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新しい行動科学的うつ動物モデル

情報更新日 2020年1月31日

シーズ情報

キーワード

うつ 精神疾患 動物モデル マウス 遺伝・環境相互作用 エピジェネティクス 行動実験 行動科学

分野

中枢

概要

C57BL/6N系統のマウスに困難な水迷路学習課題を与えると、多くの被験体がプラットホームへの速やかな逃避という適応的対処行動を獲得して健常性を維持する一方、一部の被験体が、適応的対処行動の学習を徐々に放棄し、ヒトのうつ病と酷似した行動的絶望状態に陥る。この行動的絶望状態に陥った個体の解析を進めたところ、以下のようにうつ動物モデルとして高い妥当性を持つことが明らかとなった。同個体の詳細な表現型解析、更には同個体の出現を規定している要因の探索を進めることで、うつ病の背景メカニズムの解明につながる可能性がある。

  1. 表面妥当性
    ・対処可能な課題の解決と学習を放棄
    ・自発活動性の低下 etc.
  2. 構成妥当性
    ・血中コルチコステロンが高値(HPA系の異常)
    ・脳内のいくつかの部位で5-HT量が低値
    ・海馬の神経細胞新生が抑制 etc.
  3. 予測妥当性
    ・行動的絶望状態が抗うつ薬(三環系, SSRI, SNRI等)によって選択的に改善
  4. その他
    ・行動的絶望状態が遺伝要因と環境要因の相互作用(GxE)によって誘発

何が新しいか?

本実験系では、うつ的状態を示す個体の出現率は被験体の系統と課題の難易度に依存する。つまり、遺伝要因と環境要因の相互作用によって発症すると想定されているうつ病の背景メカニズムを検討するのに適した実験系である。また、モノアミン仮説をはじめとするうつの成因に関する様々な仮説と整合する特徴を多く備えている。

他の研究に対する優位性は何か?

遺伝的に極めて相同性が高い近交系マウスを用いるにも関わらず、うつ的状態を示す個体と健常性を維持する個体が並行して得られる。そのため、健常な個体を比較対照とすることで、うつ的状態を示す個体の解析がより厳密に行える。

どのような課題の解決に役立つか?

  • 抗うつ効果が予想される化合物や天然由来成分の有効性評価
  • うつとの関連が予想される因子を操作したモデルマウス(遺伝子改変マウス等)の行動評価

他への応用・展開の可能性

  • うつの発症および抗うつ効果に関わる遺伝子群の探索
  • うつの発症および抗うつ効果に関わるエピジェネティックなメカニズムの検討
  • モノアミン仮説に留まらない新しいうつの成因に関する仮説の提起

関連する論文

  1. Doe, N., Takahashi, T., & Kiriyama, M. (2010). Behavioral despair during a water maze learning task in mice. Experimental Animals, 59, 191-197. 
  2. T土江伸誉 (2017). マウスのモリス型水迷路学習課題における実験装置の条件設定の重要性 行動科学, 55(2), 1-11.

参考図表

19_01.jpg

19_02.jpg

研究者情報

氏名 土江 伸誉(ドエ ノブタカ)
所属 兵庫医療大学 共通教育センター
専門分野 実験心理学 行動科学
学内共同研究者 松山 知弘

企業との協業に何を期待するか?

うつ的状態を示す個体の表現型解析および同個体の出現を規定している要因の探索(とりわけGxEの部分)に関して、分子生物学的な手法による研究全般(行動実験以外の部分)で協業して欲しい。

本研究の問い合わせ先

兵庫医科大学 学務部 研究協力課
E-mail: chizai@hyo-med.ac.jp
Tel: 0798-45-6488

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