薬学部 - 研究室紹介

創薬化学

化学系薬学分野

1. アフィニティ樹脂
1991年からハーバード大学S.L.Schreiber研究室留学時に学習したアフィニティ樹脂の可能性と当時の技術の欠点を学び、帰国後独自に一般医薬品にも適応可能なアフィニティ樹脂を用いたターゲット探索に関する基盤技術開拓を行ってきた。特に2001年からNEDO支援プロジェクトして木更津かずさDNA研究所に設立された㈱リバース・プロテオミクス研究所出向時には化学部門長として同技術開拓に専念した。藤沢薬品工業がアステラス製薬となり、研究環境に大きな変化が生じた機会に新設された兵庫医療大学薬学部教授(創薬化学)として赴任し、企業等との共同研究を通じ実績を積んできた。また、2014年に自身が発明した㈱リバース・プロテオミクス研究所保有知的財産を管理するベンチャーを兵庫医療大学発ベンチャーとして設立した。さらに、ターゲット探索技術を用いて製薬企業、アカデミアと研究を行い、AMEDからプロジェクト参加の声掛けもいただいた。

2. 創薬化学
1985年藤沢薬品工業に入社後、高谷所長(当時)のご指導の下、従来タイプの創薬化学に従事した。大学時代下記のとおり、一貫して量子化学による分子間相互作用の研究を行ってきたため、合成経験0であった。多くの先輩方に(厳しい?)ご指導をいただきながらの創薬活動であったが、ご指導のおかげで、胃腸障害のない新規COX阻害剤FR122047(血小板凝集阻害剤、P0 経営判断により中止)、接着ペプチドRGDペプチド選択的阻害剤FK633(血小板凝集阻害剤、P2A、主作用に基づく出血コントロール問題により開発中止)などの開発品、あるいは開発候補品を創出することに成功した。現在、FR122047およびDCP-LAはsigma-aldrichなどから標準化合物の一つとしてとして販売されている。抗がん剤ロミデプシンの創製にも発明者として貢献した。
兵庫医療大学(現・兵庫医科大学)赴任後は、辻川教授(阪大・薬)らとの共同研究で選択的PCA-1阻害剤(抗がん剤)を行っている。2015年度はAMEDから支援をいただき、最適化研究を行っている。HUHS015は発表済みの代表化合物であるが、PCA-1阻害活性に加え、各種のがん細胞増殖作用やXenograftモデルでの有効性を示している。また、32 mg/kg (s.c.)の1ヶ月連投という過酷な条件においても肝腎重量、血中パラメータ(GOP, GPT, BUN, クレアチニン)に異常がない高い安全性を示し、現在まで標準的化合物として十分機能している。また、ある疫学調査をベースとした、臨床医と連携し、膀胱がん治療薬を標的とした創薬研究も行った。
現在はAMEDの支援を受けて抗マラリア薬、抗アレルギー薬の創製を行っている。

研究室情報

教授
田中 明人
助教
馬渕 美雪