ごあいさつ

兵庫医科大学救命救急センターおよび救急・災害医学講座のホームページにお越し下さり、ありがとうございます。まずはこの最初のページでご挨拶と我々の施設のご紹介をさせていただこうと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします。

<我々のポリシー>

当講座は、私、小谷穣治が救命救急センター長・講座主任教授を拝命し、現在、救命救急センターの救急専従医18人、非常勤医師11名、関連病院出向中医師8名、さらに約80名の同門医師で構成されています。我々の仕事を大きく分けると、①Pre-hospital Care(病院前診療)、②Acute Care & Surgery(急性期医療と手術)、③Intensive Care(集中治療)、④Disaster Medicine(災害医療)となります。当センタースタッフはそれぞれの専門性を活かしつつ全ての業務に関わります。特に①〜③は急性期症例の治療の当然の流れであり、また、④は日常的な①〜③の業務が完成されたシステムの上にこそ成立します。我々すべてのスタッフの仕事はシームレスにつながっているのです。そして、それぞれの仕事の枠組みの中で、大学の使命である「臨床・教育・研究」の3本柱を建て、救急医学の発展に貢献できるように取り組んでいます。

<歴史>

私どもは、1973年の教室開設以来、1980年の救命センター設置を経て40年以上もの長きにわたって阪神間7市1町(約190万人)の阪神地区の救急医療を担っており、地域医療機関、住民、消防や警察などの行政と強固な協力・信頼関係が構築されています。

<急性医療総合センター>

我々は2013年に急性医療総合センターを完成し、より高度で最先端な救命救急医療を地域の皆様に提供できるようになりました。1階の初療室では、平時で最大5件の傷病者を同時に搬入でき、災害時は多数の傷病者に同時対応します。初療室への搬入経路に除染室を設け、サリンなどのCBRNE災害(化学・生物・放射性物質・核・爆発物)に対応します。また初療室に隣接した手術室と熱傷専門治療室を設けており、迅速に高度な救急医療ができる構造となっています。2階では、20床のICU24床の救急病棟を持ち、旧施設よりも格段に多くの重症傷病者を受け入れることができるようになりました。また、武庫川を眺める全面ガラス張りのラウンジ、カプセルベッドとシャワールームを配置した当直室、救急隊など研修者用に独立した部屋とトイレ・シャワールーム、武庫川駅方面に直接出られるアクセスドアなど、業務中も快適に過ごせるようにデザイン致しました。

<救命救急センターの運営方式>

当センターの特徴は、基本的にセンターのスタッフが診断・治療を行い、グレーゾーン(複数の病態が複雑に合併している患者)や特殊な領域の専門医が必要な場合は、全診療科目がある大学病院の利点を生かし、各科と協力して高度な治療を展開します。中でもCCU(冠疾患科)は救命救急センタースタッフとして同じフロアで仕事をしておりますし(振り返ればそこにいるという状態です)、周産期センターやすべての手術室も同じビル内においてエレベーターで直結しており(同じ家に住む家族のような関係です)、あらゆる複合疾患に俊速に対応しています。

<臨床業務の特徴と実績>

習熟した上級医と活気ある若手医師がバランスよく救急医療を行っており、2014年度入院患者数は1774件と前年比122%増となっております。また当センターは受け入れ不可件数が少ないのも特徴で、「患者さんを選ばない救急医療」「全方面の疾患に対応する救急医療」をモットーとしております

当センターの傷病者の内訳は、外因性疾患が3040%、内因性疾患が6070%となっています。外因性疾患では多発外傷を積極的に受け入れ、頭部外傷・胸腹部外傷・四肢骨盤外傷などの手術に24時間体制で対応しています。2014年度には熱傷センターを救命救急センター内に新設し、救急・形成外科・リハビリの専門医師・看護師・リハビリスタッフなど重症熱傷患者にチーム医療をあたっており、2014年度は32件の重症熱傷患者を受け入れました。この数字は全国の救命救急センター平均5例を大きく上回っており、メディアにもよく取り上げられています。また、先端医療として重症広範囲熱傷患者に対して、自家培養表皮や人工真皮による植皮術を行っており、良好な成果をおさめています。四肢(手指)切断に対してが、スタッフ内でマイクロサージェリーチームを組織し、再接着術等も積極的に受け入れています。内因性疾患では、2014年度は心肺機能停止患者を190件受け入れており、心室細動による心肺機能停止患者に対しては初療室で迅速にPCPS(経皮的人工心肺)を導入し、必要に応じCCUと協力し冠動脈形成術、脳低体温療法を組み合わせ、社会復帰できるよう高度集中治療を実践しています。社会問題となっている周産期救急医療に対して産婦人科・小児科などと協力して対応しています。重症急性膵炎に対する動脈注入療法や血液浄化療法、劇症肝炎に対する血漿交換療法、食道静脈瘤破裂や出血性胃潰瘍に対する内視鏡的止血術、前述の重症心不全や呼吸不全に対する補助循環装置や人工心肺を用いた高度集中治療を実践しており、阪神間にとどまらず遠方からの転院依頼もヘリコプター搬送などを利用して受け入れています。

<プレホスピタルケア>

ドクターカーは7市1町を対象とし、24時間365日運行しており、現場での心肺停止や救出に時間のかかる場合、災害発災時にはドクターカーによる現場への医師派遣(病院前診療)を行っており、PREVENTABLE DEATH「防ぎ得る死」の減少に努めています。医師・看護師・救命士を1つのチームとして現場で医療活動をして「待たない救急医療」を心掛け多くの傷病者対応にあたっております。

<チーム医療>

当センターはチーム医療をモットーとしており、毎朝のカンファレンスでは当科の医師だけでなく看護師、薬剤師、医療事務、救急救命士、学生、法医学の医師も参加しています。また理学療法士・言語療法士・呼吸療法士やケースワーカーを交えたリハビリカンファレンスを行い、全身状態や環境因子も考慮した救急医療に取り組んでいます。また、栄養管理医師の資格であるTNTTotal Nutrition Therapy)医師資格を持つ教室員が私を含めて3名おり、大学病院全体の栄養サポートチームのメンバーとして院内全患者の代謝・栄養管理に活躍すると同時に、2013年度から救命救急センター内の重症病態における代謝・栄養管理を科学的に推進する救命救急センターNSTを立ち上げ、活動しています。ちなみに私は2005年に本学に栄養サポートチームを立ち上げ、初代ディレクターを4年間勤め、全病院的なチーム医療の礎を築きました。

<災害医療>

当院は災害拠点病院であり、その中核をなす救命救急センターは院内外災害訓練を積極的に推進しています。DMAT(災害医療チーム)を2チーム以上構成することができ、3名の災害医療コーディネーターと2名の統括DMAT隊員を要しており地震・航空機事故などの大規模災害や核・生物・化学兵器によるCBRNEテロに備え、県内外の災害訓練に参加し修練しています。これらの正規訓練に加えて武庫川河川での自主訓練などを行っています(クラブ活動のような雰囲気です)。2005年のJR脱線事故では、日本の都市の大災害で初めて現場および病院トリアージを行い、113名もの被災者を受け入れ、多科との良好な協力関係のもとに、予定手術を落とすことなく10件の緊急手術を並行して行い、本学と地域に災害医療の文化が成熟した証を示すことができました。

Off the job訓練>

Off the job訓練では、多くの教室員がJATEC, ICLS, BLC, ACLSISLSなど多くの救急・災害医療関連の訓練コースのインストラクター資格を持っており、本学でのコース開催も行ってきました。

<研究>

研究では、新しい医療機器の開発(例えば瞳孔径自動測定記録装置は私の高校時代の同級生たちとともに開発し、特許を取得しています)、栄養治療による侵襲反応の制御の研究、水素ガスや一酸化炭素ガスの抗酸化作用に着目した臓器障害軽減の研究、新ペプチドーム解析法による敗血症性ショック誘因物質の探索、遺伝子多型と病態の研究、免疫担当細胞のアポトーシス制御の研究、救急現場(病院前救護)をモデルとした災害現場と指導医療施設間で高品質な情報通信システムの開発、我々が最前線で治療にあたったJR脱線事故など実際の災害医療経験とデータに基づく研究など、多くの臨床応用を睨んだ研究を進めています。幅広い基礎・臨床的研究をテーマに、国内学会はもとより、アメリカ外科学会(ACS)、アメリカ集中治療医学会(SICM)、アメリカ及び国際ショック学会、アメリカ外傷外科学会(AAST)、国際外傷学会、アメリカ外科感染症学会(SIS)、国際外科学会(ISW)、ヨーロッパ蘇生協会(ERC)、アメリカ心臓協会(AHA)など、多くの国際学会でも積極的に発表しています。企業とも全身性炎症症候群の制御を目的に新しい栄養剤の開発などを行っており、産学共同研究も押し進めております。

<海外医療および教育活動>

また私が監事を拝命しておりますNPOJPR)の活動として、正井会長を支えてカンボジアでの医療支援活動を行っています。また、私はカンボジア軍医科大学の教授も拝命し、現地での講義やカンボジアの医学生の兵庫医大で研修受け入れを行っています。カンボジアではポルポトにより知識人が虐殺され、医師は40名しか残らなかったので、今後は医師のみならずコメディカルを含めた教育プログラムを作成しますが、せっかくなので外傷外科医を目指す若い日本人の教育も組み込むつもりです。

<ロケーション>

本学は阪神電車武庫川駅前にあり、大阪梅田・難波、神戸三宮まで13分〜20分の交通至便なところにあります。また、甲子園球場までは歩いて行けるという虎ファンには涙もののロケーションです(もちろんアンチ虎党にも便利です)。東西には芦屋から尼崎まで、北は丹波篠山方面まで、異なった地域性を持つ広い診療圏を受け持っており、非常に多彩な症例が多く経験できます。

<最後に>

救急・災害医学の臨床と研究を勉強したいと考えている医学生、研修医、他科の先生方におかれましては、あらゆる救急および集中治療のご研鑽を積んでいただけると思います。ご希望の方はどのようなご相談でも結構ですので、お気軽にご連絡ください。

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