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老化獲得免疫機構の制御を介した生活習慣病の治療標的の探索

情報更新日 2023年7月31日

シーズ情報

キーワード

老化、免疫、生活習慣病

分野

高齢者医療(生活習慣病、自己免疫疾患など)

概要

骨髄の造血幹細胞は、胸腺で教育され、生理学的獲得免疫機構を担うT細胞を末梢に供給しています。しかし、胸腺が萎縮する60歳以上の高齢者の末梢では、生理学的T細胞が減少し、代わりに老化関連SA-TEM細胞が蓄積することが発見されました。この細胞は、記憶型TEM細胞マーカーと生理学的免疫能低下を誘導する免疫チェックポイント蛋白質PD-1を発現していることが特徴です。さらに、通常の生理学的獲得免疫機構とは異なり、SA-TEM細胞が標的臓器で悪玉のSASPとして多種類の炎症関連因子を産生し、微小環境を慢性炎症病態にします。この様な副作用が、標的臓器の構成細胞を"老化"へと誘導します。この老化細胞は細胞周期を停止し、生理学的な寿命を乗り越え、SASPとして機能します。近年、高齢者の生活習慣病の発症が『老化獲得免疫機構』に由来すると提唱され、関連するSA-TEM細胞および老化細胞の除去法が研究開発されています。
我々兵庫医科大学の研究チームHEPNO2は、特にあるサブセットの老化T細胞が生活習慣病の新規標的細胞であることを見出し、自己免疫疾患の治療標的としての妥当性検証など創薬研究を進めています。

SA: senescence-associated
TEM: T effector memory
SASP: senescence-associated secretory phenotype

何が新しいか?

あるサブセットの老化T細胞が生活習慣病の新規標的細胞が新規の生活習慣病の標的細胞であることを見出した点

他の研究に対する優位性は何か?

本研究者らが見出した疾患モデルマウスは「繰り返し、短期間に病態発症を再現する」という特徴があり、ヒト病態発症機構の解明、創薬標的の探索、創薬標的の妥当性や治療効果の評価への応用が可能であり優位性が高い。

どのような課題の解決に役立つか?

現在、我々の生活習慣病モデルマウスを用いて発見した創薬標的の妥当性をin vitro系とin vivo系と臨床系で検証し、シェーグレン症候群など自己免疫疾患の治療薬の探索を行っている。この経験を生かして、老化関連因子が原因で発症する生活習慣病の研究のお手伝いをいたします。

他への応用・展開の可能性

疾患モデル動物における『全身環境』と『病態が発症する局所臓器』の経時的な遺伝子情報変化を総合的に解析し、新規の候補標的分子を同定するプログラムを開発した。この方法は、他の疾患モデル動物への応用も可能であり、有用性が高い。

関連する特許

  • 2011年04月 国内出願番号:「特願2010-112556」(承認済)名称: 血球成熟促進活性を有する物質のスクリーニング方法
  • 2012年07月 国際出願番号:「PCT/JP2011/061057」(承認済)名称: 血球成熟促進活性を有する物質のスクリーニング方法

参考図表

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研究者情報

氏名 西浦 弘志
所属 医学部 病理学 病理診断部門
専門分野 高齢者医療(生活習慣病、自己免疫疾患など)
学内共同研究者 山根木 康嗣、大村谷 昌樹、杉本 道彦、今坂 舞、松井 聖
関連リンク AMED創薬ブースター支援テーマPDF

企業との協業に何を期待するか?

我々は、以下のモデル動物、情報および技術を有しており、創薬標的の探索などを目的とした共同研究により新規実験系の確立などをご支援可能です。

  1. 老化関連免疫細胞の機能を検証するin vitro系とin vivoマウスモデル系
  2. 老化関連免疫細胞が原因の生活習慣病の創薬標的候補を探索する情報
  3. 創薬標的候補の機能を検証するin vitro系とin vivoマウスモデル系
  4. 検証した創薬標的を評価するモデルマウスの作製技術

本研究の問い合わせ先

兵庫医科大学 大学事務部 研究推進課
E-mail: chizai@hyo-med.ac.jp
Tel: 0798-45-6488

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