国際・国内交流
稲澤 健太さん
9月から10月にかけて、クロアチアでの短期留学に参加しました。異国の医療現場に身を置くことで、普段の学びとは異なる多くの刺激を受け、視野が大きく広がりました。
小児科で特に印象に残っているのは、小児神経内科での実習です。ネグレクトでの低栄養が原因で保護された赤ちゃんがいて、入院時の写真を見させてもらったときは本当に信じられないくらいに痩せ細っていました。私たちが実習で会ったときには写真とは見違えるほど回復していましたが、生後8ヶ月にもかかわらず生後2ヶ月の体重で、成長の遅れは著しいと説明されました。そして退院後も両親は逮捕されているので施設で保護されることになるだろうと先生が言っていて、その赤ちゃんのこれまで、そしてこれからのことを考えると目頭がとても熱くなりました。そして勉強になったなと思うのは、カルタゲナー症候群の赤ちゃんです。先生に「この赤ちゃんの心音を聴診してみて。あとで戻ってくるから、答えがわかったら教えてね。」と言われ、心臓のある左側を聴診してみたのですが、特に雑音などないように思いました。あとで先生が戻ってきて、「右側の聴診はどうだった?」と聞かれ、そこで初めて右の心音の方が強いことが分かり、カルタゲナー症候群と答えることができました。教科書では知っていた疾患でも、実際に患者さんを前にすると聴診など情報を1から集める必要があり、臨床の難しさを知りました。
脳神経内科では、パーキンソニズムの患者さんの鑑別に携わりました。症状の背景にさまざまな疾患が潜んでおり、正確な診断には細やかな観察と論理的な思考が求められることを痛感しました。特に印象に残っているのは、主訴がパーキンソニズムではなかった20歳の患者さんが、パーキンソン病の可能性を指摘されていたケースでした。自分よりも若い年代の人にそのような診断がつくかもしれないという現実に、驚きとともに深い衝撃を受けました。疾患を年齢で先入観的に捉えてはいけないという学びを得たと同時に、神経疾患の奥深さと診療の難しさ、そして面白さを感じました。
休日にはクロアチア各地を巡り、豊かな自然と文化にも触れました。特におすすめしたいのは、プリトヴィッツェ国立公園です。プリトヴィッツェ湖はエメラルドグリーンに輝く湖がいくつも連なり、まるで絵画の中に迷い込んだかのような美しさでした。水の流れる音と木々の香りに包まれ、心が洗われるような時間でした。ここで過ごした時間はあっという間で、まさに非日常、普段生きていても出会うことのない素敵な時間が流れていました。また、リエカからバスで少し移動したところにあるオパティアはリゾート地のようで、リエカで出会ったすべての人から行くように勧められたのですが、景色、レストラン、カフェ、ショッピングなどなにをとっても楽しい時間を過ごせました。クルック島では穏やかな雰囲気の中、ゆったりとした時間が流れていました。観光地の賑わいから離れ、地元の人々の暮らしが感じられる温かい島で、クロアチアのもう一つの魅力を知ることができました。首都のザグレブではクリスマスになるとヨーロッパ最大級のクリスマスマーケットが開催されるそうです。時期としては被りませんでしたが、夜お散歩していても街の温かい、賑やかな雰囲気がさまざまなところで感じられました。ぜひ次はクリスマスの時期に遊びに行きたいと思います。
番外編としてとても驚いた出来事があります。ある日、宿泊先のシャワーから冷たい水しか出なくなってしまい、仕方なく鍋でお湯を沸かしてお風呂に入りました。異国の地でのちょっとしたハプニングではありましたが、今では笑い話のような思い出です。生活の不便さも含めて、留学ならではの経験として心に残っています。
ここ一か月を改めて振り返ってみると、多くの人の助けなしにこの留学プログラムに行くことはできませんでした。庶務課の伊藤さん、庶務課の先生方、お世話になった病院の先生方、リエカ大学のPaola、職員の皆様、学生食堂の店員さん、空港と寮の間を行きも帰りも送迎してくれた車の運転手さん、ジムやコインランドリーで仲良くなった学生の方々、道案内してくれた現地の方々、カフェで私たちを癒してくれた犬たち、特に私がクロアチアに行く直前に、兵庫医科大学に留学にきてくれたリエカ大学のIda, Lea, Leonaには感謝してもしきれないくらいお世話になりました。リエカで車で観光地を案内してくれたり、素晴らしい時間を共有しました。別れ際のまた会おうねとハグしたことはいつまで経っても忘れません。一緒にこのプログラムに参加した阿部さん、樋口さんも本当にありがとう。
今回の留学を通して、医療面でも人間的にも多くの学びを得ました。患者さんの姿勢、医師たちの思考、そして異文化の中での暮らし、どれもが自分の価値観を見つめ直す貴重な機会となりました。この経験を糧に、これからも一人の医療者として成長していきたいです。