石綿による健康被害について

 アスベスト(石綿)を吸入することで発症するとされる疾患や病変には、石綿肺、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚、胸膜プラーク(胸膜肥厚斑)などの非腫瘍性疾患と肺がん、中皮腫などの悪性腫瘍があります。

石綿肺

 高濃度のアスベストを吸入することで発症するじん肺のひとつで、病理組織学的な特徴は細気管支周囲の肺の線維化であるとされています。線維化で硬くなった肺は働きが低下し、咳、痰、息切れなどの症状が出現するようになります。胸部X線では、肺全体に拡がる小さな粒状影と、それらが集まった大きな陰影とを認めます。

良性石綿胸水

 アスベストを吸入することで発症する非悪性の胸水です。通常、少量の胸水が片方の肺の周りに貯まります。悪性腫瘍、結核、膠原病による胸水を否定しなければなりません。

びまん性胸膜肥厚

 肺を覆う臓側胸膜の広範囲の慢性炎症によって生じますが、壁側胸膜にも病変がおよぶと両者は癒着し肺活量が低下する場合があります。

胸膜プラーク(胸膜肥厚斑)

 壁側胸膜の限局した個所にできる板状の胸膜肥厚のことで、アスベスト吸入を医学的に確認する重要な所見であるとされています。アスベストを吸入してから、約20年程度して出現し、時間経過とともに石灰化する頻度が増加します。発見には胸部CTや胸腔鏡検査が役立ちます。

石綿肺がん

 これまでは、アスベストを吸入することで生じる肺の線維化(石綿肺)に合併する肺がんと定義されてきました。しかし、最近では石綿肺を合併しない石綿肺がんの存在も報告されてきています。このような場合は、肺の中に存在する一定量以上の石綿小体や石綿繊維からアスベスト吸入を医学的に証明しなければなりません。