IL-18とアレルギー

IFN-γ誘導因子として1995年、兵庫医科大学で発見・クローニングされたIL-18は、アレルギー炎症に対して多彩な機能を発揮します。

まず、IL-18は抗原刺激なしにIL-12と共に様々な細胞(T、B、NK細胞、マクロファージ)に作用してIFN-γ産生を誘導し、Th1型免疫応答を誘導する結果、抗アレルギー作用を示します。一方、IL-18は抗原刺激なしにIL-2の存在下でNKT細胞を、IL-3の存在下で好塩基球とマスト細胞に作用してTh2サイトカイン(IL-4、IL-9、IL-13)産生を誘導し、Th2型免疫応答(アレルギー性炎症)を誘導します(Ann Rev Immunol, 2001)。更に、IL-18は抗原刺激を受けたTh1細胞に作用すると、IFN-γとTh2サイトカインを産生し、Th1型気管支喘息やアトピー性皮膚炎を発症させます。この様な病気を発症させるTh1細胞を私たちはSuper Th1細胞と命名しました(J Exp Med, 2004)

IL-18またはIL-33による自然型喘息の誘導

Th2サイトカインの1つであるIL-13は、気道上皮細胞を刺激してエオタキシン産生を誘導することで、肺・気道へ好酸球の遊走を促進します。同時にIL-13は、気管支平滑筋を直接刺激して気道過敏性(AHR)を亢進させます。
IL-18を抗原刺激なしにIL-2と共に正常マウスに4日間経鼻投与すると、CD4+T細胞から産生されるIL-13によって気道杯細胞のムチン産生亢進、気道の好酸球浸潤と気道過敏性の亢進を伴った喘息様症状を誘導します。この様な獲得免疫系を必要としないIL-18によって誘導される喘息を、私たちは「自然型喘息」と命名しました(Int Immunol, 2006)

同様に、IL-33を抗原刺激なしに正常マウスに4日間経鼻投与しても喘息様症状を発症します。即ち、IL-33もIL-18と同様「自然型喘息」を誘導します(Int Immunol, 2008)。一方、IL-13遺伝子欠損マウスにIL-33を投与しても「自然型喘息」を発症しないことから、IL-33によって誘導されるIL-13がエフェクター因子として作用しています。このIL-13産生細胞は、最近新しく登場したグループ2自然リンパ球であることも判明しています。

IL-18とIL-33は共に気道上皮細胞に存在することから、何らかの病原体成分あるいはアレルゲンなどの刺激を受けて上皮細胞から産生されたIL-18またはIL-33が自然型喘息を誘導する可能性が考えられます。

Super Th1細胞とアレルギー疾患

IL-18はTh1細胞に作用してIFN-γ産生を増強するだけでなく、Th2サイトカイン(IL-9、IL-13)、IL-3、GM-CSFそしてケモカイン(RANTES、MIP-1α)産生を誘導します。更に、このようなTh1細胞は喘息(J Exp Med, 2004, PNAS, 2007)あるいはアトピー性皮膚炎(PNAS, 2006)を発症させる能力を持っています。私たちは、この様に病気を発症させるTh1細胞を「Super Th1 細胞」と命名しました。臨床的に感染が契機となって喘息あるいはアトピー性皮膚炎が増悪することが知られています。この様なアレルギー性炎症では、感染病原体成分によって気道上皮細胞や皮膚ケラチノサイトからIL-18が産生され、このIL-18によって誘導されたSuper Th1細胞が病気の発症・増悪に関与しているものと推測されます。

Super Th1細胞による喘息

病原微生物に特異的なTh1細胞は、病原体成分によって気管支上皮細胞から産生されたIL-18の刺激を受けてSuper Th1細胞に分化します。このSuper Th1細胞から産生されるIFN-γは好中球を刺激して好中球エアラスターゼや一酸化窒素さらには反応性酸素中間産物(ROI)などを誘導する結果、気道過敏性を亢進します。また、Super Th1細胞から産生されるIL-13は「Th2型喘息」と同様、好酸球の遊走と肺の線維化を誘導します。更に、Super Th1細胞から産生されるケモカインは好中球や好酸球を肺に遊走させることで、気道炎症を悪化させます。

私たちは、成人喘息患者の重症度と相関するIL-18遺伝子多型を発見し、血清IL-18濃度は喘息の重症度と相関することも明らかにしています(Am J Respir Crit Care Med, 2009)。ステロイドに抵抗性を示す重症喘息では血清中のIFN-γが上昇することから、重症喘息の発症にIL-18によって活性化されたSuper Th1細胞が関与している可能性も考えられます。

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