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内在性傷害誘導性多能性幹細胞(iSC)を用いた脳梗塞後の神経機能回復を目指した再生医療

情報更新日 2019年12月27日

シーズ情報

キーワード

幹細胞 脳梗塞 神経再生 外傷性脳疾患 再生医療

分野

中枢

概要

脳梗塞等の神経脱落を伴う中枢神経疾患に対する有効な治療法がないなか、損傷した中枢神経系においても神経幹細胞を介した神経再生機構が働いていることが近年明らかとなり、幹細胞を基盤とした神経再生療法の臨床応用に大きな期待がよせられている。

しかしながら、数々の臨床試験を経ても神経幹細胞治療が有効であるとの確固たる証拠に乏しいのが現状である。これらの臨床試験では、発生過程で出現する正常の脳組織から単離した神経幹細胞や脳組織とは異なる臓器(骨髄など)などの非病変部位から採取した幹細胞を用いて治療効果を検討しており、結果的に脳梗塞病態時に誘導される真の内在性幹細胞とは異なった幹細胞を標的とした研究を行い、神経再生機構の解明をなおざりにしたまま、脳傷害後の組織修復・再生を目指した応用研究に発展させようとしてきたことがその大きな要因であると思われる。

こういった従来法の課題を解決するため、我々が初めて見出した病変部位(梗塞巣)内に出現する内在性の傷害誘導性多能性幹細胞(iSC)を用いた神経再生療法の確立を目指している。

何が新しいか?

  • 従来は壊死した神経細胞と炎症担当細胞のみが存在すると考えられてきた脳梗塞巣内に、内在性の傷害誘導性多能性幹細胞(iSC)が存在することをマウスのみならずヒトでも実証した
  • iSCによる脳梗塞後の神経機能回復促進の可能性を支持するin vitro、in vivoデータを得た

他の研究に対する優位性は何か?

非病変部位由来の幹細胞を用いた先行技術では示しえなかった高い治療効果が以下の通り期待できる

 

  1. 再開通療法(血栓溶解剤、血栓回収療法など)に対する優位性
    再開通療法は、発症後数時間以内や血管閉塞部が主幹動脈に限局しているなどの適応制限があるため約1割程度の患者しかその適応とならないが、本提案の技術ではそのような制限はないと考えられる
  2. 先行する再生医療等技術に対する優位性
    • MSCに対する優位性
      MSCは骨、脂肪、軟骨などの中杯葉系の細胞には分化するものの、iSCとは異なり、電気生理学的に機能的な神経細胞には分化しない(Sakuma et al, Stem Cells and Development, 27, 1322-1338, 2018)。なお、MSC技術を利用した先行剤に対する優位性は(11)に記した。
    • その他の技術に対する優位性
      ES細胞、胎児細胞、iPS細胞などに由来する神経幹細胞等には、発癌性、倫理面、拒絶反応などで重大な課題が多く残されているのに対して、iSCは脳傷害後の再生過程で出現する幹細胞であることから上記のような問題点はない
    • その他の技術に対する優位性
      ES細胞、胎児細胞、iPS細胞などに由来する神経幹細胞等には、発癌性、倫理面、拒絶反応などで重大な課題が多く残されているのに対して、iSCは脳傷害後の再生過程で出現する幹細胞であることから上記のような問題点はない
    • iSCの独自性
      iSCは神経系と血管系の両方の系列に分化可能であるため、脳梗塞後のNVU (neuro-vascular unit)再構成による臨床効果が期待できる

どのような課題の解決に役立つか?

脳梗塞後の神経機能回復

他への応用・展開の可能性

外傷性脳損傷後の神経機能回復

関連する論文

  1. Nakagomi T, Takagi T, Beppu M, Yoshimura S, Matsuyama T. Neural regeneration by regionally induced stem cells within post-stroke brains: novel therapy perspectives for stroke patients, World journal of stem cells, 11, 452-463, 2019.
  2. Beppu M, Nakagomi T, Takagi T, Nakano-Doi A, Sakuma R, Kuramoto Y, Tatebayashi K, Matsuyama T, Yoshimura S. Isolation and characterization of cerebellum-derived stem cells in poststroke human brain, Stem Cells and Development, 28, 528-542, 2019.
  3. Tatebayashi K, Tanaka Y, Nakano-Doi A, Sakuma R, Kamachi S, Shirakawa M, Uchida K, Kageyama H, Takagi T, Yoshimura S, Matsuyama T, Nakagomi T. Identification of multipotent stem cells in human brain tissue following stroke, Stem Cells and Development, 
  4. Nakata M, Nakagomi T, Maeda M, Nakano-Doi A, Momota Y, Matsuyama T. Induction of perivascular neural stem cells and possible contribution to neurogenesis following brain ischemia/repuerfusion injury, Translational Stroke Research, 8, 131–143, 2017.
  5. Nakagomi T, Kubo S, Nakano-Doi A, Sakuma R, Lu S, Narita A, Kawahara M, Taguchi A, Matsuyama T. Brain vascular pericytes following ischemia have multipotent stem cell activity to differentiate into neural and vascular lineage cells, Stem Cells, 33, 196

参考図表

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研究者情報

氏名 中込 隆之(ナカゴミ タカユキ)
所属 兵庫医科大学 先端医学研究所
専門分野 中枢神経 幹細胞 再生医療
リンク 研究室HP
学内共同研究者 松山 知弘

企業との協業に何を期待するか?

以下の出口戦略実行での協業

  1. iSCによる細胞移植治療技術の確立
  2. 内在性ISC賦活化因子創製などiSCを標的とした薬剤開発

本研究の問い合わせ先

兵庫医科大学 学務部 研究協力課
E-mail: chizai@hyo-med.ac.jp
Tel: 0798-45-6488

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