国際・国内交流
稲澤 健太さん
私はアメリカのRobert Wood Johnson Medical School(RWJMS)で1か月間、家庭医療、感染症科、外科などの臨床実習に参加しました。今回の実習では、日本との医療制度や文化の違いを学ぶだけでなく、「将来は世界で活躍できる精神科医になりたい」という思いを改めて強くしました。
家庭医療の実習では、高齢患者から生後18時間の新生児まで、幅広い年代の患者さんを診療する機会がありました。特に印象に残っているのは、指導医のDr. Linが話していた “from the cradle to the grave(ゆりかごから墓場まで)” という言葉です。アメリカの家庭医療を通して、私は「病気だけを診るのではなく、その人の生活全体を支える医療」の重要性を強く実感しました。また、Middlesex Countyでは結核予防活動について学び、病院外でも家庭医療スタッフが地域住民の健康を守る重要な役割を担っていることを知りました。この経験から、将来精神科医としても、症状だけでなく患者さんの生活背景や社会的孤立まで含めて支援できる医師になりたいと感じました。
外来では、骨粗鬆症、変形性膝関節症、化膿性汗腺炎など、さまざまな症例を経験しました。高齢女性の骨粗鬆症では慢性的な関節痛と骨密度低下について学び、若年女性の変形性膝関節症では、高度肥満に対する減量指導や運動療法の重要性を実感しました。また、妊娠中の化膿性汗腺炎患者さんには、鍼治療や生活指導なども取り入れた柔軟なアプローチが行われており、患者背景に合わせた医療の大切さを学びました。患者一人ひとりの背景を重視するアメリカの医療は、将来精神科医として患者さんと向き合いたい自分にとって非常に印象的でした。
感染症科では、RWJMS独自のantibiogramを用いた抗菌薬選択について学びました。菌種ごとの抗菌薬感受性が分かりやすく整理されており、とても実践的でした。また、意識障害患者さんの診療では、会話ができない状況だからこそ、身体所見や検査データを丁寧に評価する重要性を学びました。さらに、感染対策についても細かく指導していただき、多くの知識を得ることができました。
外科の実習では、日本人の先生方にご指導いただきました。先生方は、早い日には朝6時45分から、遅い日には夜23時頃まで手術や診療に携わっておられ、外科医として働くためには高度な専門性だけでなく、強い体力と責任感が求められることを実感しました。また、実習以外でも、食事に連れて行っていただいたり、ご自宅に招待していただいたりする機会がありました。慣れない海外生活の中で、日本人の先生方の温かさに触れられたことは、大きな安心につながりました。異国の地で活躍される先生方の姿はとても大きな刺激となりました。
さらに印象的だったのが、アメリカのチーム医療です。Interdisciplinary roundsでは、医師だけでなく看護師、ケースマネージャー、ソーシャルワーカーなどが対等に意見交換を行い、患者さん中心に議論していました。日本では職種間で遠慮が見られる場面もありますが、アメリカではオープンなコミュニケーションが自然に行われており、とても魅力的に感じました。多職種が連携しながら患者さんを支える姿勢は、精神科医療においても非常に重要であり、将来チーム医療を実践していく上で大きな学びとなりました。
また、メキシコ領事館の施設での健康診断ボランティアにも参加し、血圧測定を担当しました。英語で説明しながら患者さんとコミュニケーションを取る経験はとても貴重でした。移民に対する健康支援が、公衆衛生や感染症予防の観点から重要視されていることも学ぶことができました。この経験を通して、文化や言語が異なる相手に対しても、相手の背景を理解しながら関わる姿勢の大切さを実感しました。
実習以外でも、多くの刺激を受けました。偶然参加したランチミーティングでは、医学生だけでなく他分野の学生とも交流し、教授たちが大学院進学やキャリアについてアドバイスしている様子を聞くことができました。研究や将来について幅広い視点を得られたことは非常に有意義でした。また、日本にルーツを持つ学生たちとも交流し、改めてアメリカが多文化社会であることを実感しました。AIの普及により、志望理由書が画一化しているという話題もあり、これからはAIを活用しながらも、自分自身の経験や言葉で語る重要性を改めて感じました。
さらに、週末にはNew York Cityを訪れ、Central ParkやAmerican Museum of Natural History、Broadway Musicalに行きました。実際に訪れたNew York Cityでは、多文化が共存する都市のエネルギーを肌で感じました。高層ビル群が並ぶ街並みや夜景は非常に印象的で、街全体に活気があり、多様な文化が自然に共存していることを実感しました。
また、医学生たちとも多く交流する機会がありました。ハイキングや食事、スポーツなどを通して、お互いの大学生活や将来について語り合い、非常に充実した時間を過ごしました。最近のアメリカにおけるマッチングのトレンドについても話を聞くことができ、将来海外で働くために必要な準備について考える良いきっかけとなりました。こうした交流を通して、国が違っても同じ志を持つ仲間とつながることの大切さを感じました。
今回の実習を通して、医療技術だけでなく、多文化理解やコミュニケーション能力の重要性を改めて実感しました。また、「患者さんを中心に、多職種で支える医療」の在り方を学び、今後の臨床実習や将来の診療にも活かしていきたいと考えています。日本に帰っても語学学習を継続し、将来は精神科医として、日本だけでなく世界の医療にも貢献できる医師になりたいと思います。
最後に、この留学に関わってくださったすべての方々に感謝の気持ちを伝えたいです。庶務課の伊藤さん、国際交流センターの先生方、RWJMSのDr.Lin, Dr.Gitau, Zina, お世話になった病院の先生方、職員の皆様、JSAの方々、イベントで仲良くなった学生の方々、道案内してくれた現地の方々、特に私が日本にいたときに仲良くなったJersey, Stephanie, Kavya, Sophia, Nivi, Berkには感謝してもしきれないくらいお世話になりました。New Jerseyを車で案内してくれたり、遠くのスーパーまで送り迎えをしてくれたり、素晴らしい時間を共有しました。皆様に心より感謝を申し上げます。