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ドラッグリポジショニングを応用した臓器横断的がん治療薬の開発

情報更新日 2023年7月31日

シーズ情報

キーワード

腫瘍関連マクロファージ、イトラコナゾール

分野

悪性腫瘍

概要

我々は抗真菌薬であるイトラコナゾールの臓器横断的抗腫瘍効果に着目し臨床研究及び基礎的検討を報告してきました。臨床研究では、複数のがん種においてイトラコナゾールにより予後が改善することが示唆されました(2014~2022)。また、子宮頸癌や子宮体癌細胞株を用いた基礎検討では異常亢進したAkt/mTORやHedgehogシグナルが抑制され腫瘍増殖が抑えられることがわかりました(2016~2017)。また、細胞内脂質輸送や細胞膜リン脂質組成への作用も確認しました(2022~2023)。同時期に他機関からも臨床研究での予後改善効果やがん細胞でのシグナル抑制効果、血管やリンパ管新生阻害、がん関連線維芽細胞を介する抗腫瘍作用が報告されました。
我々は、2015年から固形がんを対象としてイトラコナゾールのバイオマーカー探索及び作用機序解明のためトランスレーショナル研究(WOO試験)を実施しています。これは2019年に保険適応となったがん遺伝子パネル検査の受け皿試験として当院で実装化され、WOO試験への登録を含むターゲット治療群の予後改善効果を報告しています(2023)。基礎研究での脂質解析やWOO試験での中間解析(組織ゲノム及び発現変動解析)などから(2018)、腫瘍関連マクロファージ(TAM)に着目し、イトラコナゾールが腫瘍増殖に関与するM2 TAMを腫瘍を攻撃するM1 TAMに変化して癌増殖を抑制することを報告しました(2023)。

何が新しいか?

腫瘍関連マクロファージ(TAM)に着目し、イトラコナゾールが腫瘍増殖に関与するM2 腫瘍関連マクロファージ(TAM)を腫瘍を攻撃するM1 TAMに変化して癌増殖を抑制することを明らかにした点

他の研究に対する優位性は何か?

  • イトラコナゾールのがん治療薬としての研究で、世界で最も症例が多いWOO試験を実施し、その検体を有していること
  • バイオマーカー探索だけでなく、新規治療ターゲットのためのゲノム、蛋白、代謝物を包括的に探索していること

どのような課題の解決に役立つか?

現在市販されている免疫治療薬は約20%の効果にとどまり併用薬開発が喫緊の課題です。

他への応用・展開の可能性

TAMに対する新規ターゲット治療開発としても期待できます。

関連する特許

関連する論文等

  1. Takimoto Y, Tsubamoto H, et al. Itraconazole modulates phospholipid levels in tumor-associated macrophages. Anticancer Res. 2023, 43 (5) 1981-1984
  2. Ueda T, Tsubamoto H, et el. Comprehensive Genomic Profiling Detects Hereditary Cancers and Confers Survival Advantage in Patients With Gynaecological Cancers. Anticancer Res. 2023, 43 (5) 2091-2101
  3. Takimoto Y, Tsubamoto H, et al. Itraconazole Repolarizes Tumor-associated Macrophages and Suppresses Cervical Cancer Cell Growth. Anticancer Res. 2023 Feb;43(2):569-580
  4. Sawasaki M, Tsubamoto H, et al. First-Line Gemcitabine, Nab-Paclitaxel, and Oxaliplatin Chemotherapy With Itraconazole in Patients With Metastatic Pancreatic Cancer: A Single Institution Experience. Anticancer Res. 2022, 42 (12) 6063-6069
  5. Isono R, Tsubamoto H, et al. Itraconazole Inhibits Intracellular Cholesterol Trafficking and Decreases Phosphatidylserine Level in Cervical Cancer Cells. Anticancer Res. 2021, 41 (11) 5477-5480

参考図表

研究者情報

氏名 鍔本 浩志
所属 医学部 産科婦人科学
専門分野 悪性腫瘍
学内共同研究者 阪田 和子、瀧本 裕美、上田 友子、脇本 裕
関連リンク 研究室HP

企業との協業に何を期待するか?

イトラコナゾールのがん種横断的抗腫瘍効果を利用し、トランスレーショナルリサーチ及びシングルセルマルチオミクス解析を用いて新規治療薬開発を試みています。がん種を問わず共同研究を希望しています。
また、我々がアドバイスできる項目として以下のものが挙げられます。

  1. WOO試験を応用した新規薬剤の固形がんに対するバイオマーカー探索やターゲット分子探索の臨床試験立案
  2. シングルセル解析について、既に商業ベースとなっているシングルセルRNA解析に加え、他機関と共同での代謝物の時間的空間的変動解析
  3. 新規がん治療ターゲットの薬剤開発準備として、海外ディベロッパーとの調整

本研究の問い合わせ先

兵庫医科大学 大学事務部 研究推進課
E-mail: chizai@hyo-med.ac.jp
Tel: 0798-45-6488

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