子宮内膜症発症機序の免疫学的解析

子宮内膜症は、子宮内膜の組織が本来の正常な位置以外の組織や臓器などに、異所性に定着して病変を形成するために生じる疾患であり、主症状は痛みや不妊です。子宮内膜症はエストロゲン依存性で、全世界の生殖年齢女性の約10%、日本国内には200万~400万人が罹患していると想定されています。
子宮内膜症の発症の原因としては、月経血の卵管を通じた腹腔内への逆流による子宮内膜移植説が一般的ですが、月経血の逆流現象はほとんどの女性で観察されることから、逆流だけでは説明できないため、何らかの別の要因があるものと考えられます。

近年、子宮内膜症の病因の一つとしてIL-1βなどの炎症性サイトカインが子宮内膜症の発症に関与することがin vitroの研究で示唆されており、さらにIL-1ファミリーサイトカインであるIL-33が、深部子宮内膜症において病状の進行度に相関して腹水及び血清中に上昇することなどが報告されてきたことから、免疫学的機構が関与することで、子宮内膜症が発症していると推察されました。
私たちは子宮内膜症におけるIL-1ファミリーサイトカインの関与を明らかにすることを目的に、マウス子宮内膜症モデルを作製しました。このモデルにIL-33を投与すると病変が大きくなり、逆にノックアウトマウスやIL-33の中和剤を投与すると病変が小さくなることから、IL-33が子宮内膜症の増悪に働いていることが明らかになりました。
同様にIL-1も子宮内膜症を増悪させることを確認しました。IL-33とIL-1は共にそのシグナル伝達にMyD88/IRAK4を用いますが、MyD88欠損マウスでは病変形成は著しく軽減していました。さらに病変形成後でもIRAK4抑制剤を投与することによって病変の増悪を抑制できました。
このように、子宮内膜症の病変形成、増悪にIL-1やIL-33、さらにその下流の共通のシグナル伝達分子であるMyD88/IRAK4が関与しており、子宮内膜症の新たな治療標的となりうることを報告しました(Kato et al. Front. Immunol. 2019)

現在は、子宮内膜症患者さんでのIL-33やIL-1とその関連分子や細胞の体内動態の解析を産科婦人科学講座や製薬企業との共同研究で進めています。

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