリエカ大学医学生と、毎週末クロアチア観光へ出かけました。大学近郊ではリエカ旧市街地、ザグレブ旧市街地、ロビニ、プリトヴィツェ湖群国立公園。スプリト方面へは金曜日の実習終了後に二泊三日で行きました。スプリト市街地、5つの島巡りと青の洞窟、トロギル市街地。ドブロヴィニク観光地以外はほとんど行きました。各旧市街地の建物は、大概オレンジ色の屋根と石壁造で似た様な街並みですが、それぞれのカルチャーは路地裏散策と中世時代から保たれた教会や古城で想像する事ができました。数カ所、西洋映画で観た街並みにそっくりな路地裏があり、そこでは自分の体が透き通る様な癒しを感じました。

 私はリエカ大学留学プログラムで、海外病院の実習で感じた事、海外大学の学生とコミュニケーションを図って感じた事、これらが私自身の志す医師に近づく何かを掴めた様な気がします。このリエカ大学留学は私には必須だったと思います。私をこのプログラムに参加させてくださったリエカ大学の方々、兵庫医科大学の方々、一緒に参加した石橋さん、高坂さん、Clinical Hospital Center Rijeka, Susak でお世話になった先生方、Kantrida Child Hospitalで指導してくださったDr.Kristina、心より感謝とお礼を申し上げます。ありがとうございました。This program broadened my horizons, and I won’t forget what I have experienced here. Thank you so much for the precious experience.