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兵庫医科大学医学会

環境予防医学

講座(部署)紹介

血管機能と環境要因に関する研究がメインテーマであり、これに加えて動脈硬化予防のための疫学的研究を行っている。具体的な研究テーマは以下の通りである。

1. 細胞内pHの変化を介する血管機能の調節機構
2. 飲酒と循環器疾患の病態との関連性
3. iNOSおよびCOX-2発現を修飾する諸因子
4. 重金属イオンの血管機能への作用
5. 動脈硬化性疾患における血中急性期反応物質の意義
6. 動脈硬化予防に関する地域の産業保健

研究の現状

概要
脈管疾患のリスク要因と病態生理に関する研究が主なテーマである。今日、日本人全体の約6割が3大生活習慣病により死亡し、そのうちの約半数を脳心血管系疾患が占めている。これらの疾患の予防につながるような新しい知見を実験および疫学の両面から探索している。以下に現在進行中の主な研究主題を列挙する。


主題
  1. 血管および血小板機能の調節機構に関する研究:
    血管平滑筋細胞、内皮細胞および血小板の受容体が刺激されるとNa+-H+交換系が活性化され細胞内pHの上昇が惹起されるが、その意義について特にカルシウムチャネル活性化の分子メカニズムとの関連を中心に検討している。血小板では細胞内アルカリ化によりTRPC1チャネルの活性化を介して血小板凝集能が亢進するが、この分子メカニズムとしてTRPC4の関与を明らかにした。
  2. アルコールの血管および血小板機能への作用に関する研究:
    飲酒は動脈硬化性疾患の発症に対して功罪両面の効果を示すことが知られている。飲酒と循環器疾患の病態との関連性について多角的な研究を行っている。最近の研究では、適正飲酒が糖尿病患者においても動脈硬化に対して抑制的に作用することやエタノールが血小板のTRPチャネル介するカルシウム流入に対して多様な作用を示すことを報告した。また、種々の血小板凝集測定法の中でレーザー散乱法によりエタノール作用を敏感に検知できることを報告した。
  3. iNOSおよびCOX-2発現を修飾するさまざまな因子に関する研究:
    血管平滑筋およびマクロファージでのiNOSおよびCOX-2発現はさまざまな疾患の病態に係わっている。これまでに我々は抗癌剤やフラボノイド化合物の一部、エタノール、糖化アルブミンなどがiNOSおよびCOX-2発現を修飾することを報告してきた。また最近では2型糖尿病動物の血管壁ではiNOS発現が亢進するのに対してCOX-2発現は低下していることを報告し、現在その分子メカニズムについて検討している。
  4. 血管壁細胞におけるdiacylglycerol kinase (DGK) の意義:
    DGKの細胞機能における意義に関しては最近ニューロンや心筋などで報告があるものの、不明な部分が多い。我々は血管壁細胞におけるDGKのさまざまなアイソザイムの発現を証明し、そのうち血管平滑筋細胞ではDGK-εが血管収縮物質による刺激時のストレスファイバー形成を調節していることを報告した。さらに血管内皮細胞においてDGK-εがiNOS合成における小胞体輸送を制御していることを発見し、その分子機序について検討している。
  5. 動脈硬化と白血球機能:
    単球や顆粒球がさまざまな機序を介して動脈硬化の病態に関与していることが知られているが、我々は動脈硬化性疾患における白血球機能の変化について検討しており、2型糖尿病モデルラットでの単球やリンパ球機能の変化を報告した。
  6. 飲酒と動脈硬化との関連性についての疫学研究:
    習慣性飲酒は血圧上昇作用により脳血管疾患のリスク要因になるとともに、HLDコレステロール上昇作用や血液凝固系への抑制作用を介して抗動脈硬化作用を示すことが知られている。これまでに我々は飲酒と動脈硬化リスク要因との関係が、性、年齢、遺伝子多型、体格、治療歴などの宿主要因により大きく修飾されることを報告し、その結果をもとに、いわゆる適正飲酒のあり方について提唱してきた。平成24年4月より、兵庫県篠山市において、篠山市立丹南健康福祉センターおよび兵庫医科大学ささやま医療センターのご協力のもとで、追跡研究を開始した。飲酒をはじめ、さまざまな個人的背景が脳心血管イベント発症にどのような影響を及ぼすかについて、現在研究を展開中である。
  7. いわゆる特定疾患の発生関連要因・予防要因の解明:
    特定疾患の発症には遺伝的因子と環境因子の相互作用が関与する。遺伝的因子に比較し、食習慣、生活環境因子と発症の関係については不明な点が多い。「特定疾患の疫学研究」として、炎症性腸疾患、特発性肺線維症、後縦靱帯骨化症、全身性エリテマトーデス、筋萎縮性側策硬化症、神経線維腫症等について、食習慣、生活環境因子と発症との関係について症例対照研究を行っている。

自己評価・点検及び将来の展望
当教室では平成18年4月から新体制のもとで、動脈硬化症を中心とした脈管疾患の病態生理に関する基礎研究および生活習慣病の臨床疫学を教室の主な研究テーマとして研究活動に専念している。 超高齢化社会を迎えた我が国では、動脈硬化性疾患を中心とする老年病予防は極めて重要である。このように社会的にも意義の大きい研究テーマで、すでに興味深い新知見を報告しているが、今後も精度の高いデータを一流学術誌に発表していきたいと考えている。

若林 一郎 主任教授
若林 一郎 主任教授
責任者| 若林 一郎(主任教授)
専門分野:環境衛生、産業衛生、疫学、脈管学、老年医学、血栓止血学
講師| 阪本 尚正、丸茂 幹雄
TEL| 0798-45-6562
FAX| 0798-45-6563

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