受賞

「American Academy of Otolaryngology-Head and Neck Surgery SILVER RIBBON (POSTER AWARD)」を受賞しました(大学院生 赤澤 和之(兵庫医科大学病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 非常勤医師)

2016年9月18日から21日に米・サンディエゴで開催されたAAO-HNSF ANNUAL MEETING & OTO EXPO学会にて、大学院生の赤澤 和之先生(兵庫医科大学病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 非常勤医師)が「American Academy of Otolaryngology-Head and Neck Surgery(米国 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会) ポスター賞銀賞」を受賞しました。

演題:「Eustachian tube dysfunction in radiotherapy for head and neck tumors」

授与団体名

American Academy of Otolaryngology-Head and Neck Surgery(米国 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会)

概要

 頭頸部癌症例に対する放射線治療の際、耳管機能がどの様に変化するか、また滲出性中耳炎をきたす症例とそうでない症例の照射線量に差を認めるかどうかを検討する。

研究の背景

 耳管とは中耳(鼓室)と咽頭をつなぐ管状の器官であり、中耳内の圧力調節を行っている。通常耳管は閉鎖されており、圧力調節の際に開放されその後閉鎖する。その機能が変化することで耳管が開放された状態のままとなる耳管開放症や、耳管が狭窄し圧力調節が困難となる耳管狭窄症が引き起こされる。 頭頸部腫瘍に対して放射線治療を行った際に、放射線による耳管周囲の浮腫から耳管狭窄が起き、その結果滲出性中耳炎をきたすことは一般的に知られている。しかし経時的に耳管機能がどの様に変化するかや滲出性中耳炎をきたす放射線量(吸収線量)に関しては十分に研究がなされていない。本研究はその解明の一助となる。

研究手法と成果

 頭頸部癌に対して66~70Gyの放射線治療を予定し、照射範囲が耳管に及ぶ13例(下咽頭癌6例、中咽頭癌3例、副鼻腔癌2例、鼻腔癌1例、原発不明癌1例)を対象とした。放射線治療は2015年3月~2016年5月に2Gy/日で行った。また同時に併用化学療法としてシスプラチンを6例に、ドセタキセルを3例に、セツキシマブを2例に使用した。
 耳管機能検査装置(JK-05A D type® (Rion, Japan))を用いて13例の26耳管に対して放射線治療前、治療中、治療後(3ヶ月以内)の耳管機能を音響耳管法(sonotubometry)にて評価した。基準としては過去の報告に従い嚥下時の音圧上昇を5dB SPL以上を耳管正常群、5dB SPL未満を耳管狭窄群と分類した。
 強度変調放射線治療用の2mmスライスのCTを用いて耳管咽頭口と鼓室口を結ぶ直線を耳管と定義した。また同部位の吸収線量を計測し、最大線量、平均線量、最小線量を計測した。
 放射線治療前の耳管機能正常群は26耳中17耳(65.4%)であった。放射線治療中、治療後に正常群から狭窄群への変化を16耳(94.1%)で認めた。滲出性中耳炎は26耳中7耳で認めた。耳管への吸収線量を滲出性中耳炎をきたさなかった19耳と比較したところ、最大、平均、最小線量すべてで有意差を認めた。そのうえで過去の報告を参考にし、耳管への最小線量が36.7Gy以上で滲出性中耳炎のリスクが上昇すると結論づけた。