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大腸がんの代謝を標的とした治療開発

情報更新日 2023年10月3日

シーズ情報

キーワード

セリンラセマーゼ(SRR)、がん代謝

分野

がん(大腸がん)

概要

 がん細胞は、自身の生存に有利になるように、正常組織とは全く異なる代謝動態を獲得していることが知られており、がん特異的な代謝経路の同定とそれを標的とした治療法の開発が近年試みられている。
 我々は中枢神経系でのみ機能が明らかにされていたセリンラセマーゼ (SRR) という代謝酵素が、大腸がんにおいてL-セリンからピルビン酸を産生する代謝経路を担い、ヒストンのアセチル化、ミトコンドリアの量・質の維持、アポトーシス抵抗性に寄与することで大腸がんの増殖を促進していることを明らかにした。また、非腫瘍部に比べ、ヒト大腸腺腫、大腸がん部でSRRの発現が亢進していることを免疫組織化学染色で確認した(大腸がん>大腸腺腫>非腫瘍部)。そして、SRR阻害剤が大腸がん細胞の増殖を抑制し、さらに既存の抗がん剤との併用で顕著な増殖抑制効果を示すことを明らかにし、SRRが大腸がんの治療標的になる可能性を示した。
 大腸がんは日本人において罹患率、死亡率ともに上位に入るがんであり、手術不能進行・再発例の根治は難しい。本研究結果から、SRRが、大腸がんの代謝を標的とする新たなコンセプトの創薬標的になることが期待される。

何が新しいか?

・がんの代謝に関わる新たな創薬標的を見出したこと

他の研究に対する優位性は何か?

・大腸がんの新たな治療法に繋がる可能性があること
・大腸がん細胞の化学療法抵抗性を低下させ、化学療法の作用を増強させる効果があること

どのような課題の解決に役立つか?

・難治性の大腸がんの治療

他への応用・展開の可能性

・腸管内(糞便中)のD-アミノ酸の解析により、大腸がんのリスク予測や診断法の確立に繋がる可能性がある

関連する特許

参考図表

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研究者情報

氏名 大島 健司
所属 医学部 病理学 分子病理部門
専門分野 がん(大腸がん)
学内共同研究者
関連リンク 講座紹介HP

企業との協業に何を期待するか?

製薬企業と協業し、SRRを標的とした以下の創薬研究の実施
・SRRを阻害する低分子化合物、あるいは、抗体の取得
・大腸がん治療薬の開発研究。

本研究の問い合わせ先

兵庫医科大学 大学事務部 研究推進課
E-mail: chizai@hyo-med.ac.jp
Tel: 0798-45-6488

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