兵庫医科大学 先端医学研究所 家族性腫瘍部門

Laboratory of Hereditary Tumor

沿革

■沿革

 家族性(遺伝性)腫瘍を研究対象とする研究部門として設立された本部門であるが、そもそも家族性腫瘍の研究が本格的にわが国ではじまったのは1976年の東京医科歯科大学に設置された「家族性ポリポーシスセンター」の発足にさかのぼる。センター設立の中心であった宇都宮譲二(現兵庫医科大学名誉教授)が遺伝疫学調査を全国的に展開し、700家系以上の家族性腫瘍性ポリポーシス家系を登録し、その研究成果を報告してきた。1983年、宇都宮名誉教授が兵庫医科大学教授に就任したことを契機に、兵庫医科大学において、家族性腺腫性ポリポーシスを中心に多くの家族性腫瘍が診療されるようになったが、整備された遺伝疫学データを基に、分子生物学情報を巧みに取り入れた新しいマネージメントの開発が必要であるとの認識が高まってきていた。

■経緯

 家族性腫瘍研究の目標の一つである家系のマネージメントを向上させるためには遺伝情報の整備が必須である。そのためには広域的かつ長期間にわたる調査で得た膨大な遺伝情報を整理し、家系の診療に生かせるシステムの構築が必要となる。さらに、蓄積した家系情報を将来において展開するためには新しい登録システムの整備が望まれていた。1990年代に入り消化管ポリポーシス症候群に分類される疾患のすべての原因遺伝子が特定され、遺伝子診断が可能となってきた。分子生物学的視野からの科学的な分析を通して、マネージメントの方針を合理的に決定することは時代の趨勢でもあろう。また、遺伝情報や腫瘍組織から得られる膨大な情報は腫瘍形成の機序の解明やがん予防・がん治療法の開発に重要な意味を持つ。このような観点から、家系調査登録・DNAバンクシステムと遺伝子解析システムの機能を結合して併せ持つ研究施設が必要で、家族性腫瘍の総合的研究機関である「家族性腫瘍センター設立」を目指していたところ、平成10年度文部科学省学術フロンティア推進事業に選定され幸運なスタートを切ることができ今日に至っている。

■現在の位置づけ

 先端医学研究所内に設置された家族性腫瘍部門は当然のことながら研究施設として設立された。したがって、遺伝や遺伝子の観点からがんの発生・進展の機序を探求する使命がある。現に、家族性腫瘍の研究からがん関連遺伝子の多くが単離され、発がん経路のいくつかが明らかにされてきた。しかし、発がん機序の解明はまだ途上にある。発がんの過程でがん関連遺伝子の遺伝子産物がいかに相互に関わりあっているかは今後の課題として多く残されていることは多くの研究者の認めるところであろう。この部門では家族性腫瘍患者の細胞株を樹立してきたが、細胞の動的なふるまいを通じて発がん経路の解明に寄与できる時が来るものと考えている。次に、がんの予防医学に関する研究であるが、患者家系のマネージメント向上への貢献が期待できる。遺伝的素因を有する可能性のある家族構成員を見いだし、遺伝診断を用いることで、真に素因をもつハイリスクグループを同定することが可能となる。家族性腫瘍は概して若年発症傾向にあるため、素因を有する家族構成員に対しては早くから医療介入する必要性が指摘されており、遺伝子診断の活用を通して満足できる成果を得られるものと考えている。伝統的な医療に加え、分子生物学的視点からの情報を利用した新しい医療の構築が望まれているが、家族性腫瘍部門は対がん戦略の拠点として機能する総合的研究施設を目指している。

兵庫医科大学 先端医学研究所 家族性腫瘍部門

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