研究医コースに所属する学生は、プレコース、専門コースともに、興味のある講座を選択して研究を行います。
各講座の詳細は、下記よりご覧ください。

解剖学 細胞生物部門

担当科目

人体解剖実習
器官・臓器の解剖III(循環・呼吸器)
器官・臓器の解剖IV(泌尿・生殖器系、感覚器・内分泌器系の解剖)
器官・臓器の発生
中枢神経系の解剖
臨床解剖実習

研究内容

中枢神経系の神経細胞の機能調節機構の検討、自律神経系の臓器の機能調節機構の検討、視床下部-下垂体系の生体の調節機構の検討等を通じて生体の機能に関わる機構を解明することを目指して研究を行っている。実際の研究方法としては、形態学的な手法に加え、細胞生物学的、分子生物学的な手法も用い研究を行っている。病態に通じるようなモデル動物の解析や、遺伝子欠損マウスの解析を通じて、未だに明らかとなっていない機構の解明を目指している。

解剖学 神経科学部門

担当科目

組織総論と器官・臓器の解剖I(消化器)
器官・臓器の解剖II(筋・骨格と末梢神経)
人体解剖実習

研究内容

「疼痛伝達の分子メカニズムの解明と新規疼痛 治療へ向けてのシーズの開発」を教室の一貫したテーマとして、分子形態学的手法を中心に、行動薬理学、分子生物学、神経生理学手法を取り入れている。各種疼痛関連病態における神経系での各種活性物質の発現動態と、神経情報伝達の変化、感覚受容・行動の変化との関連を追求し、基本的疼痛伝達機構と各種疼痛病態の解明を進め、基礎的疼痛研究から臨床的応用へのシーズとなる結果を得ることを目的としている。簡単にいうと、治りにくい痛みのメカニズムを解明し、そこから痛みに苦しむ患者のための新薬開発を目指している。文部科学省などからの科学研究費等の公的資金、製薬企業からの受託研究等の外部資金の導入により、研究環境を整備してきた。開かれた研究環境を本教室の重要なモットーとしており、他大学の研究者・大学院生、製薬企業の研究者の受入れや共同研究を活発に行っている。学会活動は北米神経科学学会、 国際疼痛学会など海外での発表を中心としており、欧米の一流国際誌での論文発表を行っている。

生理学 生体機能部門

担当科目

ホメオスターシス
生理学実習

研究内容

我々の研究室では、分子から個体までの生理機能がどのように統合され、調和されるかを理解することが大きな研究の流れである。また、神経回路などの機能的なネットワークとその構築形成・可塑性が高次機能や個体の行動をどのように担い、生体機能の恒常性を保っているのかを解明することを目指しており、治療に応用できる事も視野に入れている。

生理学 神経生理部門

担当科目

個体の調節機能
生理学実習

研究内容

我々の脳など中枢神経系には1000億とも言われる膨大な数の神経が存在しています。個々の神経細胞は周りから情報を受け取り、それに対して情報を出力するといった、どの神経も基本的に同じような機能を持っています。では、世界の人口より遙かに多いこれら神経細胞は、個々がどの様な役割を果たし、また如何なるルールで個々が統合され、1人の個体、ヒトとして感情や思考、行動ができるのでしょうか?
この複雑で未だ不明なことの多い神経生理分野の中心的課題を明らかにすべく研究を行っています。特に、末梢―脊髄、脳に至る感覚情報処理機構、疼痛、掻痒や鎮痛の発現機構、自律神経系における中枢性制御機構、さらに、情動形成と記憶・学習の関係や意識・覚醒など脳機能を統合的に理解する研究、発達障害など脳機能異常の研究も進め、疾患の治療や健康増進に役立つ成果を得ることを目指しています。英国ブリストル大学やカナダトロント大学、韓国ソウル大学など海外研究者とも交流し、共同研究も行っています。

生化学

担当科目

糖質と脂質の構造・代謝
タンパク質とアミノ酸の構造・機能・代謝
生化学実習

研究内容

生化学は、生命活動を担う糖質・脂質・核酸・タンパク質の代謝を理解し、疾患の原因を探る学問です。当講座では、活性酸素が関与する病態を分子レベルで解明したいと考えています。 活性酸素は、糖尿病や脂肪肝などの生活習慣病、神経変性疾患、癌、老化など多くの病態に関与していると考えられています。しかし、活性酸素がどのように疾患を引き起こすのか、なぜ病態を悪化させるのか、など詳細なメカニズムはわかっていません。そこで、遺伝子改変動物などを用いて、少しでも臨床に結びつく基礎研究をめざしています。

薬理学

担当科目

生体と薬物

研究内容

うつ病や薬物依存などの精神疾患に関連する研究を進めています。社会から受けるストレスはうつ病や薬物依存のリスク因子であり、うつ病患者や薬物依存者では情動変化や認知機能の低下が 起こります。また、薬物依存から回復しても、少量の依存性薬物や強いストレスに曝露されると、再度依存の状態に陥る「再燃」が起こります。しかし、再燃を防止する薬が開発されていないことや、既存の抗うつ薬で治療効果が得られないうつ病患者がいることから、薬物依存やうつ病が起こるメカニズムを解明することは非常に重要です。また、ストレスは循環器疾患や消化器疾患のリスクを増加させるなど、ストレスは脳以外にも全身の生体機能を変化させます。ストレスが組織の恒常性維持を破綻させるメカニズムや薬物依存形成のメカニズムを解明し、新たな 創薬標的の提案や治療薬の開発に繋げることを目指します。

病原微生物学

担当科目

生体と微生物

研究内容

ウイルス、細菌に関する研究を行っています。これらの病原体そのものの特性に関する研究のみではなく、病原体に対する宿主応答、予防法開発についても研究を行っています。

免疫学

担当科目

生体防御のしくみとその破綻
生体と寄生虫

研究内容

免疫学は「いかにして体が自分を守っているのか」を考える医学の根幹となる重要な学問です。本講座ではアレルギーや寄生虫感染症を中心とした様々な炎症性疾患について、免疫学的視点に立ち、主にサイトカインの役割に焦点を当てて研究しています。

公衆衛生学

担当科目

保健、医療、福祉と介護の制度
公衆衛生学臨床実習

研究内容

当講座の主要な研究テーマは環境保健であり、大気汚染が人の呼吸器・アレルギー系に及ぼす影響を中心として疫学的・実験的研究を行っている。
近年、微小粒子状物質(PM2.5)や光化学オキシダント(主にオゾン)等による大気汚染の健康影響が注目されているが、これらは日本国内で発生するだけでなく、中国大陸から国境を越えてわが国に飛来するなど、国際的な問題となっている。また、アジアの多くの新興国において深刻な大気汚染状況が続いているため、グローバルな視点で研究活動を展開している。さらに、環境省の「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」に参加し、全国で約10万組、兵庫県で約5,000組の親子を対象に、化学物質等の環境要因が子どもの健康に与える影響について大規模な疫学研究を行っている。これらのほかに、感染症、産業保健、地域保健等の公衆衛生上の幅広い課題に取り組んでいる。

環境予防医学

担当科目

社会環境と健康

研究内容

生活習慣病の中でも特に心疾患や脳血管障害の基礎病変として重要である、動脈硬化のリスク要因および病態と関連した疫学研究および実験研究を行っている。前者では動脈硬化と飲 酒・喫煙・運動・食事・栄養などの生活習慣との関連性について分析している。また、後者では、動脈硬化の病態と関連する血管平滑筋細胞、 内皮細胞、血小板、マクロファージの機能に関する実験を行っている。

法医学

担当科目

死と法

研究内容

医解剖症例を用いた死因診断:法医解剖では、死因を診断するということが一つの大きな目的ですが、解剖しても死因がわからないことがあります。そうした症例では、死因を明らかとするという解剖本来の目的を果たすことができません。教室では、乳幼児から比較的若い人で、これまで元気だった人が突然死亡して、解剖によっても死因がわからなかった症例について、致死性不整脈などを引き起こす遺伝子の変異の検索を行ってきました。こうした研究は、亡くなった方の死因を明らかにするというためだけでなく、遺族の生命予後を改善できる可能性もあります。
症例研究:年間約200体の豊富な解剖症例がありますので、たとえばアルコールや薬毒物、覚醒剤、自殺、他殺などによる死亡例の最近の傾向を明らかとするといった研究をおこなうことができます。教室では、死亡した症例を扱っていますので、臨床での患者様を対象とした研究と、たとえ同じ疾患を扱っていたとしても意味合いが異なります。対象となる疾患の中で、死という結果をもたらした症例だけを扱っているという点で、法医学でしかできない症例研究をおこなうことができます。

遺伝学

担当科目

遺伝と遺伝子

研究内容

ヒトのゲノムは約30億塩基対から成り立っています。その内のほんの少しのゲノムの配列の違い(多型)が私達の個性を作り出しています。一方たった一つの塩基対の変化(変異)が遺伝病やがんを引き起こすこともあります。遺伝学教室では、遺伝子変異が遺伝病や発がんを引き起こすメカニズムの研究と、その背景になる個人の特性を作り出している遺伝子多型の研究をしています。また遺伝病やがんの治療のために、次世代シークエンサーを用いたゲノム解析やゲノム編集技術CRISPR/Cas9システムを用いた培養細胞やマウスの遺伝子改変を行っています。

医療統計学

担当科目

医療における情報とデータサイエンス

研究内容

医学、生物学といった生命科学の諸分野で生じる課題や問題を解決するための統計モデル、統計的方法、統計的方法論といった統計的接近法の開発およびその応用に関する研究を行っています。とくに、最近の医薬品、医療機器、治療法の臨床開発・評価に注目すると、その効率を高めるために、従来の考え方にとらわれない新しいパラダイムが必要とされてきています。本研究室では、この時代の趨勢と要請に応えることのできる、新しい統計的接近法の開発を行っています。また、既存の統計的接近法を実践および応用する立場で、諸種の生命科学分野の研究者との共同研究を行っています。

病理学 分子病理部門

担当科目

原因と病態
消化器系の疾患
内分泌・代謝・栄養の疾患
臨床腫瘍学総論

研究内容

病気の根底に潜む“分子異常”を明らかにして、早期診断法の確立や分子標的治療法の開発を目指して研究を進めています。最近では、アスベスト(石綿)曝露に起因して発症する悪性中皮腫の病態の解明に取り組んでいます。我が国では、悪性中皮腫の発症は、これまでに使用した大量のアスベストの影響を受けて増加の一途を辿り、早期診断法および有効な治療法の開発が急務になっています。また、肝再生医療を目指して、肝臓の肝幹細胞/前駆細胞(オーバル細胞)の特性を調べるとともに、その分化機構について研究を行い、成果を挙げてきました。

病理学 病理診断部門

担当科目

細胞機能異常と腫瘍
病理診断学

研究内容

実験病理学的な研究と人体病理学的な研究の両方を行っています。実験病理学的な研究としては、炎症性疾患の発症機構を含む病態解明、癌に対する免疫療法や化学療法を応用した治療法の開発などを行っています。人体病理に関する研究としては、日常的に行っている各種臓器の病理診断業務と関連し、肝胆膵の腫瘍・唾液腺を含む口腔領域の腫瘍・消化管の間葉系腫瘍であるGastrointestinal stromal tumor (GIST)・動脈硬化や大動脈瘤などの循環器疾患・肺癌・軟部腫瘍・血液疾患・脳腫瘍などにおいて、分子病理学的手法を用いて病態解明につながるような研究を行っています。

先端医学研究所
神経再生研究部門

研究内容

本研究部門では、最も再生が困難といわれている中枢神経系の再生を目指した研究に取り組んでおり、脳組織再生に関するバイオ環境因子の検索や成体組織幹細胞などの基礎研究をはじめとし、これらの成果を臨床応用に繋げていくためのトランスレーショナルリサーチを行っています。また、本研究所では脳梗塞病態下の壊死組織より、傷害誘導性神経幹細胞/傷害誘導性多能性幹細胞を世界に先駆けて発見し、その特性に関して報告してきました。現在、その幹細胞に対する増殖・分化規定因子の探索を行い、産学連携事業などを介して神経再生を促す新しい薬剤を開発するための幹細胞創薬研究も行っています。

先端医学研究所
分子遺伝治療学部門

研究内容

当部門では、「ウイルスや細胞を遺伝子改変することにより、不治の病を治す」ことを目指した開発研究を行っています。

・難治性がんに対するウイルス療法の開発

当研究室が開発した腫瘍溶解アデノウイルスや増殖型レトロウイルスを用いて、新しい癌ウイルス療法の開発を目指した基礎および橋渡し研究を行っています。増殖型レトロウイルスを用いた癌ウイルス療法については、欧米において海外の大学や企業と共同で臨床試験を開始しています。

・遺伝性難病に対する遺伝子細胞治療法の開発

先天性表皮水疱症などの遺伝性難病に対する細胞・遺伝子治療の開発を目指して、基礎および橋渡し研究を他大学や企業と共同で行っています。

先端医学研究所
分子細胞治療部門

研究内容

分子細胞治療部門は先端医学研究所に2021年4月に設置された新しい部門です。
体性幹細胞を用いた新しい細胞治療・再生医療の開発を目指した研究活動を、兵庫医科大学発ベンチャー株式会社シーテックスと共に、本学他部門・他大学・企業と共同で基礎から応用まで幅広く行っています。

先端医学研究所
未来医療開拓部門

研究内容

新規技術が事業として社会に広がるまでの過程には、研究、開発、事業化、産業化の4段階があり、途中の難関や障壁は、「魔の川」~「死の谷」~「ダーウィンの海」などと表現されます。残念ながら、アカデミア発の新技術が臨床での実用化に至ることは非常に稀です。
我々の研究室では、患者さんにとって必要な新しい診断法や装置を死の谷を越えて開発する多施設共同研究を積極的に行っています。共同研究先は学内の複数の診療科、検査機器会社、半導体メーカー、他大学の医学系や工学系研究室、国立研究センターなどですが、異なる専門分野の研究者や企業との積極的な交流が臨床での実用化や未来の医療技術につながると考えています。
様々な研究テーマがあり、臨床で必要なものを実用化するための橋渡し研究が基本方針です。