推薦図書リスト4(2011年)

by Author NameSept 8th, 2018

「寺子屋」免疫生物学 推薦図書

教科書の外にも学びたいことは沢山あります。「寺子屋・免疫生物学」では読んでみたい本の推薦もしています。いずれも手に入りやすい本で、多くが生体防御学研究室や図書館に収められています。

ドキュメント東日本大震災 そのとき薬剤師は医療チームの要になった(日経ドラッグインフォメーション 東日本大震災取材班 編:日経BP社)
昨年11月に奥松島・野蒜地区(宮城県)を訪れる機会がありました.震災から半年以上が過ぎてなお、現場では津波被害の甚大さに立ちすくむばかりでした.本書は東日本大震災直後の医療活動において、薬剤師が医薬品供給と医療情報の提供になくてはならない存在だったことを記すドキュメントです.緊急時ばかりでなく、日常の医療においても薬剤師がはたすべき役割を考えさせられます.

心を整える(長谷部誠著:幻冬舎)
著者はサッ���ー日本代表の主将を務める長谷部誠選手.南アW杯ではゲームキャプテンに抜擢され、見���なキャプテンシーを発揮したことが記憶に残ります.本書は、しばしば「メンタル」という言葉で語られる精神的なコンディショニングについて、彼の考え方とスキルが「心を整える」という視点から(「鍛える」のではなく)、56の小節にまとめられています.私自身も日々の暮らしの中で「意識して心を鎮める時間を作る」ことの大切さと難しさに直面します.さて、あなたは?

ジェノサイド(高野和明著:角川書店)
多くの書評欄で高い評価をうけたエンターテインメント小説.コンゴのジャングルと東京のアパートの一室で繰り広げられる「人類全体に奉仕する仕事」をめぐる物語の面白さもさることながら、物語の主人公が創薬化学を専攻する薬学部大学院生として描かれていることが推薦理由の一つです.物語のうねりの中で、創薬研究の進展が鍵を握ります.そういえば、映画「猿の惑星:創世記」でも出来事の発端は創薬研究にありました.薬学生のあなた、ちょっと読んでみたくなりませんか?

スティーブ・ジョブズ I/II (アイザックソン著・井口訳:講談社)
私は25年来のMacユーザーです.Macとのつきあいが長くなると、Jobs氏のジェットコースターのような人生には目をみはり、そのカリスマにはしばしば魅入られます.本書は癌に冒されたJobs氏が「僕のことを子供たちに知ってほしかったから」と綴られた自伝です.自らの癌についてゲノム解析を行い、その結果に基づいて治療を受けていたことなども記されます.Jobs氏のスタンフォード大学卒��式での伝説のスピーチもあわせ���お奨めです.
(日本語字幕付き:http://video.google.com/videoplay?docid=9132783120748987670).

世界史 上/下(マクニール著・増田/佐々木訳:中公文庫)
「アラブの春」のような社会の激動を目の当たりにすると、現在の私たちの文明が様々な意味で転換点にあるように感じられます.いったい、これまでの人間の歴史はどのような背景をもってどのように糾われてきたのだろう.「歴史は偶然、クレオパトラの鼻」と感じる一方で、人間の歴史を一つの全体として俯瞰することもできるようにも思います.本書は歴史学者マクニールの視点からまとめられた「ひとつの世界史(原題は”A World History”)」.これからは、いったいどんな文脈で世界が動いていくのだろう.

自由と民主主義をもうやめる(佐伯啓思著:幻冬舎新書)
アメリカの金融破綻やギリシャの財政危機はアメリカ的価値基準やグローバル化した資本主義の行く末を予見しているように思えます.翻ると、日本も様々な局面で危機的な状況にあります.このような状況にあって、著者は日本の再生にはアメリカとの決別が不可欠であり、日本は「保守の精神」を大切にするべきであると述べます.そして、「保守」と「革新」、「右翼」と「左翼」、はたまた「サヨク」を俎上にあげて論じます.さらに「自由は普遍の価値ではない」とたたみかけます.しかし、なんとまぁ挑発的なタイトルなのだろうか.