医学部医学科
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兵庫医科大学医学会

内科学(腎・透析科)

講座(部署)紹介

当科における臨床及び研究の主たる目標は、1)何れの腎疾患においても末期腎不全への進行を抑制すること、2)慢性腎不全患者の合併症を抑制することである。腎障害進行においては、レニン・アンジオテンシン系の活性化の関与とともにNOの産生低下が重要であることを報告しており、臨床研究では種々の薬剤と腎機能低下とともに蓄積されるNO阻害物質の関係を、基礎研究では糸球体硬化モデルラットを用いたNO産生低下と糸球体硬化との関係につき解明をすすめている。透析患者における栄養障害、易感染性,動脈硬化などの合併症は慢性炎症との関係が明らかになっているが、当科では多くの合併症は酸化ストレス・高サイトカイン血症による細胞レベルでの鉄輸送代謝異常が原因であるとの仮説のもとにDIMES(鉄代謝・エネルギー産生障害) 症候群を提唱している。既に多核白血球、血管内皮細胞や網内系細胞で仮説を証明しており、他の合併症との関係を検討中である。

研究の現状

概要
腎疾患における腎機能障害の進行および合併症の発症・進展メカニズムの解明とその進展制御、さらには慢性腎不全の合併症の発症・進展予防を主な目的とし、幅広い臨床的研究ならびに基礎的なアプローチによる独創性の高い先駆的研究活動に取り組んでいる。


主題
  1. 透析患者の鉄代謝障害:
    透析患者における鉄の動態を解明するために多核白血球において、鉄代謝を検討した。その結果、血清フェリチン値が低い患者でも細胞内に鉄を蓄積しており、その原因が鉄輸送蛋白の調節障害であることを解明した。この鉄調節障害が、動脈硬化、栄養障害、機能的鉄欠乏による貧血などの合併症に深く関与している可能性があり、さらに基礎的・臨床的検討を進めている。
  2. 慢性腎臓病患者における腎機能悪化因子の検討:
    慢性腎臓病を悪化させる因子として、尿タンパク量・高血圧・貧血・高尿酸血症・代謝性アシドーシス、骨ミネラル代謝異常等が報告され、それぞれ適正な管理が求められている。一方で腎臓内科専門医の中でものこれらへの介入時期・管理目標値・用いる薬剤等は、意見が分かれる所である。現在本学を含めた腎臓内科専門医を有する施設において、前向き観察研究により、これら慢性腎臓病を悪化させる因子の管理方法と腎機能の推移およびイベント発生率の関連を検討している。本研究の成果がガイドライン改定に寄与できる事を期待している。
  3. 鉄調節障害と血管石灰化との関連:
    多くの慢性腎臓病患者は、血管石灰化を伴っており、これらが高い心血管系合併症や死亡率と関連している事が知られている。一方で慢性腎不全状態における血管石灰化発症の明確なメカニズムは明らかにされておらず、我々は鉄調節因子(hepcidin)が血管石灰化に関与していると仮説を立てている。現在腎不全モデルラットを用いて、これらに鉄を負荷し、hepcidinおよび炎症性サイトカインTNFα、mTOR signalおよびH ferritin発現と血管石灰化の関連性を検討している。
  4. 腸内細菌叢の構成不均衡状態と鉄代謝障害:
    腸内細菌叢の構成不均衡状態は高血圧・免疫応答・大腸癌・2型糖尿病・肥満・脂肪肝など多くの疾患との関連が指摘されている。慢性腎臓病患者も尿毒症環境から腸内細菌叢の構成不均衡状態にあると考えられているが、その原因や臨床的意義は未だ明確にされていない。我々は腸内細菌叢の構成不均衡が鉄の調節障害を誘導し、これら患者の心・血管系合併症や易感染症の原因となっていると仮説を立てている。 現在腎不全モデルラットを用いた基礎的研究によって、腎機能低下に伴う腸内細菌叢の変化と鉄代謝因子(Divalent metal transporter (DMT)-1, hepcidin, Transferrin receptor (TfR), ferroportin (FPN)1)の変化を明らかにするとともに、腸内細菌叢の変化が、免疫調節機構(Treg)や心血管系合併症関連因子(TMAO)との関連も検討している。
  5. 2次性副甲状腺機能亢進症の至適な管理に関する検討:
    2次性副甲状腺機能亢進症は、慢性腎臓病患者の骨折のみならず、心血管系合併症、異所性石灰化・生命予後に影響を与える重要な合併症である。日本透析医学会のガイドラインは、活性化ビタミンD3製剤・リン吸着剤・Ca受容体作動薬を用いてリン・Ca・parathormone (PTH) 値の順に管理する事が推奨しているが、総ての項目が目標値に到達している患者は、約30%しか存在しない事が示されている。 我々は、早い段階でのPTHの適正な管理が、Caやリンの良好な管理を促し、管理目標値達成率向上に繋がると考えている。現在Ca受容体作動薬を用いた早期2次性副甲状腺機能亢進症への介入が、リン・Ca・PTHの管理目標値達成率や骨代謝マーカーに及ぼす影響を多施設・ランダム化比較試験にて検討している。
  6. 金属系リン吸着剤の体内動態と慢性腎臓病患者の合併症との関連:
    慢性腎臓病患者における高リン血症は、血管石灰化や高い死亡率の原因となっている事が知られている。我が国では、高リン血症に対して、服薬コンプライアンス・リン低下効果・高Ca血症回避の観点から、炭酸ランタンもしくは鉄含有リン吸着剤が広く使用されている。一方でこれら金属系リン吸着剤の長期使用はその体内における蓄積性が懸念されている。現在多施設・ランダム化比較試験においてこれら金属系リン吸着剤の腎不全状態における体内動態および、CKD-MBD管理における長期安全性と有効性について検討している。
  7. 生理的造血を促す貧血治療と慢性腎臓病患者のイベント・生命予後との関連:
    我々は、大規模臨床研究において赤血球造血刺激因子製剤 (ESA)低反応性や鉄利用障害を伴う患者はイベント発生率が高く、生命予後が不良である事を報告してきた。さらに長時間ESAは従来のESAより鉄調節因子の1種であるHepcidinを有効に低下させ、ESA反応性や鉄利用障害を改善する事を報告している。よって同じHb値を維持するにも貧血治療の内容によって患者のイベントや予後に及ぼす影響は大きく異なる可能性がある。我々は生理的造血という概念を構築し、造血に適した鉄とエリスロポエチンとの関連を調査している。現在は次世代腎性貧血治療薬として期待されている低酸素誘導性因子(hypoxia-inducible factor:HIF)安定化剤も加え、これら薬剤の造血パターンが慢性腎臓病患者のイベントや生命予後に及ぼす影響を検討している。


自己評価・点検及び将来の展望
近年の腎臓疾患領域における治療技術の進歩にもかかわらず、腎炎や腎機能障害が進行し、腎不全にいたる症例はいまだ多い。また慢性腎不全および透析患者の予後は依然として不良であり、その原因として腎機能障害自体が独立した心血管事象の危険因子であることが疫学的に解明されてきたが、その両者を結びつける因子は未解決である。これらの病因、病態解明は急務であり、これまでに行ってきた治療法に対する大きな見直しをするべき時期に来ている。現在、当教室では腎炎や腎機能障害の進行および慢性腎不全の合併症に関して、臨床研究と分子レベルの生物学的情報を統合的に展開し、その病態を解明することを目標としている。当教室での研究活動において、これまでにもいくつかの成果が得られており国内外における基礎系、臨床系医学雑誌および学術集会での報告をさらに積極的に推進し、その情報を広く提供する必要がある。今後、この領域での研究成果を基盤とし、診断、治療、予防に関する新規技術を検討するとともに、既存の治療法を評価・整理すること等により、適切な治療方針の確立を目指す。

石原 正治 主任教授
石原 正治 主任教授
責任者| 石原 正治(主任教授)
准教授| 倉賀野 隆裕
講師| 長澤 康行、蓮池 由起子
TEL| 0798-45-6521
FAX| 0798-45-6880

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