精巣、生殖細胞、ライディッヒ細胞、セルトリ細胞、敗血症

救急・集中治療医学

Post-intensive care syndromeはICUでの集中治療後、呼吸障害や神経筋障害、運動機能障害などの身体的障害や認知機能のみならず精神的障害も生じる可能性があるが、重症病態治療後の生殖機能および性腺機能に対する影響は不明である。重症感染症である敗血症に注目すると、男性敗血症患者の約20％を生殖適齢期を含む18～45歳が占めており、重症感染症後の生殖機能および性腺機能を調べることは回復後のQOLの観点からも重要と考えられる。
我々はエンドトキシンに起因する急性炎症期では内因性IL-18が精巣生殖細胞のアポトーシスを誘導するものの、急性炎症後の回復期では内因性IL-18が精巣生殖細胞のアポトーシスを抑止することを見出した。また、高濃度のLPSおよびIL-18は男性ホルモン産生細胞であるライディッヒ細胞に対しアポトーシスを促進するが、セルトリ細胞（精子形成・分化に関与、血液精巣関門を形成）に対してアポトーシスを誘導せず、精巣を構成する細胞によって外因性および内因性の有害物質に対する感受性が異なることを明らかにした。
本研究は急性炎症後の生殖機能不全および性腺機能不全の治療応用へと展開するための研究基盤の端緒となり、重症病態回復後のQOLの向上に寄与できる治療方法を検証するための基礎研究データだと考えられる。

重症病態後の男性生殖機能および性腺機能に関する報告はほとんどない

外因性および内因性の有害物質に対する生殖細胞や精巣細胞の反応を明らかにする点

高度生殖医療や重症病態後のQOL改善に貢献できるのではと考えている

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1. Inoue T, Aoyama-Ishikawa M, Uemura M, Kohama K, Fujisaki N, Murakami H, Yamada T, Hirata J. The role of death receptor signaling pathways in mouse Sertoli cell avoidance of apoptosis during LPS- and IL-18-induced inflammatory conditions. J Reprod Immunol. 2023;158:103970.
2. Inoue T, Aoyama-Ishikawa M, Uemura M, Yamashita H, Koga Y, Terashima M, Usami M, Kotani J, Hirata J. Interleukin-18 levels and mouse Leydig cell apoptosis during lipopolysaccharide-induced acute inflammatory conditions. Journal of Reproductive Immunology. 2020;141:103167.
3. Inoue T, Aoyama-Ishikawa M, Kamoshida S, Nishino S, Sasano M, Oka N, Yamashita H, Kai M, Nakao A, Kotani J, Usami M. Endogenous Interleukin-18 Regulates Testicular Germ Cell Apoptosis during Endotoxemia. Reproduction. 2015;150:105-14.
4. 井上岳人、石川倫子、植村弥希子、山下勇人、古賀由華、宇佐美眞、小谷穣治．精巣男性ホルモン産生細胞におけるアポトーシスへのエンドトキシン及びIL-18の関与．医学図書出版．エンドトキシン・自然免疫研究20．自然免疫における化学生物学の貢献．2017;p.31-34.
5. 井上岳人、石川倫子、西野哲、笹野真希、岡伸樹、山下勇人、鴨志田伸吾、中尾篤典、宇佐美眞、小谷穣治．エンドトキシン血症時における精巣生殖細胞アポトーシスと内因性IL-18の役割．医学図書出版．エンドトキシン・自然免疫研究17．エンドトキシン・自然免疫の展開：新しい機序、診断、応用．2014;p.98-102.