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キャリア細胞を用いた新規ウイルス療法の開発

情報更新日 2020年6月22日

シーズ情報

キーワード

がん ウイルス療法 遺伝子治療 増殖型レトロウイルス 自殺遺伝子療法

分野

がん

概要

 本研究者らは、増殖型レトロウイルスベクター(AMLV-RRV*1)を用いた自殺遺伝子療法を開発し、悪性神経膠腫などの固形腫瘍に対し欧米で第2/3相臨床試験(NCT02414165)を進め、生存期間の延長など良好な結果を得ている。

 本療法の奏功性を高めるために、(1) GALV-RRV*2、(2)腫瘍へのRRV新規輸送法の開発を行っている。

(1) GALV-RRVの開発

 GALV-RRVとAMLV-RRVについて、I)両RRVは異なるリン酸トランスポーター(AMLVはPiT-2、GALVはPiT-1)を細胞受容体として用いること、II)腫瘍細胞においては、一方の受容体発現が低く、それを利用するRRVの増殖伝播が不良な細胞株が存在することを明らかにした。これらの結果は、腫瘍細胞におけるPiT-1及びPiT-2受容体の発現を調べることにより、効果が期待できるRRVを選択し投与できる可能性を示唆する。

 RRVのような増殖型ウイルスを用いた場合、感染細胞内で産生されるエンベロープ蛋白が受容体と細胞内で結合してしまうため、同じ受容体を介して感染するウイルスは再感染しない。我々は、異なる受容体を用いるAMLV及びGALVについて、I)互いに受容体干渉を受けない、II)塩基配列類似性が低く相同組換えのリスクが低い、III)重感染させても、お互いの複製増殖に干渉しない、IV)多くの腫瘍細胞がAMLV/GALV両感受性であることを見出した。この結果、多くの腫瘍細胞においてAMLV/GALVは安定した重感染が可能であり、また重感染による併用療法で相乗効果が得られることを明らかにした。

(2)腫瘍へのRRV新規輸送法の開発

 腫瘍へ集積する特性を持つ間葉系幹細胞に着目し、RRVの腫瘍への輸送キャリア細胞としての有用性を確認している。実際に、RRVによる細胞の感染性、さらに、担癌モデルマウスを用いた検討で、感染したキャリア細胞の腫瘍への集積を確認した。この手法により、RRVを用いた自殺遺伝子ウイルス療法を播種性癌のみならず転移性癌に広く適応拡大できることが期待され、転移性癌患者の予後やQOLを大きく改善する波及効果が見込まれる。


 *1: AMLV-RRVは、マウスを宿主とするAmphotopic murine leukemia virusを基盤とするRRV

 *2: GALV-RRVは、テナガザルを宿主とするGibbon ape leukemia virusを基盤とするRRV

何が新しいか?

2種類のRRVは、患者検体における受容体発現の事前検査により奏効性や安全性を判定できる個別化ウイルス療法に繋がる。また、RRV新規輸送法は、悪性度の高い転移性や腹膜播種などに対する新たな治療法の開発に繋がる。

他の研究に対する優位性は何か?

『2種類のRRV治療法』は、奏効性と安全性の高い個別化医療を可能にする。

『RRVの輸送方法』は、転移性のがんへの応用など、適応範囲が広がる可能性がある。

どのような課題の解決に役立つか?

 転移性のがんによる腹膜播種は、有効な治療法が無い予後不良のアンメットメディカルニーズの高い疾患である。本研究者らが開発したキャリア細胞を用いれば、腹膜播種などの転移性のがんに対する新たな治療法の開発に繋がることが期待される。

研究者情報

氏名 久保 秀司(クボ シュウジ)
所属 兵庫医科大学 先端医学研究所 医薬開発研究部門 分子遺伝治療学
専門分野 遺伝子細胞治療 分子生物学 分子遺伝学
リンク 研究室HP
学内共同研究者 山野 智基、中込 隆之

企業との協業に何を期待するか?

遺伝性難病・難治性癌に対し新たな遺伝子細胞治療やウイルス療法の開発を目指した共同研究

本研究の問い合わせ先

兵庫医科大学 学務部 研究協力課
E-mail: chizai@hyo-med.ac.jp
Tel: 0798-45-6488

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