野口学長インタビュー

volume.01

兵庫医科大学のイマをおとどけ!

野口学長インタビュー 教育研究棟への期待。
良医へ導くために大学ができること。

兵庫県、特に阪神間に根ざした都会型私立医科大学として発展してきた兵庫医科大学。野口学長はその最大の使命を「次代を担う良医の育成」と語ります。良医とは? 学生を良医に導くために大学がすべきこととは? その問いに真摯に向き合った結果、学生の特性に合わせた教育環境の整備へと至り、2018年4月に地上12階の教育研究棟が誕生。この教育研究棟に託した想いと期待について聞きました。

ラーニングスクエア

大講義室

自習室

SGL

学生食堂

自主的な学びを修得・実践できる場に。

まず、教育研究棟設立の目的について教えてください。

教育研究棟は、情報通信環境を完備した講義室・実習室、ラーニングスクエア、自習室、図書室などの「教育機能」と、先端医学研究所や共同利用研究施設などの「研究機能」、そして学生ラウンジや学生食堂、書店や売店などの「学生アメニティ機能」、これら3つの機能を併せ持つ、西宮キャンパスの要となる施設です。
今、大学での学びは従来のような大講義室で受講する受け身型から、グループで問題を共有しディスカッションしながら解決を目指す自発的なスタイルへと変わりつつあります。兵庫医科大学でも、SGL(スモール・グループ・ラーニング)の設置やTBL(チーム基盤型学習)という学びを取り入れており、特にチーム力を育むTBLの実践は全国から視察が来るほど注目されています。このような、少人数でのグループ学習に向いた学習環境を3階「ラーニングスクエア」に設けました。

ラーニングスクエアとは?

大階段のある開放的で広い空間を、自然なコミュニケーションが発生するオープンスペース、ディスカッションに向いたテーブルスペース、そして個人学習スペースに分けた、学びをトータルにサポートする場です。最近の学生は仲間と一緒に勉強してお互いに刺激し高め合う傾向があるので、その特性に合わせて自由度の高い空間づくりをしています。兄弟校である兵庫医療大学の学生との共同カリキュラムなどでも活用できるスペースです。

兵庫医科大学の自習室はいつも満席なのだそうですね。

本学の学生は本当に勉強熱心です。自発的な学びを支えるために、ラーニングスクエアの他に4階にも自習室を設けています。また、見晴らしの良い最上階は24時間出入り可能でセキュリティを完備した6年生専用の自習室にしています。夢に向かって頑張る学生たちが力を発揮できるように、大学として最大限のサポートをしたいと考えています。
医師というのは一生学び続ける仕事です。医学部での6年間は、知識や技能はもちろん、そのベースとなる自主的な学びの方法を修得・実践していくための期間でもあります。低学年のうちに自発的に勉強する方法を身に着けることが必須です。
大学の学びは、一方的に授業を受けていた高校時代や、手厚いサポートがあった予備校時代とは異なります。そのため低学年のうちは苦労する学生が出てしまうのも事実です。そこは手厚くフォローする必要があると考えています。

どのように「自発的な学び」へと導いているのですか?

本学では、ラーニングスクエアに隣接したスペースに「医学教育センター」を設けて、医師である医学教育専任の教員を配置し、不安や悩みを持つ学生と一緒に問題を解決しています。成績が落ちたり無断欠席が続いている学生には声をかけて個別面談や学習指導を行い、問題を早期に解決するようにしています。今後タブレット端末による顔認証で医学教育センターがオンタイムで出欠確認できるようなシステムも導入予定で、さらに迅速に対応できる仕組みづくりを目指しています。
また、その一方で、より高みを目指す学生のために「研究医コース」を設けており、未来の医学を支える人材を育てていくという教育機関としての務めも果たしています。
それぞれの学生に合わせた教育を提供することが、良医育成につながっていくと考えています。

ここでの体験が、母校への誇りにつながる。

学長が考える「良医育成」とは?

今の医療現場では知識・技能だけでなく「人間力」を併せ持つ医師が求められています。とはいえ両方のバランスがとれた人を育てるのは実に難しいことです。
医師は人の痛みや苦しみに向き合うことも多く、若いうちから過酷な局面に対応しなければならない職業です。優しいだけでは務まりません。時に厳しい事実を伝えながらも、患者さんの心に寄り添える医師になるためにはどうしたらいいか。「コミュニケーション能力」「他人の気持ちを思いやる心」、どれも大事です。「仕事への誇り」「人命を預かる使命感」も必要でしょう。
地域医療や実践医療に注力し最先端医療を提供する病院機能を持つ本学では、学生時代から患者さんと向き合うチャンスが多くあり、卒業後も臨床の道に進む方が大半です。地域に根ざした良医を育てることはまさしく私たちの使命です。
そのために大学がすべきことは、単に教育を与えて甘やかすことでも、厳しい負担を強いて学生を締めつけることでもありません。現在の学生の特性に合うように学習環境を整え、自発的な学びを促し、医師としての基盤を作るサポートに全力を尽くすことに他なりません。

その使命を具現化したのが教育研究棟なんですね。

この教育研究棟で仲間との絆を深めて研鑽を積んだ体験が、母校への信頼・誇りにつながることを期待しています。
本学は、2013年に最先端の医療を提供する急性医療総合センターを開設し、臨床実習の場でもある病院機能が非常に充実しました。その急性医療総合センターと今回の教育研究棟を皮切りに、将来に向けてますます新設・整備が進んでいきます。本学が教育・研究・臨床の各方面で発展する様子を目にすることができれば、在学中はもちろん、卒業してからも母校に誇りを持ち、自然と大学への帰属意識が高まっていくのではないでしょうか。

「帰属意識」も学長のキーワードですね。

大学への帰属意識を高めることは、この阪神間エリアや兵庫県内に根ざした医師を育成することにつながってきます。地域との一体感を強めることも学長としての務めです。それが、この教育研究棟新設を機に実現していけるのではないかと信じています。
3階のラーニングスクエアを象徴する大階段の奥には、大学の歴史を共有できるアーカイブズ室を設置しています。同じフロアに設けることにより、卒業生と学生との交流を生み、本学の同窓会組織「緑樹会」とのつながりをさらに深められたらと考えています。

教育研究棟の誕生が、ひいては地域医療の活性化にもつながっていく?

本学の卒業生は医療現場での評価が高く、兵庫県内で活躍する本学出身の医師は非常に多いです。そのような卒業生とのネットワークをますます強固にしていくことで、学生たちが活躍できる機会をさらに増やしていけます。学生・卒業生を含めて一体感のある大学を目指しています。
本学はもうすぐ創立50周年を迎えます。長年にわたって蓄積された教育ノウハウというソフトに教育研究棟というハードが加わり、今の学生に必要な最良の学習環境を用意することができました。この教育研究棟が過去と現在そして未来をつなぐ架け橋となり、新たな伝統を築いていける手ごたえを感じています。

Profile

兵庫医科大学学長

野口 光一 Kouichi Noguchi

1956年生まれ。1979年京都大学工学部原子核工学科卒業。1983年大阪大学医学部卒業。1989年大阪大学大学院医学研究科修了。1994年兵庫医科大学教授などを経て、2016年4月より兵庫医科大学学長に就任。2012年兵庫県科学賞を受賞。専門分野は解剖学、神経科学、疼痛基礎研究(ペインリサーチ)で、現在も1年生の解剖実習を担当している。