学校法人 兵庫医科大学

直腸癌局所再発手術における出血リスクの減少を目指した内腸骨静脈の正確な描出に成功 ~放射線技師と外科医による多職種連携研究~

研究

兵庫医科大学病院(所在地:兵庫県西宮市、病院長:池内 浩基)放射線技術部 放射線技師 城本 航は下部消化管外科 講師 木村 慶らと共同で、直腸癌の局所再発に対する観血的治療のリスク因子となる内腸骨静脈を正確に描出する適切なMRIシークエンスを探索し、「MRI True-FISP」シークエンス法を用いた描出の正確性について論文を発表しました。

上段左より  源 貴裕(放射線技術部 部長)、池田 正孝(下部消化管外科 主任教授)、城本 航(放射線技術部)、中桐 穂高(放射線技術部)、江頭 拓夢(放射線技術部) 下段左より  桐木 雅人(放射線技術部)、木村 慶(下部消化管外科 講師)、中嶋 大輔(放射線技術部)

研究概要

直腸癌局所再発において、内腸骨静脈を処理する際に、損傷すると致死的な出血をきたす恐れがあります。そのため、術前の正確な内腸骨静脈の把握が必要です。そこで今回、我々は直腸癌の局所再発に対する手術予定の患者さんを対象として、必要な内腸骨静脈を正確に描出する適切なMRIシークエンスを探索した結果、「MRI True-FISP」シークエンス法により正確な内腸骨静脈の描出に成功しました。

研究背景

直腸癌局所再発では初回手術で剥離された層を再度剥離することとなり、解剖学的同定が困難な難易度の高い術式となります。また、内腸骨静脈の分岐形態は非常に複雑です。これまで、内腸骨静脈の第1-2分岐まではCTやMRIを用いて評価している研究は見られますが、直腸癌局所再発の手術で最も重要となる末梢分岐を描出した研究はありません。今回、心臓血管の描出に優れる「MRI True-FISP」というシークエンスを用いて、内腸骨静脈の描出を行うことにしました。

研究手法と成果

研究手法

2023年3月から2023年11月までに直腸癌の局所再発手術が必要な11名の患者さんを対象としました。
CTはヨード造影剤を用いてCT血管造影法で、MRIはTrue-FISP法を用いて撮影しました。さらに血管が明瞭に描出できるようT1短縮作用のあるガドリニウム造影剤、腸管蠕動によるアーチファクトを抑えるための抗コリン薬・ブチルスコポラミンを投与しました。
手術中に参照できるよう血管や骨盤解剖を3D再構築するため、CTで得られた内腸骨血管とMRIで得られた内腸骨血管を画像解析システム「SYNAPSE VINCENT®︎」を用いて行い、血管描出の評価は、内腸骨血管が最も近接する筋肉である梨状筋とのコントラスト比を測定し評価しました。

成果

内腸骨静脈のコントラスト比はCTで0.23、MRIでは0.55と、MRIでの内腸骨静脈のコントラスト比が優位に高い結果となりました(p<0.01)。CTとMRIのフュージョンで歪みを評価し、左右の坐骨棘、坐骨棘~尾骨や坐骨棘から上殿動脈分岐部までの直線距離を測定した結果、誤差の平均値は1mm未満でありCTとMRIのフュージョンにおける歪みは認めず、骨盤や動脈を重ねることで手術に活かすことができる画像となりました。
今回の検討結果から、「MRI True-FISPシークエンス法を用いることは、正確に内腸骨静脈の末梢分岐まで描出できる」ということが示唆されました。

今後の課題 

今回の検討では症例数が少ないため、本症例をさらに集積し、これまでの症例との比較を行うことで出血量の軽減について検討する必要があります。

研究費等の出処

なし

論文情報

掲載誌

Magn Reson Imaging. 2024 Apr 7;111:9-14. doi: 10.1016/j.mri.2024.04.006.

論文タイトル

Delineation of the internal iliac vein using MRI with true FISP sequence in patients with locally recurrent rectal cancer: A pilot study using CT/ MRI fusion

著者

城本 航 1、 木村 慶 2、 桐木 雅人 3、 小泉 将司 3、 中桐 穂高 3、 中嶋 大輔 3、 河中 祐介 4、 北島 一宏 4、
髙木 治行 4、 別府 直仁 5、 片岡 幸三 5、 池田 正孝 5、 山門 亨一郎 4

所属

1兵庫医科大学病院 放射線技術部 
2兵庫医科大学 消化器外科 下部消化器外科
3兵庫医科大学病院 放射線技術部 
4兵庫医科大学 放射線医学教室 
5兵庫医科大学 消化器外科 下部消化器外科