推薦図書リスト2(2009年)

by 田中 稔之

「寺子屋」免疫生物学 推薦図書

教科書の外にも学びたいことは沢山あります。「寺子屋・免疫生物学」では読んでみたい本の推薦もしています。いずれも手に入りやすい本で、多くが生体防御学研究室や図書館に収められています。

* 科学に親しむ読み物

免疫の意味論(多田富雄:青土社) ¥2200
免疫系はあらゆる「非自己」を「自己」から区別して個体のア���デンティティを決定するスーパーシステムとして捉えることができる。「生命」という大きな文脈の中に「免疫」現象を配置することによってこそ、そ���「意味」が浮かび上がることに改めて気がつく。著者の多田富雄先生は免疫学者として著名な東京大学名誉教授。

新・現代免疫物語(岸本忠三・中嶋彰:講談社ブルーバックス)¥1029
現在注目の「抗体医薬」や「自然免疫」の威力を突っ走るスピード感をもって物語る前著に続く免疫学の入門書。新しい抗体医薬の初めてのヒトへの投与の緊張感**

単純な脳、複雑な私(池谷裕二:朝日出版社)¥1700
意識と無意識を含む脳の働きから心の仕組みに迫ろうとするスリルに満ちた高校生への連続講義録。ランダムなノイズから生み出される美しい秩序?自由意志は自由否定?いざ!

*文章・アイディア・読書術

超整理法(野口悠紀雄:中公新書)¥777
やや古くなったけれど、まだまだ考え方は生きている。「使用頻度」に基づく分類しない整理法や用いる用紙はすべてA版に限るなど参考になる点が多い。

思考の整理学(外山滋比古:筑摩文庫)¥520
自力では飛べない「グライダー人間」から自分自身で空を駆ける「飛行機人間」へ返信するにはどうする?考えの整理やアイディアの生み出し方のヒントが多数。既に紹介した「アイディアの作り方」とよく似ていることに驚くかもしれない。

スラムダンク勝利学(辻秀一:集英社インターナショナル)¥1050
「スラムダンク」は主人公・桜木花道を中心にした湘北高校バスケット部の熱い時間を描く物語。本書は「スラムダンク」にちりばめられた自分を高める秘訣集。スラムダンクをもう一度読みたくなる。

*文学・エッセイにも親しもう

岳物語(椎名誠:集英社文庫)¥450
著者と息子「岳」の物語。ショーネン・岳が父親・シーナをまだ見捨てていない頃の美しい物語。「あぁ、いいなぁ」と感じられる著者の明るい私小説的物語は「岳物語」に始まり、25年を経て「大きな約束」へと続く。

ジュラシックパーク(マイケル・クライトン:ハヤカワ文庫)上 ¥861 下 ¥663
バイオテクノロジーを駆使してよみがえった恐竜が闊歩する「ジュラシックパーク」でおきるサスペンスを描くエンターテインメント。スピルバーグの手による映画は当時最新のDNAシークエンサーが冒頭に印象的に現れる。クライントンはハーバード大学医学部卒。「恐怖の存在」では近年の過剰な環境保護ブームに批判的な立場を示した。著者は2008年11月没。

* 哲学・思想や人生についての考え

悩む力(姜尚中:集英社新書)¥714
決して生きやすいとはいえない現代を生きる悩み。その「悩む力」を「近代」と格闘した夏目漱石とマックス・ウェーバーの足跡を手がかりに考えてゆく。徹底的に「悩み」、その悩みのはてにある突き抜ける突破力にこそ明るい未来を開く力が宿ると説く。みんな、若いのだから悩むのは当たり前だよ。私も悩みを突き抜けてみたいものだ!?

最後の授業(ランディ・パウシュ:ランダムハウス講談社)¥2310(DVD付き)
著者が癌に侵された身で行った「最後の授業」の記録。著者はこの「授業」を通じて、どのようにして自身の目標と夢を達成してきたかを、聴衆とそして残された幼い子供達に伝える。著者はカーネギーメロン大学でコンピュータサイエンスの教鞭をとる教授だった。DVDにも収録の授業は日本語キャプション付きで、インターネット配信もされている。

羊の歌(加藤周一:岩波文庫)¥740 続 ¥700
「知の巨人」とよばれた著者の1986年時点の回想録。羊の歳に生まれ、戦争の嵐が吹き荒れる時代のなかでどのように個性が形成されていったかが綴られている。不戦の立場を取る「九条の会」呼びかけ人の1人。著者は2008年12月没。