学校法人 兵庫医科大学

~網膜剥離 手術後~ 眼球内にシワが存在、視界のゆがみの原因に

研究

兵庫医科大学(兵庫県西宮市、学長・野口 光一) 眼科学 福山 尚助教、五味 文主任教授らの研究グループは、関西学院大学 理工学部 岡留 剛教授、角所 考教授、矢切 大海大学院生との共同研究により、裂孔原性網膜剥離に対して硝子体手術を行った患者の手術後にみられる網膜外層のシワを定量的に解析しました。また、このシワが、術後の後遺症である視界のゆがみ(歪視)に影響を与えていることが判明しました。

ポイント


網膜剥離の手術後、すべての患者さんの網膜外層にシワができていた
シワがあることを数値で証明したのは初めて
シワの存在が歪視に影響を与えていることが判明した

本研究成果に関する論文は、日本時間 2月20日(水)19:00(英国標準時 同日 10:00)に、国際科学雑誌Natureグループ誌 「Scientific Reports」の電子版に掲載されました。

【論文情報】

・掲載誌
「 Scientific Reports 」 20th, February, 2019電子版
・論文タイトル
「Quantitative assessment of outer retinal folds on enface optical coherence tomography after vitrectomy for rhegmatogenous retinal detachment」
・著者
福山尚、矢切大海*、荒木敬士、岩見久司、吉田由美子、石川裕人、木村直樹、 角所考*、岡留剛*、五味文
*関西学院大学 理工学部 *印以外はすべて兵庫医科大学 眼科学

裂孔原性網膜剥離(れっこうげんせい もうまくはくり)について

裂孔原性網膜剥離は、加齢などに伴う眼球内の変化により網膜に孔が開いてしまい、目の中にある水がその孔を通って網膜の下に入り込み網膜がはがれる疾患です。早期に手術をしないと視力は回復しません。硝子体手術では眼球中にガスを入れてはがれた網膜を押さえ、レーザーで穴を防いで元の状態に戻します。網膜を戻して視力を回復させることが目標で、術後のゆがみについては十分な理解がなされていませんでした。

研究の方法

研究対象は、2016年10月から2017年8月までの間に兵庫医科大学病院にて裂孔原性網膜剥離の硝子体手術を受けられた、25歳から71歳までの33名の患者さんです。手術後1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月後にenface OCT(光干渉断層計)で撮影した眼球断面画像やM-CHARTSテスト結果などの検査データを使用しました。また、数値化したデータを解析し、皺襞(しゅうへき)(シワ)と歪視(わいし)に相関があるかを調査しました。

なお、enface OCTの画像に関しては、共同研究者である関西学院大学 理工学部が独自プログラムを作成して、シワの形状がよく見える解析しやすい画像に変換しました。

兵庫医科大学 眼科学 助教 福山 尚

研究者コメント

眼科は、日常診療において画像を用いた検査を行い、診断、治療にあたることが多々あります。今回、その画像を解析して数値などで定量的に表すことができました。

以前より、視界のゆがみ(歪視)には興味がありましたが、enface OCTという新しい画像技術でとらえた画像を見てみると、網膜剥離術後の患者様の網膜外層に皺襞があると気づき、研究を始めました。

今回の研究成果により、皺襞が歪視に影響することも判明したため、今後、皺襞を減らし、歪視になりにくいようにするにはどうしたら良いのか、実用臨床的な側面も研究してみたいと考えています。