学校法人 兵庫医科大学

~がんの早期診断システム開発をめざして~ 島津製作所と産学連携講座を設置

その他

兵庫医科大学 (兵庫県西宮市、学長・野口 光一)は、超高齢化社会に伴う医療費の増大抑制や健康寿命の向上による一億総活躍社会の実現に向けて、株式会社島津製作所(京都市、代表取締役・上田 輝久 ※以下、島津製作所)と連携して、がんの早期診断システム開発研究を実施しています。

この研究に先立ち、本学は島津製作所と2019年4月1日に「包括共同研究契約」を締結し、同日に産学連携講座「疾患オミクス解析学講座」を設置しました。本講座の設置目的は、大腸・胃・肺・膵臓・乳がんなど主要がん種の検査法および早期診断システムの開発をめざし、双方が有する研究開発能力を活かして緊密に連携して研究を行うことです。兵庫医科大学に新たに研究拠点を設け、同一法人内の兵庫医科大学病院や健康医学クリニック(いずれも兵庫県西宮市)で収集した検体を同社の質量分析装置にかけ、「疾患オミクス解析技術」を用いて研究を進めています。

【 疾患オミクス解析とは 】
オミクスとは、生物を構成する分子(DNA、mRNA、タンパク質、代謝物など)全体をさまざまな階層で網羅的に研究する分野のことです。疾患オミクス解析は、再生医療、医薬品開発など、ライフサイエンス分野において有用な研究手法として起用されています。本講座では、各疾患におけるオミクス階層の変動に注目し、生体内の代謝異常に基づいた疾患の新たな知見を得て、がんの診断・治療に活かす予定です。

●包括共同研究契約 協定内容(一部)
・共同研究等の研究協力
・研究技術、研究材料など研究情報の交換
・研究者、技術者の人材交流
・次代を担う研究者、技術者の養成
・双方が所有する施設・設備・装置・研究用試料などの相互利用の促進
・産学連携講座の設置および運営
・その他、連携・協力関係を推進するために必要な協力

●講座の特徴
・学校法人兵庫医科大学は、医学的な研究を行う「兵庫医科大学」、臨床治療の現場である「兵庫医科大学病院」、ヘルスケアを支援する「健康医学クリニック」と、役割の異なる3つの機関を擁し、高度かつ新しい医療サービスを早期に社会へ提供できる体制を有しています。

・島津製作所は、クロマトグラフ※1や質量分析計に代表される微量な成分を高感度で検出できる分析計測機器と、疾患の早期発見や早期治療を支援する医用画像診断装置を、長年に亘って提供しており、両者を融合した新たな診断システムの開発を進めています。

・今回、企業と大学が共通の課題について出口を見据えた高度な共同研究を行う産学連携講座の仕組みを活用し、双方の持つ技術と知見を融合させて新たな診断システムやサービスの開発と社会実装に取り組んでいます。

●講座の研究概要
本講座では、島津製作所のガスクロマトグラフ質量分析計※2と液体クロマトグラフ質量分析計※3を用い、生体内代謝物を網羅的に分析するメタボロミクス技術による早期がんを発見するためのスクリーニング法※4の開発に既に取り組んでいます。
現在、健康医学クリニックにおいて健常者の血液検体、兵庫医科大学病院の各診療科において膵がん・大腸がん・乳がん患者の血液検体を収集しています。今後は他の種類のがん患者からも検体提供を受ける体制を構築しつつ、健常者と患者の血液検体中の代謝物の量を比較し、複数種のがんの早期発見につながるバイオマーカー※5の探索を行い、早期がんスクリーニング法の実装化をめざします。
将来的には、健診データや医療データを基に健康ポータルサイトを通じた助言サービスなど、各個人にあわせたサービスを展開することで人々の健康増進に貢献していきます。

●産学連携講座「疾患オミクス解析学講座」構成員
・特任教授 三輪 洋人(兼任:消化器内科学 主任教授)
・教授 池田 正孝(兼任:消化器外科学)
・准教授 菊池 正二郎(兼任:先端医学研究所 医薬開発部門)
・特任講師 西海 信
・スタッフ 看護師1名、実験助手2名

兵庫医科大学 疾患オミクス解析学 特任教授 三輪 洋人

責任者からのコメント

この度、高度ながん医療を行う兵庫医科大学病院や、人間ドックを行う健康医学クリニック、最先端の研究を行う大学・医学部を同一法人内に併せ持つ学校法人兵庫医科大学と、分析技術や機器等に秀でた島津製作所が強固に連携し、がんの早期診断システムの開発に向けて共に研究を行える基盤が整いました。
双方が持つ知見、専門性や強み、そしてハード面を存分に活かし、疾患オミクス解析を実施することで、次世代の医療・健康分野に貢献すべく邁進する所存です。

・用語解説
※1 クロマトグラフ:固定相及び移動相に対する化合物の特性の違いによって分離を行う分析装置。
※2 ガスクロマトグラフ質量分析計:移動相が気体であるガスクロマトグラフ(GC)と質量分析計(MS)を接続した分析装置。
※3 液体クロマトグラフ質量分析計:移動相が液体である液体クロマトグラフ(LC)と質量分析計(MS)を接続した分析装置。
※4 スクリーニング法:無症状の方や健康な方を対象として、特定疾患の罹患リスクの高い方を見つけるための方法。
※5 バイオマーカー:疾患の有無や進行度(生理状態)を反映する生体内物質であり、生体内の生物学的変化を定量的に把握するための指標。

本リリースに関するお問い合わせ先

学校法人兵庫医科大学 総務部 広報課
TEL:0798-45-6655(直通)
FAX:0798-45-6219
E-mail:kouhou@hyo-med.ac.jp