国際・国内交流
早川 綾香さん
この度、2026年4月6日から5月1日にかけての4週間、ドイツのWürzburg大学にて臨床実習を行いましたので、ここに報告いたします。私は大学入学当初よりドイツでの留学プログラムを志望していました。幼い頃からヴァイオリンを弾いていた私にとって、数々の偉大な作曲家が暮らしたドイツで医学を学ぶことができたことは大変光栄でした。
今回の留学を通して学んだドイツと日本の医療や文化の違い、異国の地で過ごして感じたことについて述べていきたいと思います。
まず、初日にオリエンテーションがあり、長崎大学から留学に来ていた日本人学生7名と現地の方々と交流し、病院の敷地内を案内していただきました。まず驚いたことは、Würzburg大学病院では敷地がとても広く、診療科ごとに建物が分かれていた点です。Luitpold-campusと呼ばれるメインの敷地内にはZIM/ZOMと言われる内科/外科(中央手術室を含む)の建物をはじめ、産婦人科、小児科、耳鼻科や眼科、脳神経外科など頭頚部領域の建物がそれぞれありました。また、少し離れた市内中心部には歯科口腔外科と整形外科、精神科の病棟がある建物がそれぞれ配置されていました。日本では同じ建物にほぼすべての診療科があることが多いので診療科ごとに建物が違うことはとても新鮮でしたし、初めは場所を覚えることに必死でした。
続いて臨床実習で経験したことを話したいと思います。私は麻酔科と核医学で2週間ずつ臨床実習を行いました。麻酔科での実習は毎朝8:00からカンファレンスが行われ、夜勤帯に勤務していた医師と情報共有などが行われていました。それからそれぞれの担当する手術室へ移動し、麻酔を導入する流れとなっていました。ここで感じた日本とドイツの大きな違いは、日本では麻酔を行う部屋はなく手術室で行いますが、ドイツでは麻酔をかける専用の部屋が手術室の前室にありました。患者さんが部屋に到着すると麻酔科医が患者さんの緊張を和らげるように笑顔で話し、時にはジョークを交えて話していました。また、小児外科の手術の前には麻酔科の先生が子供を抱っこして楽しい雰囲気で部屋に連れてきており日本ではあまり見られない光景でした。このような患者さんにリラックスしてもらうような空間を作ることは患者さんにとってはもちろん、医師にとっても重要だなと感じました。
また、ドイツでは学生が手技を行うことが普通であり、それに対する理解が患者さんにもあることにも驚きました。手術前の患者さんへの挿管やラリンゲアルマスクの装着をさせていただきました。毎週水曜日には精神科病棟に行き、電気けいれん療法を行う患者さんに対して麻酔を導入する場で実習をしましたが、そこでは末梢静脈ラインやバックバルブマスク換気などを経験させていただきました。全ての手技は私にとって初めてでありとても緊張しましたが先生方が親切に教えてくださり、2週目には上達するためにもっとたくさんやりたい、と思うようになりました。日本では学生の間に手技を経験できる機会が少ないため、今回このような経験ができとても嬉しかったです。麻酔科の実習では日本文化や日本での医学実習に理解のあるDr. Geierが指導医としてサポートしてくださいました。先生と話している中で印象に残っている言葉があります。“We aren’t praised. We’re just proud of our job.” と言う言葉です。医師として経験を積む中で慢心してしまうこともあるかもしれません。その時に私はこの言葉を思い出し初心を忘れないようにしたいと思いました。Dr. Geierは麻酔のことだけではなく医師としての心構えも教えてくださいました。
後半2週間は核医学で実習をしました。ここでは、甲状腺エコーについて学び、実際に患者さんに当てさせてもらったり、CT/PET-CTの見方を教えていただきました。1番印象に残っていることは放射線治療を見学させていただいたことです。ドイツでは日本よりも核医学治療が進んでおり、驚くことに日本で昨年11月に保険適用となった前立腺がんに対するルテチウム治療はドイツでは10年以上も前から行われていました。医療の最先端に触れることができとても貴重な経験となりました。
実習最終日にはWürzburgから車で1時間ほどのRothenburgにて循環器内科と核医学合同の学会があり、参加することができました。学会にはWürzburg大学の学生が数名来ており、ドイツでは学生が学会に参加することは一般的であることを知り驚きました。発表はドイツ語ではなく英語だったので少し理解できる部分もありましたが、研究内容が難しく理解できないところも多くありました。将来、海外で発表する機会があるかもしれません。発表を聞きながら将来の自分を想像し、英語で発信できる力は大きな強みになると痛感しました。また私は日本の学会に参加したことがないため正確に比較はできませんが、ドイツの学会では発表の間に休憩時間があり、そこでパンやフルーツなどの軽食や飲み物が置かれ、先生方はそこで意見交換をされており、学生である私にも声をかけてくださり、会話できたことはとても嬉しかったです。初めて参加した学会というのもあり、一生忘れられない経験となりました。
実習以外では、週末にはフランクフルトやハイデルベルクなどに旅行に行ったり、長崎大学から来ていた日本人学生との交流、他国からの留学生との交流なども行いました。中でも中東とイタリアから来ていた留学生と食の文化や言語の交流会をしたことはとても印象深いです。また、クラシック音楽が好きな私にとって、現地の音楽会に足を運んだことや現地の留学担当者であるMrs. Moll とデュオ演奏できたことも思い出深いです。また旅行で見た様々なドイツの景色は忘れられません。どこを切り取っても素晴らしい絵になり、どの地域でも歴史を感じられる空間はとても素敵でした。
この留学を通して、同じ志を持つ人々と集まり話したことでより一層、自分の目標とする医師象に近づけるようになりたいと思いましたし、海外でも通用するような医学英語をしっかりと学び、様々な国の人々と医療について話し合えるようになりたいと強く思いました。また異文化に触れることの大切さを感じました。これまで海外で生活した経験がなく、海外の人とあまり交流していなかった私にとってドイツでの生活や現地の方々の考え方などがとても新鮮であり、自分の中に新しい風が吹いたような感覚でした。ドイツに行く前は不安もありましたが、今振り返ると1か月間とても楽しく、現地で経験したすべてのことがかけがえのない経験となりました。これから先の医師人生に活かしていきたいと強く思います。
最後になりましたが、今回の留学でお世話になったWürzburg大学の先生方はじめ、国際交流センターの方々、現地で出会った学生の方々、この留学に関わってくださったすべての方々に感謝申し上げます。何ものにも代え難い経験をさせていただきました。本当にありがとうございました。