術後合併症の発症リスクを軽減する全身麻酔中の指標(NR)の開発
情報更新日 2023年7月31日
シーズ情報
キーワード
手術ストレス、侵害受容
分野
周術期管理、麻酔科学
概要
手術による術後合併症の発症は、患者の短期予後だけでなく長期予後にも影響するため、その発症を抑制することが求められている。これまで術前の全身状態の改善や低侵襲手術の開発、術後早期回復プログラムなどが行われてきたが、現在でも重篤な術後合併症は数%~数十%で発症している。術後合併症発症の要因の1つに手術侵襲の強さがあり、麻酔管理による手術侵襲による生体反応を抑制することが術後合併症の抑制に寄与する可能性があると考えた。しかしこれまで手術中の手術侵襲を定量的にモニターする指標がない。
そこで本研究では全身麻酔中の侵害受容刺激の強さを心拍数HR、収縮血圧SBP、灌流指標PIを用いて数値化するNociceptive Response(NR)インデックスを開発した(数式(1))。実際の臨床現場におけるNRインデックスの変化を図に示す。本研究の目的は、手術中のNRインデックスを抑制する麻酔管理が、手術侵襲による生体反応を抑制し、術後合併症の発症を抑制することを明らかにすることである。
何が新しいか?
麻酔中の侵害受容刺激の強さを客観的に評価可能な数式を初めて見出したこと。
また、麻酔中の侵害受容刺激の強さを、算出された数値NRとして術中リアルタイム表示を可能としたこと。
他の研究に対する優位性は何か?
通常のモニター数値を用いるため、簡便にNR値を得ることや既存のモニターへの応用が可能であり、汎用性が非常に高い。
麻酔監視記録装置に蓄積されたビッグデータを用いて後方視的な評価も可能である。
どのような課題の解決に役立つか?
全身麻酔では、術後合併症の併発など患者のリスク軽減の課題がある。
- 麻酔科医が、適切な量の麻酔投与を可能とする。
- 手術中のNRインデックス値を抑制する全身麻酔管理(NRガイド下全身麻酔)が、術後合併症の発症抑制に寄与する。
他への応用・展開の可能性
”痛みレベル”を数値化することにより、集中治療を受けている患者の適切な鎮痛を行うことが可能である。
関連する特許
特許第6934251号「麻酔下における侵害受容刺激反応レベルの監視のための装置と方法」(登録日:令和3年8月25日)
関連する論文等
- J Clin Med. 2022; 11: 6080.
- J Clin Monit Comput. 2022; 36: 1519-1524.
- Reg Anesth Pain Med. 2022; 47: 494-499.
- Eur J Anaesthesiol. 2021; 38: 1215-1222.
- J Clin Monit Comput. 2022; 36: 1519-1524.
- PLoS One. 2020; 15: e0239709.
- Sci Rep. 2020; 10: 15300.
- J Clin Monit Comput. 2021; 35: 499-503.
- J Surg Res. 2020; 249: 13-17.
- PLoS One. 2019; 14: e0226032.
- J Clin Monit Comput. 2020; 34: 575-581.
- Med Sci Monit. 2019; 25: 3140-3145.
- Med Sci Monit. 2018; 24: 3324-3331.
- J Anesth. 2015; 29: 967-70.
研究者情報
氏名 | 廣瀬 宗孝 |
---|---|
所属 | 医学部 麻酔科学・疼痛制御科学 |
専門分野 | 周術期管理、麻酔科学 |
学内共同研究者 | 狩谷 伸享、植木 隆介、奥谷 博愛 |
関連リンク | 研究室HP |
企業との協業に何を期待するか?
医療用モニターの製造・販売会社と協業し、モニターへの搭載とNR値の管理の有用性検証に関わる共同研究の実施など
本研究の問い合わせ先
兵庫医科大学 大学事務部 研究推進課
E-mail: chizai@hyo-med.ac.jp
Tel: 0798-45-6488