自然型アレルギーと獲得型アレルギー

私たちの体は、病原体の侵入に対して抵抗性示し、感染にかかるのを防ぐ機能である生体防御(免疫応答)を備えています。この病原体に対する免疫応答には、侵入後数時間と素早く働く、生まれつき生体に備わった自然免疫と、生体反応によって数日かけて誘導される様々なT細胞サブセットと抗体を産生するB細胞が司令塔として働く獲得免疫があります。

獲得免疫によって誘導されたアレルゲン特異的Th2細胞から産生されるIL-4はB細胞を刺激して抗原特異的IgE抗体産生を誘導します。また、アレルゲンはIgE分子を架橋することで、好塩基球とマスト細胞を活性化します。このようなTh2細胞とB細胞が司令塔となり、IgEが必須のアレルギーを「獲得型アレルギー」と呼ぶことが出来ます。一方、上皮細胞から産生されるサイトカイン(IL-18、IL-25、IL-33、TSLP)で刺激された好塩基球やマスト細胞、または新しく登場したグループ2自然リンパ球はTh2サイトカインを産生する結果、アレルギーを誘導します。私たちは、この様なIgE抗体を必要としないサイトカイン(IL-18、 IL-33など)によって発症するアレルギーを「自然型アレルギー」と名付けました(Int Immunol, 2010)

ここで重要なことは、上記サイトカイン(IL-18、IL-25、IL-33、TSLP:アレルギー誘導サイトカイン)はいずれも上皮細胞から産生されることです。様々なアレルギー疾患(喘息、アレルギー性結膜炎・鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなど)は、外界に向けられた上皮細胞(気道、結膜、鼻粘膜、皮膚、腸管など)がアレルゲンなどに曝露されることを起点として発症します。故に、「アレルゲン—上皮細胞—アレルギー誘導サイトカイン—グループ2自然リンパ球や好塩基球—Th2サイトカイン—自然型アレルギー」という全く新しいアレルギー発症のパラダイムが考えられます。私たちは、喘息、アトピー性皮膚炎と食物アレルギーでは、このような系が存在することをマウス実験で明らかにしています。

(2014年5月3日付けの神戸新聞に私たちの研究紹介記事が掲載されました)

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