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兵庫医科大学医学会

物理学

講座(部署)紹介

fig1.jpg物質に本来備わっている”本質的な”性質は、常温では、大きな熱揺らぎのために、観測することができません。物質を十分低い温度まで冷やすと、超伝導や超流動に代表されるように、物質の”個性”が浮き彫りになります。当講座では、物質を究極の極限環境であるmK領域の超低温まで冷却し、量子輸送現象測定や磁気共鳴法という物理的な手法を用いて、本質的な物性の解明を行っています。具体的には、半導体接合界面に形成される2次元電子系や単層及び2層グラフェンのような極めてシンプルな系を舞台に、物質の本質を解明すべく、電気伝導や電子スピン・核スピン共鳴などの物性測定を行っています。特に、上記のような超低温技術は、生体組織の冷凍保存というような基本的な使用法にとどまらず、医用工学分野における磁気共鳴画像法(MRI)や脳磁計に代表されますように、医療技術の進歩には必要不可欠な技術となっております。
具体的な研究内容は、以下の通りです。

  1. 医学物理教育における新しい教材開発と教育効果の研究
  2. グラフェンにおける2次元電子系の物性と無冷媒超低温冷凍機の開発
  3. 量子ホール系におけるエッジ状態とトポロジカル励起の研究
  4. マイクロ波による2層系ν=1量子ホール効果におけるジョセフソン・プラズモン共鳴の研究
  5. fig2.jpg2次元電子系のスピン・擬スピン制御と量子デバイスへの応用
  6. Si:P結晶の超低温・強磁場下の磁気共鳴と量子計算への応用
  7. リドベルグ原子を用いたダークマター・アクシオン探索

なお、上記2は大阪大学産業科学研究所・大阪工業大学と、3,4は京都大学と、5は京都大学・東京大学物性研究所と、6は福井大学・京都大学・韓国KAISTと、7は京都大学・立命館大学・福井大学との共同研究で行っています。

研究の現状

概要

現代医学の進歩において、生体組織の冷凍保存のような基本的な使用法にとどまらず、医用工学における磁気共鳴画像法(MRI)や脳磁計等への応用にみられるように、低温技術はもはや欠かすことのできない技術となっている。本講座では、数十mK(ミリケルビン)領域という超低温領域での、磁気共鳴・輸送現象測定を中心に、基礎物性及びその応用研究を行っている。また、新規な教材開発を含め、医学基礎教育としての物理教育の充実に注力している。具体的な研究テーマを下記に挙げる。

主題

  1. 医学物理教育における新しい教材開発と教育効果の研究
    医学物理教育における力学、電磁気学、流体力学、熱力学、原子物理学分野、特に超低温・磁気共鳴を中心とした新しい教材開発を行っている。 1学年時における自然科学実習では、物理現象の可視化技術や、血管中の乱流現象の理解につながる、カルマン渦列発生実験装置を開発し、教育効果を研究している。また、高温超伝導体の抵抗測定を通して、寒剤利用の習熟を試みている他、近年重要性の叫ばれている放射線測定の実習や、MRIの原理を理解するのに重要な共振回路の測定を開始した。さらに、講義においても、基礎的な物理現象の理解にとどまらず、実験映像等のマルチメディアを利用した視覚的な教育方法の試みや、最新の医学への応用に力点を置いた講義内容の充実を行っている。
  2. グラフェンにおける2次元電子系の物性と無冷媒超低温冷凍機の開発
    グラフェンは、単層の2次元炭素原子膜であり、その中に出現する2次元電子系の特異な物性及び応用研究に多くの注目が集まっている。本研究では、電極を取り付けた単層及び2層グラフェン膜を作製し、グラフェンの不純物による弱局在効果や、グラフェンへの分子吸着による電子輸送現象の変化を観測している他、高感度圧力センサーとしての応用も目指す。また、グラフェンを超低温・強磁場の複合極限環境下で量子輸送特性を測定するための無冷媒超低温冷凍機開発を行い、電気伝導率の温度依存性を測定している。本研究は、大阪大学産業科学研究所および大阪工業大学との共同研究として行っている。
  3. 量子ホール系におけるエッジ状態とトポロジカル励起の研究
    超低温・強磁場下において半導体2重接合界面で実現される量子ホール効果における新奇な量子相の探索を、量子輸送現象測定を中心として行っている。2層系ランダウ準位占有率ν=1量子ホール効果において、層の自由度を表す“擬スピン”がドメイン構造を形成する“ソリトン格子相”や、2層系ν=2量子ホール効果における傾角反強磁性相という新奇な量子相を発見した。本研究では、2層系量子ホール効果を中心に、エッジ状態での電子の散乱機構とエッジの動的変化過程、および半量子渦対や磁気ロトン、スカーミオンなどの量子ホール系特有のトポロジカルな励起状態の特定とその生成・消滅機構を解明する。
  4. マイクロ波による2層系ν=1量子ホール効果におけるジョセフソン・プラズモン共鳴の研究
    2層系ν=1量子ホール状態では、層間を電子がトンネルすることによる粒子数揺らぎが生じ、2次元電子系に巨視的なコヒーレンスが存在することが期待される。本研究では高移動度を持つ2層2次元電子系半導体試料にマイクロ波を照射し、超伝導体接合でみられるACジョセフソン効果と類似した、ジョセフソン・プラズモン共鳴現象の探索を行っている。
  5. 2次元電子系のスピン・擬スピン制御と量子デバイスへの応用
    2次元電子系の抵抗検出型磁気共鳴法を用いることにより、電子スピンあるいは核スピンの情報を得ることができる。また、ν=2/3分数量子ホール状態の電子スピン偏極および非偏極状態を用いることにより、試料中の核スピンを動的に偏極させることが可能である。本研究では、動的核スピン偏極機構の解明を行うと共に、スピン自由度と層の自由度である擬スピンとを相補的に用いることにより、半導体中2次元電子系の電子スピン・核スピン・擬スピン制御を行い、量子情報やスピントロニクスなどの量子デバイスへの応用への研究を行う。なお、なお主題3-5は京都大学と、主題5については東京大学物性研究所との共同研究として行っている。
  6. Si:P結晶の超低温・強磁場下の磁気共鳴と量子計算への応用
    シリコン(Si)の中にリン(P)原子をドープし、その核スピンを量子ビットとして、量子演算を行うという魅力的な提案がなされている。本研究では、絶縁体領域にある希薄P ドープSi (Si:P)サンプルの磁気共鳴信号の観測を世界に先駆けて成功させる。さらに、NMR 観測を通じて、電場による超微細相互作用の制御を確立させる。本研究は、福井大学、京都大学、韓国KAISTとの国際共同研究で行っている。
  7. リドベルグ原子を用いたダークマター・アクシオン探索
    宇宙には、光を放出している星などの数十倍にも及ぶ、見えない物質、暗黒物質(ダークマター)が存在していることがわかっている。“アクシオン”は、最も有力なダークマターの候補の一つである。本研究では、超低温・強磁場下でアクシオンが転換する際に発する光子を、高エネルギー準位にレーザーで励起されたアルカリ原子(リドベルグ原子)により捕らえ、宇宙の成り立ちを解明しようとする研究を行っている。本主題ついては京都大学、立命館大学、福井大学との共同研究として行っている。

自己評価・点検及び将来の展望

主題1については、今後も様々な分野における教材開発を行っていきたい。主題2に関しては、物質・デバイス領域共同研究拠点の御支援をいただき、より高品質なグラフェン試料を作成するとともに、本学における超低温装置の整備も着々と進んでいる。主題3に関しては、科研費新学術領域の御支援を頂いている。また、主題2-6の研究は、デバイス開発を含め、スピントロニクス分野や量子情報分野への応用も視野に入れている。主題7に関しては、長期的ではあるが魅力的な研究テーマであり、もし新粒子が発見されるようなことがあれば、近年のニュートリノ発見に並ぶノーベル賞級の研究である。今後は、本学においても実験装置をさらに整備し、低温物理学を中心として研究を継続したい。また、磁気共鳴法などの医学と物理学の接点となるテーマの開発や教育方法についての研究を続け、本学における医学教育の充実を図りたい。


福田 昭 准教授
責任者| 福田 昭(准教授)
専門分野:低温物理学・半導体物理学
TEL| 0798-45-6440
FAX| 0798-45-6440

 研究の現状

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