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臓器特異的キナーゼ(心臓特異的ミオシン調節軽鎖キナーゼ)を標的とした新規心不全治療薬の開発

情報更新日 2023年7月31日

シーズ情報

キーワード

拡張型心筋症、cMLCK、心不全治療薬、MLC2v

分野

循環器内科学

概要

本研究では、心筋細胞に特異的に発現するミオシン調節軽鎖キナーゼ(cMLCK)の活性低下によって、「ヒトの拡張型心筋症が発症するメカニズム」を解明した。さらにcMLCKを特異的に活性化する低分子化合物の開発に成功し、この化合物をcMLCK活性の低下した心筋細胞に投与することで、cMLCKが再活性化されて収縮性が回復することを明らかにした。
cMLCKは心筋細胞にのみ特異的に発現するキナーゼで、心筋型ミオシン調節軽鎖をリン酸化することで「心筋収縮性を生理的に制御できること」は既に知られていたが、ヒトでの心不全病態への関与は不明であった。近年、我々を含む複数の研究グループは、cMLCKをコードするMYLK3遺伝子に変異を有する複数の家族性拡張型心筋症を発見し、「cMLCK活性が心不全の病態発症に及ぼす分子機序の解明」や「新たな治療標的分子としての可能性」を期待していた。
cMLCK活性化による心筋収縮性の改善効果は、従来の強心薬で懸念されていた重大な副作用を回避しながら、安全に血行動態を改善できる新たな心不全治療薬となることが期待される。

何が新しいか?

  • 心筋細胞に特異的に発現するcMLCKの活性低下によって、ヒトの拡張型心筋症が発症するメカニズムを解明したこと
  • cMLCKを特異的に活性化する低分子化合物の開発に成功したこと
  • 本低分子化合物は、cMLCK活性の低下した心筋細胞のcMLCKを再活性化し、収縮性を回復することを明らかにしたこと

他の研究に対する優位性は何か?

従来にないより安全で有効な心不全治療薬を目指し、心筋特異的なcMLCKの活性化という新しい創薬コンセプトに基づき化合物を取得している。
cMLCKの研究を進めるための評価系やモデル動物など種々の実験材料は揃っている。

どのような課題の解決に役立つか?

「cMLCK活性化剤」は、細胞内カルシウム濃度の変化を介さずに収縮性を改善できることから、従来の強心薬の副作用を回避し、安全に重症心不全患者の血行動態を回復できる「全く新しい機序の心不全治療薬」の可能性がある。

他への応用・展開の可能性

ヒトだけでなく、動物における心不全にも応用可能と考える。
cMLCKに対する種々の化合物を保有しており、様々な展開が可能である。
また、臓器特異的エンハンサーの機能解析と治療への応用の研究も実施しており(大阪大学との共同研究)、より選択性が高く安全な遺伝子治療法の開発などが可能である。

関連する特許

関連する論文等

  1. Hitsumoto T, Tsukamoto O, et al. Restoration of Cardiac Myosin Light Chain Kinase Ameliorates Systolic Dysfunction by Reducing Superrelaxed Myosin. Circulation. 2023;147 doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.122.062885
  2. Osamu Tsukamoto, Direct Sarcomere Modulators Are Promising New Treatments for Cardiomyopathies. Int. J. Mol. Sci. 2020, 21(1), 226. doi: 10.3390/ijms21010226
  3. Kamikubo K, Tsukamoto O, et al. Non-Radioactive In Vitro Cardiac Myosin Light Chain Kinase Assays. J Vis Exp. 2020 doi: 10.3791/61168.
  4. Hodatsu A, Fujino N, Uyama Y, Tsukamoto O, et al. Impact of cardiac myosin light chain kinase gene mutation on development of dilated cardiomyopathy. ESC Heart Fail. 2019;6:406-415. doi: 10.1002/ehf2.12410.
  5. Tsukamoto O, Kitakaze M. Biochemical and physiological regulation of cardiac myocyte contraction by cardiac-specific myosin light chain kinase. Circ J. 2013;77:2218-25. doi: 10.1253/circj.CJ-13-0627.

参考図表

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研究者情報

氏名 塚本 蔵
所属 医学部 生化学
専門分野 循環器内科学
学内共同研究者
※学外共同研究者あり(大阪大学:高島 成二、櫃本 竜郎、春田 純一)
関連リンク 講座紹介HP

企業との協業に何を期待するか?

製薬企業と協業し、重症心不全などを対象とした創薬を目指した共同研究の実施
・構造展開や薬効評価の実施
・創薬研究を進める上で必要な研究資金など

本研究の問い合わせ先

兵庫医科大学 大学事務部 研究推進課
E-mail: chizai@hyo-med.ac.jp
Tel: 0798-45-6488

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