学部・大学院

多職種連携総合臨床実習                               (医学部・薬学部:5年次/看護学部・リハビリテーション学部:4年次)

兵庫医科大学は、兵庫医療大学との統合により、医学部、薬学部、看護学部、リハビリテーション学部の4学部を要する「医系総合大学」として新たな一歩を踏み出しました。これまで進めてきた学部・職種の垣根を超えたIPE(多職種連携教育)を一層発展するために、ささやま医療センターにおいて、4学部合同で多職種連携総合臨床実習を行います。実際に患者さんに問診を行いながら、多職種でのグループディスカッション等をとおして入院治療計画や退院支援を考える実習です。

実習スケジュール

1日目

・オリエンテーション
・病棟スタッフに挨拶、自己紹介
・担当患者へ挨拶
・入院治療計画の作成
・4学部合同ミニカンファレンス

オリエンテーション

院長から患者中心の医療方法について、看護部長から施設概要について、また指導教員から多職種連携臨床実習についてオリエンテーションが行われます。

2日目~4日目

・治療計画の確認
・担当患者の診察
・グループディスカッション
・4学部合同ミニカンファレンス
・退院指導への参画
・老人保健施設・リハビリテーション・薬剤部の見学

担当患者の診察

患者さんへの問診を行い、入院治療計画の作成や退院支援に向けての情報を整理します。

グループディスカッション

学部ごとに評価した担当患者さんの診察内容を基に、グループディスカッションを通して入院治療計画や支援計画を作成します。

5日目

・プレゼンテーション
・講評および修了証授与

プレゼンテーション

担当患者の退院支援計画について、グループごとに発表を行います。

参加学生の声

①今回の実習では具体的にどのようなことをされましたか。

◆医・薬・看護・リハビリテーションの4学部で協力しながら症例検討・発表を行いました。症例検討では、情報収集を行い、得られた情報から問題点・課題を抽出しました。さらに、患者さんにとってのゴール・目標を設定し、これらを達成するには何が必要であるのか、治療・リハビリテーションの方針についてディスカッションを行いました。情報収集の際は、カルテだけでなく、実際に患者さんに問診を行い、症例発表では、先生方に向けて症例検討の内容について、パワーポイントを用いて発表を行いました。 【リハビリテーション学部 理学療法学科 第4学年次】
◆担当した患者さんの入退院時計画を立てる際に、グループ内で各分野の専門性を生かしながら話し合い、何を聞き、何に注意して日常動作を観察するのかなどを事前に決めました。例えば、服薬における嚥下能力に問題がないかを看護学部やリハビリテーション学部の学生に聞き、その評価を教えてもらったうえで処方提案を行いました。また、患者さんの意向をどのように反映させるのかについても重要視したため、グループのメンバーがそれぞれ患者さんから直接伺った内容を共有し、優先順位の高い意向から反映できるように計画の作成を行いました。また、グループワークの他にも、ささやま医療センターの施設見学や実際のリハビリテーションの様子の見学や器具の体験なども行いました。 【薬学部 第5学年次】

②実習をとおして、多職種連携についてどのような気づきや発見を得ましたか。また、そのことがこの先にどう役立つと思いますか。

◆それぞれの職種が持つ情報と強みを知ることができました。また、学部内では当たり前の用語が自身の領域だけの専門用語であったなど、他職種にも分かりやすく伝えることの大切さを学ぶことができました。職種によって患者さんに対する視点が異なるため、積極的に意見交換を行うことで自分自身の視野を広げられるとともに患者さんへの提案の幅も広がり、より良い生活に向けての検討が行えるのではないかと思いました。この実習を経験したことで他職種との交流意識を高めることができ、円滑なコミュニケーションへと繋がるのではないかと考えます。 【リハビリテーション学部 作業療法学科 第4学年次】
◆知らなかった職種に触れることで新たな知見を得られたこと、医療専門職者と患者さんがお互いに何をどう思っているのか考え、尊重し合うことの大切さを学びました。また、実務実習とは少し異なった「学生の頃から本格的・自発的に患者さんと関わること」で、将来実地に立った時の緊張感や不安感は少なくなると思います。疾患を抱えている患者さんと実際に関わるため、何回お話しさせていただいてもこちらの意図が伝わりきらないという状況が多々ありました。しかし、グループのメンバーと「次はどのように接すれば関心を持っていただけるのだろう?」と何度も話し合い、失敗を繰り返し、ようやく話を聞いてもらえるようになった時は本当に嬉しかったです。患者さんの力になりたいと思う気持ちを失わない「絶対に諦めない精神」が非常に大切だと思いました。 【薬学部 第5学年次】

③今回の実習で最も難しかった(大変だった)のはどのような点でしたか。併せて理由もお聞かせください。

◆患者さんの意向に沿った処方の提案です。ご高齢の患者さんに対し、ポリファーマシー(注1)に注意したうえで残すべき処方薬の選定、服薬に対する意識や薬効の実感を把握しつつ、最適な処方提案を行うことは初めての経験であったため、非常に難しく感じました。実際にどちらの薬の効果をより実感しているのかなど、患者さんに直接お話を伺わなければ判断が難しい場面もあり、症例ベースとの違いに難しさを感じました。 【薬学部 第5学年次】
◆他学部と話し合いを行ううえで、職種により知っている専門用語が偏っていた点。そのため、略語などは使用しないことや検査内容等を簡潔に説明するように心がけました。 【リハビリテーション学部 理学療法学科 第4学年次】
◆担当した患者さんとご家族が、退院後どのようにしたいのかという部分で食い違っていた点。カンファレンスに参加する前は患者さん自身の考えをなるべく尊重した提案を考えていましたが、カンファレンスに参加後、ご家庭の事情もあり現実的には困難だと感じるものもありました。私たちは入院している場面しか見ることができないため、生活面については医療ソーシャルワーカー(MSW)(注2)やケアマネジャー(注3)と医療専門職者間の情報共有が欠かせないと感じました。 【薬学部 第5学年次】

(注1)ポリファーマシー…「必要以上に薬が処方されている状態」あるいは「不必要な薬が処方されている状態」を指す。
(注2)医療ソーシャルワーカー(MSW)…病院、保健所などの保健医療機関の場におけるソーシャルワーカー(病気や障害などによって生活に問題を抱える人に対して社会福祉支援を行う専門職)。
(注3)ケアマネジャー…介護を必要とする方が介護保険サービスを受けられるように、ケアプラン(サービス計画書)の作成やサービス事業者との調整を行う、介護保険に関する専門職。別称は介護支援専門員。

④今回の実習で最も達成感があった(楽しかった)のはどのような点でしたか。併せて理由もお聞かせください。

◆最終日の発表までやり切れたことです。今回の実習には、自分のスキルアップに繋がり、今後の臨床場面でも生かすことができるのではないかと思ったため参加を決めました。本学の初の試みで前例がなく、相談できる先生や先輩もいなかったため実習が開始されるまで不安もありました。しかし、先生方をはじめ、同じ参加者の学生と密に連携をとりながら、無事に5日間最後までやりきることができたことに達成感を感じました。大勢の前での発表は緊張しましたが、先生方はしっかりと学生の話に耳を傾け、不足していた情報を補ってくださったおかげで、とても良い雰囲気で終えられた点も良かったと思います。 【リハビリテーション学部 作業療法学科 第4学年次】
◆自分自身が学んできた知識を症例検討の場で役立てることができた点。実際の臨床現場で他学部と協力しながらディスカッションを行うことは初めてだったので、とても良い経験になりました。また他学部の意見を聞く中で新しい発見がいくつもあり、今まで学んできた分野だけでなく、様々な分野についても知ってみたいと思いました。 【リハビリテーション学部 理学療法学科 第4学年次】

⑤今回の実習は、4学部合同のチーム医療論演習と、どのような学びの違いがありますか。

◆チーム医療論演習は仮想の患者さんデータと症例をもとに話し合いましたが、今回の実習は実際に患者さんを担当して話し合いを行いました。チーム医療論演習では患者さんの考えや感情といった情報が少なく、「こう考えているんだ」と記載されている結論から汲み取って話し合っていましたが、今回は実際の患者さんとコミュニケーションをとることで多くの情報を得ることができ、他学部生ともたくさんコミュニケーションをとることができました。その結果、それぞれの職種の考え方、自分の職種の役割・他職種の役割や相談内容が明確になり、より深い議論を行うことができたと思います。 【看護学部 第4学年次】
◆チーム医療論演習でも学部混成のグループでディスカッションを行うところは同じですが、今回の実習では実際に患者さんとご家族に向き合うため、ご本人の気持ちや環境、介助力などの問題点も考えていく点が異なりました。また、患者さんの状態が日々変化するため、それに合わせた対応が必要となることを実感しました。 【リハビリテーション学部 作業療法学科 第4学年次】