アジュバント研究を基盤としたアレルギー性炎症発症機序に関する研究

免疫細胞はやられた味方(死細胞成分)も認識して勢いづく

免疫応答には自然免疫と獲得免疫の2種類が存在します。自然免疫はマクロファージや樹状細胞などの細胞を中心とした免疫応答であり、感染防御においては初期に活性化し生体防御に貢献します。獲得免疫はT細胞やB細胞などのリンパ球の活性化を中心とした免疫応答であり、病原体に対して特異的に反応する抗体などを産生することで生体防御の役を担っています。これまでの免疫学の研究から、獲得免疫を誘導するためには自然免疫の活性化が重要であることが明らかにされており、特に自然免疫細胞の表面もしくは細胞内に存在するパターン認識受容体(pattern recognition receptor:PRR)と呼ばれる病原体センサー分子が活性化することにより獲得免疫が誘導されると考えられています。このセンサーは病原体由来の成分のみならず、病原体によって傷害された自分自身の細胞成分(死細胞成分)も認識し、自然免疫細胞を活性化します(図1)
このような自然免疫を活性化する成分はワクチン効果の増強やがんに対する免疫応答を誘導するための免疫賦活剤として有効であると考えられており、「アジュバント」と呼ばれます。

免疫を活性化する成分はアレルギーや自己免疫疾患などの免疫性疾患を誘導することもある

一方で、免疫を活性化する成分はアレルギーや自己免疫疾患などの免疫性疾患を誘導することもあります(図2)
特に近年増加傾向にあるアレルギー性疾患については遺伝的要因、衛生仮説、環境要因などが原因として挙げられていますが、私たちは身の回りに存在する様々な化学物質や汚染物質、さらにはアレルゲン自身が免疫細胞を刺激するアジュバントとして働き、アレルギー性炎症を誘導しているのではないかと考えられています。

このようにPRR を介した自然免疫細胞の活性化がアレルギー性炎症の誘導に関与すると考えられますが、その詳細なメカニズムは未だはっきりとは明らかにされておりません。
私たちの研究室ではアレルギー性疾患発症の引き金となる初期の免疫応答について、アジュバントの作用機序という観点から解析することによりアレルギー性疾患発症の根本を理解することを目標としています。

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