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脱細胞化ヒト卵巣組織による人工卵巣の開発

情報更新日 2023年7月31日

シーズ情報

キーワード

がん生殖、卵巣凍結、脱細胞化、人工卵巣

分野

がん生殖

概要

卵巣凍結は若年がん女性の妊孕性温存に応用され、融解移植後の生児獲得は世界で180症例をこえる。しかし、がん転移により凍結卵巣内に微小残存病変(MRD)が存在する場合、移植により原疾患再発の可能性がある。そこで、再発回避のために、移植可能な人工的なマトリックスに、単離した卵胞を導入して人工卵巣を作成し、移植する方法が考えられている。現在、アルギン酸やフィブリンのような人工的な材料を用いて、自然の臓器を模倣した人工卵巣が開発されている。一方、近年、ヒト卵巣組織を脱細胞化することで、MRDを除去した人工卵巣が作成できることが報告された。これは従来のゲルマトリックスとは異なり、生体由来のマトリックスであるため、卵胞発育に必要な細胞間相互作用を促進する因子を保持している。本研究では、モデル実験として脱細胞化したヒト卵巣組織にマウス卵胞を導入して免疫不全マウスに移植し、その発生能を調べる。研究方法としては、ヒト卵巣組織を脱細胞化処理し、同時に卵巣組織から間質細胞を単離し、毛色黒のC57BL/6マウスから卵胞を単離する。脱細胞化卵巣に毛色黒のC57BL/6マウス卵胞を導入したものを人工卵巣A群、脱細胞化卵巣にヒト卵巣間質細胞と毛色黒のC57BL/6マウス卵胞を導入したものを人工卵巣B群とする。両側卵巣を摘出した毛色白のICR♀マウスに人工卵巣Aを移植、あるいは人工卵巣Bをそれぞれ移植して、ホルモン産生の確認と組織学的に卵胞発育を2群間で比較する。毛色白のマウスICRと交配させて産仔(毛色黒マウス)を得る。

何が新しいか?

人工卵巣として、従来のゲルマトリックスではなく、脱細胞化したヒト卵巣組織を用いる点

他の研究に対する優位性は何か?

従来の人工的なゲルマトリックスとは異なり、生体由来のマトリックスであるため、卵胞発育に必要な細胞間相互作用を促進する因子を保持しており、より生児が得られやすいと考えられる。

どのような課題の解決に役立つか?

卵巣凍結は若年がん女性の妊孕性温存に応用されるが、MRDによる原疾患再発の回避が課題である。
本研究で確立する単離ヒト原始卵胞を導入した「脱細胞化ヒト卵巣組織による人工卵巣」を用いれば、理論状MRDは存在せず、移植による原疾患の再発なく生児が得られる。

他への応用・展開の可能性

関連する特許

参考図表

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研究者情報

氏名 脇本 裕
所属 医学部 産科婦人科学
専門分野 がん生殖
学内共同研究者 陳 月焜、中川 公平、長谷川 昭子、柴原 浩章
関連リンク 講座紹介HP

企業との協業に何を期待するか?

企業との協業により、以下の課題を解決しながらより安全で生児獲得し易い人工卵巣の開発を目指したい。

  1. 白血病細胞が存在するヒト卵巣組織は入手困難であるため、ヒト卵巣組織を移入した白血病モデルマウスの作成して、脱細胞化により微小残存がん病変が除去されるか検討が必要である。
  2. 脱細胞化組織は、莢膜細胞が存在しないので、女性ホルモンの前駆体であるアンドロゲンが産生されず、卵胞形成が障害されると考えられる。卵巣間質細胞を卵巣顆粒膜細胞と共に培養すると、一部が莢膜細胞に分化することが応用できる。
  3. 脱細胞化組織の主成分である天然型コラーゲンは、異種組織であっても免疫原性は少なく、移植した場合に異物(拒絶)反応がほとんどなく、移植時の免疫学的関与を調べる。
  4. 脱細胞卵巣組織に効率よく卵子を導入するデバイスの開発を共同研究で実施したい。

本研究の問い合わせ先

兵庫医科大学 大学事務部 研究推進課
E-mail: chizai@hyo-med.ac.jp
Tel: 0798-45-6488

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