次世代を担う発展性が高い医療の研究を行っております。

シーズ集に関するお問い合わせ

腫瘍の治療剤及び複合体

情報更新日 2024年11月25日

シーズ情報

キーワード

スフィンゴシン-1-リン酸

分野

乳癌、固形癌一般

概要

スフィンゴシン-1-リン酸(S1Pは)、多彩な生理活性を有する脂質メディエータであり、腫瘍細胞においては、 S1Pシグナル伝達経路が、腫瘍細胞の増殖、遊走、生存等に関与することが報告されている。S1P受容体調節薬の1つであるFTY720(Fingolimod)は、多発性硬化症の治療薬として本邦で保険適用となっており、癌の増殖や転移をよく抑えることがin vitroの実験系で示されている。さらに多発性硬化症治療薬として新規にFDA承認されたS1P受容体調節薬3剤(Ozanimod、Sponimod、Ponesimod)もFTY720と同様に癌の増殖抑制作用が期待される。
しかしながら、 FTY720等のS1P受容体調節薬は、生体内では強い免疫抑制作用を発揮するため、正常細胞に対する副作用が問題となる。また、 S1P受容体調節薬による免疫抑制作用は、がん細胞に対する抗腫瘍免疫を解除するというがん治療の方法論のひとつに相反する。
本発明は、 理化学研究所の田中 克典 主任研究員らにより開発されたアクロレイン反応部位としてアジドプローブ(窒素原子が直線上に3つ並んだ「アジド基」を導入したプローブ)をFTY720等のS1P受容体調節薬に付加することによって、癌細胞のみで作用することができる新規プロドラッグの提供を可能としたものである。

何が新しいか?

本発明は、 アクロレイン反応部位としてアジドプローブ(窒素原子が直線上に3つ並んだ「アジド基」を導入したプローブ)をFTY720等のS1P受容体調節薬に付加することによって、癌細胞のみで作用することができる新規プロドラッグの提供を可能としたものである。
これまでS1Pシグナル経路を標的とした薬剤の副作用として、免疫抑制の問題があり、抗癌剤としては不適であったが、本発明は新規DDSによって免疫抑制を回避することができ、初めてS1Pを標的とした抗癌治療を実現することができる可能性がある。

他の研究に対する優位性は何か?

本発明の薬剤は、エンドサイトシス等で細胞内に取り込まれたのち、癌細胞で特異的かつ悪性度と相関して高濃度に産生されるアクロレインによる活性薬剤放出の(位置的かつ機能的)制御機構を有しており、癌に対して高い選択性があり、従来のFTY720プロドラッグである、酸で切断される環状ケタール基を用いてPEG化したプロドラッグ(カルフォルニア大)や、自己切断可能なリンカーを含むプロドラッグ(アセンディス ファーマ エーエス)などに対して、放出の制御性、薬剤の適用の幅広さで優位性がある。

どのような課題の解決に役立つか?

本開発薬は従来の抗腫瘍薬と作用機序が全く異なることから、従来の抗腫瘍薬で治療困難であった難治癌にも効果が期待でき、既存の治療薬との相乗効果も期待されることから様々な臨床応用可能性を秘めている。

他への応用・展開の可能性

本発明のDDSは、アミノ基、水酸基、カルボキシル基を有する化合物に適用可能であり、FTY720のみならず、シポニモド、オザニモド、ポネシモドなど、S1P modulator全般に応用可能であり、様々なS1P作動薬に応用、展開することができる可能性がある。

関連する特許

腫瘍の治療剤及び複合体(出願番号:PCT/JP2024/17295、出願日:2024/5/9)(理化学研究所との共同出願)

参考図表

01.png

 

研究者情報

氏名 永橋 昌幸
所属 医学部 乳腺・内分泌外科学
専門分野 外科腫瘍学
学内共同研究者 三好 康雄
関連リンク 講座紹介HP

企業との協業に何を期待するか?

本発明による薬剤は、乳癌、あるいはその他の固形癌に幅広く臨床応用できる可能性があり、本開発薬剤を製薬企業と共同で臨床試験を経て社会実装できるように取り組んでいくことが期待される。

本研究の問い合わせ先

兵庫医科大学 大学事務部 研究推進課
E-mail: chizai@hyo-med.ac.jp
Tel: 0798-45-6488

他の研究内容を検索