信末 拓哉さん(第5学年次)

クロアチア・リエカ大学留学を終えて

この度私は2019年9月23日~10月18日までの1ヶ月間、クロアチアのリエカ大学へ留学させていただきました。同じ部活の先輩数人がクロアチア留学のプログラムに参加しており、そこでの実習は素晴らしかったとおっしゃっていたので段々と自分も留学したいと思う気持ちが強くなり、プログラムに応募させていただきました。実際リエカ大学への留学が決定した時はとても嬉しかったですが、その反面英語で気持ちを伝えられるか、1ヶ月の海外での生活への不安も大きくありました。しかし留学までの期間に、国際交流センターでは定期的に英語での医療面接のロールプレイを開催してくださったり、医療英単語帳の貸し出しなどを行ってくださり、次第に英語への苦手意識が緩和されていきました。また夏にはリエカ大学からの留学生も兵庫医科大学へ訪れており、交流する機会が何度もあったのでクロアチアでの生活や文化などについて知ることができ、1ヶ月間の生活への不安は大きな期待へと変わり、留学を迎えました。

リエカ大学では4週間全て小児科で実習させていただきました。リエカ大学の小児科がある病棟は私たちの寮があるリエカの街から約4~5kmに位置し、寮からバスで10分程度でした。病棟周辺はビーチとしても有名で、よく実習終わりに海を眺めに行きました。小児科での実習はまず朝9時頃に病棟へ向かい、カンファレンスが始まります。カンファレンスは私がいるということで英語にて行われ、夜勤帯に入院した患者や、以前より入院している患者についての議論が行われていました。そこで私が理解できなかった部分には指導医が丁寧に解説してくださいました。

次に回診があり、それが終了すると外来に向かいます。初日に、君は小児科に来て何が勉強するつもりか?と聞かれ、小児の先天性心疾患について学びたいと答えたので小児の循環器の外来を中心に見学させて頂きました。外来では主に2種類の患者がおり、ひとつは小児期に先天性心疾患があり、治療後の経過観察を行っている患者と、もうひとつは新生児で初めて心雑音が指摘され、その精査のため来院した患者がいました。そこで学んだ事は、小児の心雑音の殆どが治療の必要がない無害性の心雑音である事、実際に心雑音を聴取して通常の心音かそうでないかをどう区別するかなどです。教科書で読めばわかる事と思われる事かもしれませんが、実際に多くの症例を目の前で見ることでとても多くのことを学べました。大血管転位症などの大規模な手術が必要な症例についてはリエカでは行っておらず、クロアチアの首都であるザグレブで行っているようで、見学することは出来ませんでした。しかし、毎週水曜日にリエカの中心地に近いスシャックという場所で行われているVSDやASDに対するカテーテル治療を見学させて頂きました。そこでも指導医がどのような方法で治療を行っているのか、合併症を起こさないように注意している点や、使用している器具について詳細に教えてくださいました。また指導医が不在の時は教授の後ろに1日ついて行くことが出来ました。午前中は外来を見学させて頂き、そこでは最新の小児の疾患についての知見についてなどを教えてくださいました。午後はリエカ大学で行われていた、アメリカの大学に所属する日本人教授の講義に一緒に参加させて頂きました。内容は基礎医学的なもので、知らない単語が多く、ついて行くのに必死でしたが、横で教授が簡単な単語で説明してくださり、理解することが出来ました。講義終了後に日本人教授と会話する時間があり、同じ日本人として励ましのお言葉を頂き、自身ももっと多くの事を学び、成長したいと強くその時は感じました。このように日本の実習ではここまで教授に密に教えて頂く事や、1日付きっきりで行動を共にする事はなかなか無い経験だと思うので、とても貴重な経験でした。私が総じてこの度のクロアチア・リエカ大学への留学で感じたことは、日本の病棟での医学教育は基本的に先生が医学生の1日のスケジュールを決定し、そのプログラムに基づいて病棟実習や外来見学、検査などを見学しますが、クロアチアでは基本的に学生が何を学びたいかをまず自分で決定し、自主的に外来や検査や処置などを見に行くというスタイルでした。より自分自身の主体性や積極性が要求される現場であると思います。日本の教育方式はある地点での学生の到達レベルの保証という観点からするととても素晴らしいと思いますが、その一方で私は後者のような学生の自主性に任せる教育法は、むしろ自分から望んで学びに向かっているという意識が芽生えて、とても前のめりに勉強することが出来たと思いました。また自身の事ではクロアチアの同年代の医学生と比べ、英語のレベルがまだまだだという事も改めて実感し、とても悔しい思いをしました。話を聞いてみるとクロアチアの若者の多くは幼少期から英語のアニメなどを観て育ち、常に生活の側に英語があったそうです。これから医師として活躍していく上で英語は必要不可欠ですので、今回の経験を基にもっと英語について学んでいかなくてはならないと強く感じました。

クロアチアでの生活は何一つ不自由なく過ごしやすい日々を送ることができました。近隣のレストランにも行くことがあり、その中でお気に入りのレストランを発見し、何度も通っていました。気候は乾燥しており、からっとして過ごしやすかったです。クロアチアは海がとても綺麗で、実習後に近くのビーチに行ったり、休日には遠出も行ったり、メリハリのある人生で最も充実した1ヶ月間でした。

最後になりますがこの度クロアチアでの実習を行うにあたり、ご尽力頂いた兵庫医科大学の先生方、国際交流センターの鳥井さん、リエカ大学の先生方・スタッフの皆様、そして1ヶ月間共に過ごした中村さん、守本さん、本当にありがとうございました。