第51回日本皮膚科学会中部支部総会・学術大会を開催する機会をいただきましたこと、
先ず御礼申し上げます。
そして中部支部はもとより、 全国から多数の演題をお寄せいただきましたこと、まことに有り難うございました。
平成12年は西暦2000年、20世紀最後の年であります。20世紀において、
医学はこれまでに見られなかった飛躍的進歩をとげました。
病原菌の発見が進み、 感染症は克服されたかに見えました。
生命の営みの機構の解明が進み、多くの疾患が克服されました。
しかし医学の基礎領域を中心とした研究の成果が、疾患に悩む人達、
個人個人にはまだ充分に到達していないと思われる分野も数多く見られます。アカデミックな医学の進歩が、壁にぶつかっているところも見られます。ときにはこのようなことが社会的に現代医学の限界を示すものとして受け取られ、
代替医療などの言葉で代表されるような分野へ患者の関心が向くようなことも起こっております。
21世紀は医学の進歩を、いかにして個人、個人の厚生・福祉のために役立てるかが課題になると考えております。
このような観点から21世紀を展望してプログラム委員会と共に立案いたしました。
ケラチノサイトは分泌細胞といってもよいほど、いろいろな物質を産生・分泌する細胞で、
そのオートクリンあるいはパラクリンの機序を通じて皮膚におけるさまざまな現象をコントロールしていると考えられます。
Carlo Pincelli先生にはNGFを中心にケラチノサイトの分泌物質の作用をお話しいただき、さらに乾癬の病態形成についても言及していただきます。 1995年のVarmusの遺伝子治療の現状評価は大変ショッキングなものでありました。
現在さらに慎重な基礎的研究が進められ、遺伝病、悪性腫瘍だけでなく、多用な疾患を対象に遺伝子治療の実用が検討されています。この現況を金田安史先生にお話しいただきます。
余幸司先生には、アトピー性皮膚炎の海外における現状を、台湾に関してお話しいただきます。
日本におけるアトピー性皮膚炎に関する混乱は、患者との信頼関係の修復が最善の解決法と考えております。このため患者、一般の方々をまじえた‘アトピー性皮膚炎フォーラム’を企画いたしました。このフォーラムのために患者アンケートに御協力いただきました先生方に厚く御礼申し上げます
シンポジウムT‘遺伝性皮膚疾患の現況と患者のケアー’は、基礎的研究の成果をいかに臨床の場に導入するかが最も問われる分野であります。シンポジウムU‘皮膚組織を作る’では死体皮膚から幹細胞まで、臨床応用の現況と展望を示していただきます。
皆様からは一般演題、スライド供覧、ワークショップ、CPCの演題を多数いただきまして、感謝いたしております。皆様の御厚意を最大に生かすため、教室員一同努力してまいりました。どうか多数の先生方のご参加をいただきますよう、心よりお待ちいたしております。
なお、今回会場となります大阪国際会議場は、本年4月に中之島に新しくオープンいたしました。
学会場をフロアー1つにまとめることが出来まして、何かと便利と考えております。
2000 年 9 月
第51回日本皮膚科学会中部支部総会・学術大会