奥田 真有さん(第5学年次)

クロアチア リエカ大学実習プログラムに参加して

このたび、私は9月中旬より1ヶ月間、リエカ大学臨床実習プログラムに参加しました。リエカ大学では内科を選択し、循環器内科と腎透析内科で2週間ずつ実習させていただきました。私は英語が好きでしたし、海外には興味がありましたが、留学経験はなく、今回初めてのこともたくさん経験しました。今回は体験談として私が現地で知ったことや学んだこと、経験したことをお伝えしたいと思います。私が1ヶ月過ごしたリエカという街はクロアチアの首都ザグレブから2~3時間のところでイステュラ半島の一つの大きな港街でした。イタリアの国境に近く、食文化や建物はイタリアの文化を強く受けているものが多くありました。私が実習させていただいていたKBC Susak Hospitalは中心地からバスで10分ほどの丘の上にある病院でした。寮からは徒歩5分でした。病院は二つの建物に分かれていて、ひとつは循環器内科、放射線科、泌尿器科、救急の病棟や検査室、外来があり、もうひとつは2010年に建ったばかりガラス張りの建物で主に腎透析内科の病棟や透析室がありました。主に平日は病院に行って先生方につき、実習をさせていただいていました。

まず、最初の2週間は循環器内科でお世話になりました。朝は8時の全体カンファレンスから始まります。カンファはすべてクロアチア語で行われていましたが、内容は隣に座った先生が教えてくださることもありました。先生方は非常に英語が堪能な方ばかりでした。内容としては当直帯の引継ぎなどでした。その後、下の階の病棟におりて、私は主に一般病棟ではなくCCU(循環器の集中治療室)で病棟実習をさせていただきました。CCUでは全体カンファ後に9時ぐらいから毎日回診が行われていました。私は過去に行った先輩から病棟にはパーテーションがないと聞いていましたが、CCUの病室にはカーテンがありました。これはそれぞれの患者さんが急性期であることや、危篤状態の方もいるためプライバシーのためにつけられていました。CCU回診ではその日のチーフの先生が一人ずつベッドサイドで診察し、薬の処方や処置を行っていました。回診後は休憩室で先生や看護師たちとコーヒーブレイクするのが習慣なようで、私は最初緊張して、後ろでコーヒーを飲まずこっそり立っていましたが、先生方が温かく誘い入れて下さいました。回診の後は、カテーテル見学、エコー室見学、アブレーションの好きなところで実習しなさい、と言われました。クロアチアは喫煙人口が多く、食事も脂肪分の多いものが多いため、心臓疾患を持った患者が多くこの病院に運ばれてくるということでした。循環器内科は毎日たくさんの患者さんが詰めかけていて、先生方は毎日忙しそうに検査室や病棟を走り回っていました。先生方が忙しく、ゆっくりずっとついてあげられないため、学びたいものを自分で見つけて見学したり、勉強してほしい、という意図でした。日本では、実習となるときっちりとスケジュールが組まれているため、このような自由に見学しなさい、というスタイルには戸惑いました。しかし、戸惑いながらもカテ室やエコー室に向かい見学させていただきました。そこに行くと先生が患者さんについて説明してくれる一方、「この見学で何を学びたいの?」と聞かれびっくりしました。日本では見学に行くと先生が説明してくださるのを聞きながら、という受動的な雰囲気でしたが、クロアチアでは自分の学びたいことや見たいものを明確にさせる、積極的に学生が発言することが普通であるようで、私はそのような経験がなかったため本当に驚きました。最初は英語も拙いため、発言も少なめでしたが、せっかくの機会だからいろんなことを吸収したいと思い、時間のある時にもう一度英単語や循環器のことについて勉強しつつ、頑張って先生方に質問したりしました。どんなに小さな質問でも先生方は真剣に答えて下さいました。そのうち慣れてくると、固い質問だけではなく、先生のことや仕事の大変さについて語ってくださる場面もあり、また昼食も最初はひとりで食べていましたが、そのうち先生方とご一緒させていただくようになりました。また、1週目の金曜日にはオーベンの先生が学会に連れて行ってくださいました。学会はopatiaという隣町で開かれました。学会は最新技術やカテーテルについてのテーマで発表の後はディスカッションの時間があり、先生方が意見をぶつけ合っている姿に刺激を受けました。クロアチアでは学生の間でも循環器内科が人気でリエカ大学の循環器内科チームもクロアチアではとても有名なようでした。なので、このようなチームの先生方と2週目に実習できたことは非常に貴重な経験でした。実習の最後の日に先生に「もう終わりなの?もっといっぱい教えたいことがあるのに、次の科で退屈になったらいつでも戻ってきなさい!もっと私のいる循環器の良さを教えたい!」と言われたときは嬉しい気持ちと寂しい気持ちでいっぱいでした。また、この言葉を言われたときに先生方の自分の科を大切にする気持ち、自分のしている仕事に対する誇りを感じ、感銘を受けました。3~4週目は腎透析内科を回らせてもらいました。腎透析内科では、循環器内科と同じく、まずは朝のカンファレンスが始まります。その後は病棟のカンファレンススペースに移動し、入院患者の経過についてひとりひとり議論します。その後回診をして患者さんを診察する、といった流れでした。午後は生検の検査を見学させていただいたり、透析室の見学や透析の指導に同行させてもらったりしました。また、10月に入ると現地の大学生も夏休みが終わり、腎透析科には4年生の学生が回ってきていて、最後の10日間ほどは午後には回ってきた学生と一緒に実習させてもらいました。腎透析科では循環器と違い慢性の経過をたどる患者さんが多く、病棟の流れもゆっくりしていました。

ついてくださったオーベンの先生はとても指導熱心な方々で毎日課題を与えられました。主に次の日に午前の業務が終わったらディスカッションをしたいから予習してきてね、というものが多く、正直日本語でも難しい内容を英語にして勉強するのは大変でしたが、せっかくの機会なので持って来た日本語の参考書を横に置きながら英語のガイドラインを読んでみたりして次の日のディスカッションに備えました。ディスカッションでは先生に聞かれたことや、実際当てはまる患者さんや症例について先生と議論したり、自分なりの治療プランを発表したりしました。最初は発言するのを少し不安に思っていましたが、先生が「発言を恐れないで、誰でも間違えるし答えてみよう」とおっしゃって下さって勇気づけられました。ディスカッションには学生が参加する日もあり、一緒に議論するのはとても刺激を受ける経験であったし、このような経験は緊張もしたけれど、最後は慣れてきてとても楽しかったです。現地の学生は発言が多く、しっかりと自分の意見を持っている人が多く、驚きました。ディスカッション以外には、ディスカッションで出てきた症例の患者さんを学生と一緒に診察したりしました。向こうの学生はとても英語も堪能で、ウェルカムな雰囲気でしたし、先生や患者さんがクロアチア語でお話されていたときは後で翻訳してくれたり、とても親切な人たちばかりでした。一方で、回ってきていたのは自分より学年が下の学生たちだったことを考えると、とても知識やレベルの高い学生たちが多く、少し焦る気持ちもありました。また透析室の見学や生検の見学でも先生や看護師の方がとても丁寧に説明してくださいました。腎透析の先生方とはお昼を一緒に食べたりする機会も多かったので、クロアチアの医療事情やお給料、先生方の私生活についてのお話も伺うことができました。面倒を見てくださった先生も多く、お別れはとても寂しかったです。ふたつの科を通してそれぞれの良いところやクロアチアの医療や患者さんについてたくさん触れることができました。クロアチアに着いたときは1ヶ月は長いな、と少し不安になりましたが、毎日が刺激的であっという間でした。また、留学を通してたくさんの出会い、経験、さらに、3年前にクロアチアから日本に来ていた留学生との再会もありました。

最後に今回このような機会を私に与えて下さった、兵庫医大の先生方、国際交流センターの鳥井さん、リエカ大学の方、そして熊本さん、山本さん、本当にありがとうございました。