気道アレルギーにおける環境因子の影響

近年アレルギー性疾患の患者は増加傾向にあり、国民の2人に1人がなんらかのアレルギー性疾患に罹患していることが報告されています。この罹患率の上昇には、遺伝的要因、衛生仮説、環境要因など様々な要因が複雑に絡み合っていると考えられています。環境要因については大気中の環境汚染物質などの関与が指摘されており、最近では大気中の微粒子である黄砂やPM2.5などがアレルギー性疾患の発症と増悪に深く関与していることが示されています。多くの研究から大気中の微粒子が免疫細胞を刺激するアジュバントとして働き、アレルギー性炎症を誘導・増悪すると考えられていますが(「アジュバント研究を基盤としたアレルギー性炎症発症機序に関する研究」の項を参照)、微粒子がどのようなメカニズムで免疫細胞(とくに自然免疫細胞)を刺激し、どのような因子がアレルギー性炎症に関与するのかはいまだに詳細には明らかにされておりません。
私たちはこれまで微粒子がアジュバントとして働き、自然免疫細胞の一つであるマクロファージの細胞死を誘導することでアレルギー性炎症が誘導されることを明らかにしてきました(Kuroda et al.Immunity 2011, Kuroda et al. Int Rev Immunol 2013)

特に肺胞マクロファージは微粒子を貪食することより細胞死を引き起こしますが、その結果として細胞内に蓄えられたIL-1αが肺内に放出されます。そのIL-1αがB細胞からのIgE誘導を促進することが明らかになり、肺胞マクロファージがユニークな特性を持つ細胞であることが明らかになりました図参照、 Kuroda et al.Immunity 2016)

しかしながら細胞死の誘導やIL-1α放出の詳細なメカニズムはいまだ明らかにされていません。私たちは肺胞マクロファージを含め、肺の免疫応答の特殊性を研究し理解することで、気道アレルギーや肺の炎症性疾患発症のメカニズムの解明を目指しています。最終的には新しい治療法や予防法への発展に貢献することを目標としています。

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