受賞

「ガルデルマ賞」を受賞しました(皮膚科学 今井 康友 医師)

「ガルデルマ賞」を皮膚科学 今井 康友 医師が受賞しました。

授与団体名

ガルデルマ社(授賞式は日本研究皮膚科学会)

概要

IL-33は、IL-18と同様にIL-1ファミリーの炎症性サイトカインである。アトピー性皮膚炎 (AD)の表皮ではインターロイキン33(IL-33)が増加するが、表皮のIL-33がどのような免疫反応を誘導するかは不明であった。そこでIL-33が表皮で高発現する遺伝子改変マウスを作成したところ、強い瘙痒を伴う皮膚炎を自然発症した。皮疹部での好酸球やマスト細胞の増加、血中IgEの上昇が観察され、ADの特徴に一致した。皮膚では好酸球を誘導するIL-5などのTh2サイトカインが増加していたが、IL-33で誘導される”2型自然リンパ球(ILC2)”が皮膚で増加しIL-5を産生していた。以上より、表皮におけるIL-33の増加は、ILC2活性化を伴うAD様の皮膚炎を誘導することが判明した。

研究の背景

IL-33が、喘息、花粉症などのアレルギー疾患の病態に関わる重要なサイトカインであることは、世界的にも注目されており、急速に研究が進んでいた。例えば、兵庫医大の研究チームは、IL-33が好塩基球を活性化し結膜炎・鼻炎に関与すること、表皮細胞からハプテンなどの刺激によって放出される警報因子であること、IL-33がマスト細胞浸潤に関与すること、などを示してきた(Imai Y, JDS, 2014)。皮膚疾患においては、アトピー性皮膚炎、乾癬、扁平苔癬等の表皮にIL-33の発現が増加することが報告されていたが、その明確な役割は明らかではなかった。IL-33に着目して皮膚アレルギー疾患の病態解明を行う着想は、このように、これまでの兵庫医大における研究実績に基づいたものであった。

研究手法と成果

ケラチン14プロモーターを用いて活性化型(全長)のIL-33が表皮で高発現する遺伝子改変マウスを作成したところ、全てのマウスが8週齢までに強い瘙痒を伴う皮膚炎を発症した。皮疹部での好酸球とマスト細胞の増加、血中IgEの上昇が観察され、ADの特徴に一致した。皮膚と血清中で好酸球を誘導するIL-5などのTh2サイトカイン・ケモカインが増加していたが、IL-33の刺激によってIL-5を産生する細胞である2型自然リンパ球(ILC2)が皮膚やリンパ節、末梢血で増加していることが判明した。以上より、表皮におけるIL-33の発現増加がILC2の活性化を誘導し、ADに特徴的な病態を誘導することを、世界に先駆けて証明した。これまで、様々なADモデル動物が作出されているが、IL-33が表皮で増強するヒトのADの病態を再現する動物モデルは初めてである。

今後の課題

本研究のマウスで得られた新しい所見は、ヒトのADでも同様であることがその後判明した (Salimi M, JEM, 2013)。すなわち、AD患者の病変部皮膚にはIL-33によって誘導されたILC2が多数浸潤しており、IL-33だけに反応してTh2サイトカインを産生する。今後、この病態を標的として、新しいADの治療アプローチを試みる予定である。また、このマウスは抗ヒスタミン薬やステロイド外用薬が有効なことから、新規治療薬開発のツールとして、臨床応用への可能性を模索したい。

研究費等の出処

科研費 (22791093, 23791297, 24791183) 、ハイテク・リサーチ・センター整備事業、厚生労働科学研究費補助金 (創薬基盤推進研究事業)「アジュバント安全性評価データベースの構築研究」 など

掲載誌

Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 110(34) 13921-13926 2013

受賞の様子