Th2細胞、肥満細胞、ILC2活性化機序の研究

寄生虫感染から私たちの身体を守るために必要なTh2型免役応答は、花粉をはじめとした本来無害な環境中の抗原に対して誘導されるとアレルギー疾患が起こってしまいます。アレルゲン特異的IgEを介した肥満細胞の脱顆粒はアレルギー性鼻炎に代表されるような即時型過敏反応を引き起こします。
またTh2細胞、肥満細胞、ILC2(グループ2自然リンパ球)といった2型免疫細胞が産生するTh2型サイトカイン(IL-5、IL-9、IL-13など)はアレルギー疾患における好酸球性の慢性炎症を引き起こします。

これら2型免疫細胞の活性化機構はいまだに良くわかっていないところが多いのですが、上皮組織から産生されるIL-33やTSLP(Thymic stromal lymphopoietin)といったサイトカインがその重要な役割を果たしていることが知られています。実際にアレルギー性鼻炎モデルマウスではIL-33やTSLPを介して鼻粘膜でのTh2細胞、肥満細胞やILC2の活性化が起こり、これらの細胞が協調的に炎症症状を作り出していることがわかってきました(Akasaki et al. Int Immunol. 2015, Morikawa et al. Int Immunol. 2017)
すなわちこれら上皮組織由来のサイトカインを介した2型免疫細胞の活性化を制御することはアレルギー疾患の新規治療法として有用である可能性があります。

IL-33の受容体はIL-1受容体やTLR(Toll like receptor)と細胞内シグナル伝達経路を共通にしています。TLR刺激の下流ではRegnase-1が炎症性因子のmRNAを分解することによりその過剰な活性化を抑制しているように、Regnase-1はIL-33を介したILC2の活性化をも制御しうることがわかりました。ILC2細胞内でIL-33刺激によりRegnase-1はIKK依存性に分解されますが、このRegnase-1のIKKターゲット部位に変異を導入したマウスではIL-33やプロテアーゼ抗原によって惹起される肺炎症ならびにILC2の活性化が低下しています(Matsushita et al. JCI insight. 2020)
すなわちRegnase-1の発現量またはその分解を制御することにより、IL-33をはじめとした炎症性因子により誘導される2型免疫細胞の活性化ならびにアレルギー疾患がコントロールできる可能性があります。

私たちの研究室ではTh2細胞、肥満細胞、ILC2といった2型免疫細胞がどのようにして活性化されるのか、どうすればその活性化を抑えることができるか、それによるアレルギー疾患治療への応用、ということについて研究しています。

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