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量子化学計算を用いた酵素反応機構の解明 量子化学計算は汎用ソフトGaussianの開発以来、40年以上にわたって化学物質の構造、エネルギーおよび各種の物性値を求めるために用いられてきました。量子化学計算には高い精度でこれらの値を与える反面、多くの計算コストを必要とするという欠点があり、大きな分子を扱うことは長い間困難でありました。しかし近年、精度が高い量子化学計算を短時間で計算を行うことができる分子力学計算と組み合わせるマルチスケールモデルを用いた方法が開発され、酵素反応のように生体高分子の内部で起こる化学反応を計算することができるようになってきました。 |
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官能基選択的接触還元反応の開発 還元反応は、実験室のみならず工業的プロセスにおいても広く利用される重要な官能基変換方法です。一般的には、常温・常圧、中性条件下、芳香環以外の様々な官能基を効率よく還元できるため、パラジウム炭素(Pd/C)が広く用いられています。しかし、Pd/Cの高い還元触媒能のため、目的とする官能基を区別して選択的に還元することは困難です。 |
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抗腫瘍活性を有する新規化合物の合成 ある種のオピオイド系鎮痛剤にがん細胞の増殖抑制作用があることが報告されており、がんの分化・増殖へのオピオイド類の関与が注目されています。現在、消化管のオピオイド受容体に作用するロペラミド(止瀉薬)をリード化合物とした誘導体合成を行い、高い抗腫瘍活性を有する化合物の創製に取り組んでいます。これらの化合物は従来の抗腫瘍薬とは異なる作用機序による抗腫瘍活性発現が考えられることから、これまで効果がなかったがん細胞への臨床応用や従来の医薬品との併用による治療効果の向上が期待されます。 |