受賞

日本医学シミュレーション学会学術集会 優勝演題賞を受賞しました

平成28年1月30日、東京にて開催された第11回日本医学シミュレーション学会学術集会において、村上 裕亮をはじめとする麻酔科の医局員7名が「日本医学シミュレーション学会学術集会 優秀演題賞」を受賞しました。


【受賞者】
 村上 裕亮( レジデント)、下出 典子(講師)、植木 隆介(講師)、緒方 洪貴(レジデント)、竹中 志穂(レジデント)、二木 美由希(助教)、廣瀬 宗孝(主任教授)

【受賞演題】
 初期研修医のマネキンを用いた気管挿管3日連続集中トレーニング
 :ビデオ喉頭鏡、McGRATH及びAirway Scoprの比較

授与団体名

日本医学シミュレーション学会

概要

初期研修医にとって医療行為の中でも気管挿管を習得することは、大切な目標の一つである。近年、従来のMacintosh型喉頭鏡に代わり喉頭鏡ブレードの先につけたカメラで声門を観察する(間接視認)タイプの器具が開発され、臨床使用されている。本研究では、マネキンを用い3日間連続して、従来型と2種類の間接視認タイプの計3種類の器具(Macintosh型ビデオ喉頭鏡、McGRATH®、Airway Scope®)で、それぞれ気管挿管トレーニングを行い、どの器具が、短期間での手技習得に有利かを調査した。麻酔専門医による簡単なインストラクション後に、各器具10分程度ずつ練習した。その後挿管手技を行い、挿管成功率、挿管時間、声門の視認性などについて調査した。その結果、2つの間接視認型喉頭鏡はいずれも、声門の視認性に優れ、初心者にとっても短時間での挿管が可能で、有効性の高い器具と考えられた。

研究の背景

気管挿管に用いる器具は、従来の喉頭鏡に加え、喉頭鏡ブレードの先端にカメラ機能を備えた間接視認型喉頭鏡が市販され、臨床使用されている。これらの新しい器具が初期研修医のような挿管初心者の教育、トレーニングに置いても、有効という報告はあるものの、短期間集中型のトレーニングを行って検討したものは、数少ない。今回我々は、従来のMacintosh型ビデオ喉頭鏡(以下Mac)とAirway Scope®(以下AWS)、McGRATH ®(以下McG)の2種類の間接声門視認型喉頭鏡を用いて、初期研修医が3日間でどの器具が早くかつ確実な手技を習得できるかを調査した。

研究の手法と成果

【研究手法】
本研究に同意した挿管経験5例未満の初期研修医15名を対象に、麻酔科研修初日から3日間連続で実習した。マネキンはAirSim(TruCorp社製:英国)を用いた。麻酔科専門医が、3種類の挿管器具(Mac、AWS、McG)の使用方法や挿管方法を指導し、初期研修医はその後各10分、計30分間練習した。練習終了後、手技の成否と器具を手にしてから声門視認までの時間、チューブが声門を通過するまでの時間、Percentage of glottic opening(以下POGO)スコアを測定した。McGとAWSは1日目から全例成功したが、Macで1日目2例、2日目1例の挿管手技失敗が認められた。McG及びAWSは Macに比べ、有意に短い声門視認、挿管時間であり、POGOも3日間を通し有意に高かった。

【成果】
間接視認型ビデオ喉頭鏡は経験の浅い施行者でも、短時間のインストラスクションで初回から高い成功率が得られる挿管用器具と考えられた。さらに3日間の集中トレーニングはテクニックの向上に有力と思われた。

今後の課題

今回のマネキンによる検討から、間接視認型喉頭鏡の有効性は高いと考える。ただし、実際の患者では、頸椎の可動性、開口制限や口腔内分泌物、画面の曇り、歯牙損傷のリスクなど弱点も含めた器具選択が必要である。研修医の挿管トレーニングの指導において、確実性と安全性を高めるために、シミュレーションと臨床的な見地の両面から検討を続けたい。