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疾患モデル動物を用いた独自の創薬標的分子解析法の確立

(1) 新規シェーグレン症候群モデルマウスを用いた創薬標的分子の探索と検証

情報更新日 2020年6月22日

シーズ情報

キーワード

自己免疫疾患 シェーグレン症候群 疾患モデル動物

分野

免疫・炎症

概要

 日本は、世界保健機構(WHO)の方針に従い、高齢化社会の健康寿命を延ばすことを目標に、第二次の健康日本21を計画した。高齢者の生活の質(QOL)を上げるために、医学的には厚生労働省が難病に指定している自己免疫疾患の機構の解明が最重要課題の一つである。

 難病指定のシェーグレン症候群は、外分泌腺(主に唾液腺と涙腺)が主要な標的となる全身性自己免疫疾患で、目と口の粘膜表面に重度の乾燥が生じる。シェーグレン症候群の発病の原因は不明であり、根治的治療法はない。生命予後は比較的良好であるが、乾燥症状の自覚、倦怠感や筋痛、関節痛などの全身症状により、長期にQOLを低下させている。

 我々は、独自に開発した遺伝子改変マウスの病態解析を行った結果、加齢性に唾液腺組織が破壊され、ヒトシェーグレン症候群様の症状を呈することを確認した。さらに、独自の疾患モデル動物の創薬標的分子の探索法を用いて、蛋白質Xを同定した。現在、日本医療研究開発機構(AMED)の創薬総合支援事業(創薬ブースター事業)の支援を受け、蛋白質Xのシェーグレン症候群との関連性と創薬標的としての妥当性の検証を行っている。

何が新しいか?

本研究者らは、新たに以下の4つのものを見出した。
  • 生理学的な条件下に飼育し、加齢性にヒトと同じく雌のみにシェーグレン症候群の臨床病態とよく一致した症状を表現する『モデルマウス』を確立した。
  • 疾患モデル動物の独自の創薬標的分子の『探索法』を確立した。
  • シェーグレン症候群の創薬標的候補である『蛋白質X』を見出した。

他の研究に対する優位性は何か?

 ヒトの臨床検体を用いた研究では、病態発症の解明については遺伝情報を基にした研究以外は難しい。また、シェーグレン症候群のモデルマウスの作製に関する報告は無く、病態発症機構の解明は進んでいない。

 一方、本研究者らが見出したモデルマウスは、下記の特徴があり、ヒト病態発症機構の解明、創薬標的の探索、創薬標的の妥当性や治療効果の評価への応用が可能であり優位性が高い。

 

  • ヒトシェーグレン症候群の病態と非常によくにた症状を示す。
  • 疾患モデルマウスは、繰り返し、短期間に病態発症を再現する。


 また、今回、疾患モデル動物における『全身環境』と『病態が発症する局所臓器』の経時的な遺伝子情報変化を総合的に解析し、新規の候補標的分子を同定するプログラムを開発した。この方法は、他の疾患モデル動物への応用も可能であり、有用性が高い。

どのような課題の解決に役立つか?

原因不明の疾患の創薬標的や診断バイオマーカーの探索。

シェーグレン症候群患者の標的分子の妥当性の検証。

シェーグレン症候群患者の治療薬の評価。

他への応用・展開の可能性

本研究で見出した創薬標的因子の探索法は、他の疾患モデル動物を用いた創薬標的因子の同定へ応用可能である。

関連する論文

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参考図表

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研究者情報

氏名 西浦 弘志(ニシウラ  ヒロシ)
所属 兵庫医科大学 病理学講座・病理診断部門
専門分野 病理学 分子生物学
リンク 研究室HP
学内共同研究者 大村谷 昌樹、山根木 康嗣、今坂 舞

企業との協業に何を期待するか?

独自のプログラムで同定する創薬標的分子情報を基に、共同研究レベルで化合物スクリーニングや化合物の最適化などを行う。

本研究の問い合わせ先

兵庫医科大学 学務部 研究協力課
E-mail: chizai@hyo-med.ac.jp
Tel: 0798-45-6488

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